「グリーン・ランタン」を新たな視点で再構築!全米話題のDCドラマ「ランタンズ」にハマる理由

DCコミック「グリーン・ランタン」に基づき、全く新しい物語を描くドラマ「ランタンズ」(全8話)が、Prime Videoサブスクリプション「HBO Max」とHuluで日本配信中だ。またアメコミドラマか…と思って見逃しているならもったいない。「ランタンズ」には、いわゆるアメコミドラマとは一味違う魅力が詰まっている。これから観て楽しむために、本作の魅力をネタバレなしで紹介する。
「アメコミ再解釈」× 「連続ドラマの熟練技」の面白さ
「ランタンズ」の全米での人気は凄まじく、米業界紙Varietyが、最終話の前の第7話の全米視聴者が3日間で700万人を突破し、シーズン全体の平均視聴者が約1,900万人に達したことをニュースとして報じたほど。このドラマはなぜそこまで面白いのか。
その魅力は、あらすじだけでは分かりにくい。ドラマの発端は、ネブラスカの田舎町で起きた殺人事件。宇宙の平和を守る組織グリーンランタン・コアの一員であるハル・ジョーダン(カイル・チャンドラー)と、その訓練生ジョン・スチュワート(アーロン・ピエール)が、田舎町の殺人事件に怪しい気配を察知して、調査に向かうーーと聞くと、普通のアメコミドラマかと思ってしまいそうだが、大違い。この物語には、複数の魅力が詰まっている。
それは何かというと、アメコミドラマのファンには、製作総指揮と脚本に同名アメコミを再構築した名作ドラマ「ウォッチメン」のクリエイター、デイモン・リンデロフが参加して今回もいい仕事をしていると言えば充分だろう。海外ドラマファンは、ショーランナーが人気ドラマ「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」「オザークへようこそ」の製作総指揮のクリス・マンディだと知れば、興味を持つはず。ざっくり言うと「リンデロフによるアメコミ再解釈の面白さ」と「マンディの連続ドラマを面白く見せる熟練技」が掛け合わされたのが本作なのだ。
「バディもの」×「謎解きミステリー」×「人間ドラマ」の面白さ
アメコミ要素を抜きにしても、「連続ドラマ」として面白い要素がいくつもある。まず「バディドラマ」の面白さ。ベテランのグリーンランタン、ハルと、訓練生のジョンは、育った環境も性格も正反対。横柄な白人中年男性のハルが、忍耐強いアフリカ系青年ジョンを翻弄し、この2人は大丈夫なのかと危ぶまれるが、次第に関係は変化していく。ドラマ「トゥルー・ディテクティブ」シリーズ同様、相性の悪2人がコンビを組む面白さは、バディドラマの王道パターンだ。
そして「謎解きミステリー」の面白さ。それも単純な犯人探しではない。田舎町で起きた怪事件の裏で、実際は何が起きているのか。誰が何を隠しているのか。町の保安官ケリー・ケイン(ケリー・マクドナルド)はなぜ彼らを町から遠ざけようとするのか。町の実力者ウィリアム・メイコン(ジャレット・ディラハント)は何を目論んでいるのか。ハルさえ、ジョンに隠し事をしている。次から次に謎がうまれ、第1話のラストの真相は、最終話まで持ち越される。
さらに「人間ドラマ」がかなり深い。これを描くため、ハルがどんな人物なのか、ジョンがどんな人物なのかは、ドラマの過程で、彼らの少年時代や、以前の体験が描かれて、少しずつ明らかになっていき、どちらも問題を抱えていることも分かっていく。ドラマの進行につれて、彼らの人物像が少しずつ奥行きを増していき、最後には、2人の歩んだ道と選択が胸を熱くしてくれるのだ。
それらの要素を、3つの時代を背景に描くという構成も巧み。物語の中心となる事件が進行するのは「2016年」。それを並行して「2026年」が描かれ、そこにも解くべき謎がある。そして途中で「2人の子供時代」が挿入されていく。しかも、初配信時は毎週1話配信だったせいもあり、連続ドラマに相応しく、各エピソードのラストに衝撃のシーンが描かれて、次のエピソードが待ち遠しくなるように構成されている。
「アメコミ」要素を掛け合わせて面白さ倍増
そのように、ドラマとして面白く、ドラマのタッチはシリアス、映像も写実的だが、舞台は「グリーン・ランタン」の世界。なので、そのギャップも面白い。本作でもグリーンランタンは空を飛び、地球外にも行く。コミックのキャラクターと同じ名前であるグリーンランタン・コアのシネストロ(ウルリク・トムセン)、リアナ(ローラ・リニー)なども登場し、バットマンが活動する都市ゴッサムシティもセリフに出てくる。
それに加えて「コミックを新たな視点から再構築する」という面白さがある。この面白さは、製作総指揮と脚本に参加したリンデロフの功績だろう。リンデロフは、ドラマ版「ウォッチメン」でも、原作の「現実の社会情勢を反映させる」という姿勢を継承しつつ、2021年のタルサでの人種差別事件の実話をモチーフに、コミックと同じスーパーヒーローたちを登場させつつ、まったく新たな物語を描いた「アメコミ再構築」の名手なのだ。
彼は「ランタンズ」でも、その技を発揮している。グリーンランタンの基本的設定に、現在の人種差別や権力の腐敗などの社会情勢を反映させ、そこに2人の人間の子供時代から現在に至る道のりを重ね、全く新たな物語を描き出す。社会情勢の反映は、1970年代の原作コミックのグリーンランタン/ハル・ジョーダンが、グリーン・アロウと組み、アメリカの政治や人種差別などの問題を描いたことを踏まえたものだろう。
さらにこの物語は、「スーパーヒーローとは何か」という問いかけも投げかけてくる。ハルとジョンはどちらも英雄ではなく、問題を抱えた一人の人間であり、彼らのグリーンランタンになるということへの対応も、一般的なスーパーヒーローとはかなり異なる。また、物語が進むにつれて、グリーンランタン・コアとは何なのかとも考えさえられる。
ドラマ「ランタンズ」には、こうした多種多様な魅力が詰まっている。スーパーヒーロードラマは、何を描くことができるのか。本作はその可能性をまた一つ、大きく広げている。(平沢薫)
「ランタンズ」はPrime Videoサブスクリプション「HBO Max」, Huluで配信中
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