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ハマる人続出!『美しい彼』はなにがすごいのか?

大ヒット中
大ヒット中 - (C) 2023 劇場版「美しい彼~eternal~」 製作委員会

 『劇場版 美しい彼~eternal~』の勢いが止まらない。『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』といった強豪ひしめく中、公開から10日間で累計興行収入2億6,000万円を突破し、来場者数も19万人に迫る勢いだ。SNSには「何度でも観たい!」「シンプルに良過ぎる」「沼ってます」といった鑑賞者の声があふれている。なぜ多くの人が『美しい彼』に惹かれるのだろうか。(※一部、ドラマシリーズのネタバレがあります)

【画像】美しい!萩原利久&八木勇征『美しい彼』インタビューカット

 今作は、最下層を自認する“ぼっち”の高校生・平良一成(ひら・かずなり)と、スクールカーストの頂点に君臨するカリスマ・清居奏(きよい・そう)が繰り広げるラブストーリーで、2021年に連続ドラマが放送された。今年2月放送のシーズン2を経ての劇場版では、大学生から社会人となる平良と、俳優としての活動を広げていく清居の、恋の変遷と葛藤と成長が丁寧に描かれている。

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 原作は、本屋大賞を受賞した「流浪の月」「汝、星のごとく」などで人気を博す凪良ゆう。人物描写の奥行きと緻密さには定評があり、それは映像化の際にもしっかりと生かされている。細かいエピソードに変更はありつつも、真髄をすくいあげた坪田文(「探偵ロマンス」)の脚本は見事だ。さらに、ちょっとした小物の色使いなど、画面の隅々にまでこだわりが満ち溢れた酒井麻衣監督(「荒ぶる季節の乙女どもよ。」)の演出とスタッフ陣の熱意が、作品を高い完成度に導いたのは間違いない。

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2人だからこその『美しい彼』 - (C) 2023 劇場版「美しい彼~eternal~」 製作委員会

 なにより、平良役の萩原利久と、清居役の八木勇征FANTASTICS)が驚くほどのはまハマり役だった。ミステリアスもカッコいいも難なく表現する萩原の芝居力で、清居の恋人なのに彼を一方的に崇拝する“キモい”頑固者という複雑な平良のキャラクターが立体感を持った。一方で、芝居の経験は少ないながらも、凛々しく麗しい八木が、持ち味を最大限に生かして清居にふんしている。2人が寄り添うビジュアルの美しさは言わずもがなだ。

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 自分を熱烈に見つめてくる平良を「キモ!」と一蹴していた清居がいつのまにか求めていたのは、自身だけを欲する平良の強い瞳だった。自己肯定感の低さもあって輝くような光を持つ清居をただ崇めていただけだった平良は、清居の思いを知って驚きながらもその手を取る。ドラマシリーズでは、そこに至るまでの嫉妬や羨望などの心の動きがしっかりと描かれ、また、恋愛成就のあとも根本的な立ち位置の違いからなかなかわかり合えない2人が、丁寧につづられていた。

 劇場版の平良はさらにこじらせており、清居を撮りたい一心でプロカメラマン・野口(和田聰宏)の助手として写真を学びはじめるも、野口への嫉妬や自虐ゆえに落ち込む。一方の清居は、平良と対等の恋人になりたいのに自分を神聖視する平良がもどかしくて歯がゆい。さらに清居は、先輩女優の安奈(仁村紗和)の恋愛スキャンダルに巻き込まれて危険な目に遭ってしまう。

 平良に大切で粋な助言をして存在感を見せる野口や、大人の包容力とキュートな恋模様の両方を見せる安奈、平良に恋心を抱きつつ身を引く大学の友人・小山和希(高野洸)、平良の推し活仲間で安奈ファンの設楽克己(落合モトキ)ら、サブキャラクター陣の配置とキャスティングも絶妙。すべての要素が美しいまでに揃っている。

 今作は、ピュアな恋愛物語であるのと同時に、人を理解することを学んでいく彼らの成長物語でもある。その巧みな感情の進展が、恋のドキドキとともに提示されていた。美しい彼らが、美しい世界観の中で繰り広げる、深く濃く人を愛する美しい物語。永遠に続く保証がないからこそ永遠を求めるその姿が、人の心をつかまないはずがなかった。(文・早川あゆみ)

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