必見。これは映画のひとつの臨界点だ。

2014年9月10日 森 直人 郊遊<ピクニック> ★★★★★ ★★★★★

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郊遊<ピクニック>

90年代、『青春神話』『愛情萬歳』『河』といった眩い傑作群で登場した頃のツァイ・ミンリャン作品は、カメラの長回しと、時代と共に変化する都市生活者の宙吊り的なリアリティが有機的にぴったり一致していた。以降、彼は基本的に同じ主題を追求してきたが、ついに公式引退作となった『郊遊』では形式だけが突出している。

しかしそれは「主題の失効」を自覚した誠実さの表れだろう。完璧なサウンドスケープと共に提示される限界的ショットは、語りの全体構造に容易に寄与しない。もはや空間そのものを体験させるインスタレーション・アートに近い。ひとつのスタイルを押し進めた映画作家の臨界点=「極」を目撃できる極めて貴重な怪作だ。

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。9月19日より、原一男監督&島野千尋プロデューサー(『れいわ一揆』)の回を配信中。ほか、行定勲監督 feat.東紗友美さん(『窮鼠はチーズの夢を見る』)、足立紳監督(『喜劇 愛妻物語』)、荒木伸二監督 feat.SYOさん(『人数の町』)、城定秀夫監督&平井珠生さん(『アルプススタンドのはしの方』)、田中圭監督(『島にて』)、内藤瑛亮監督(『許された子どもたち』)、諏訪敦彦監督(『風の電話』)、想田和弘監督(『精神0』)、深田晃司監督(『本気のしるし』)、豊島圭介監督(『三島由起夫vs東大全共闘』)、入江悠監督(『AI崩壊』)、タナダユキ監督(『ロマンスドール』)、岩井澤健治監督&大橋裕之さん(『音楽』)、片山慎三監督(『岬の兄妹』)と『パラサイト 半地下の家族』を語り尽くす特番、森達也監督&河村光庸プロデューサー(『i 新聞記者ドキュメント』)、小林啓一監督(『殺さない彼と死なない彼女』)、竹内洋介監督(『種をまく人』)、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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