シネマトゥデイ

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「朝日新聞」「キネマ旬報」「テレビブロス」「週刊文春」「週刊プレイボーイ」「メンズノンノ」「Numero TOKYO」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。

近況: 執筆参加した『漫画+映画!』『新世紀ミュージカル映画進化論』『究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10』(洋泉社)が発売中です。

サイト: http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • ビジランテ
    今年の日本映画、最後の灼熱の大玉
    ★★★★★

    『カラマーゾフの兄弟』を彷彿させる父と三兄弟の物語に、「いま」の問題を接続させる試み。サイタマ県の架空の市をグローバリゼーションの縮図とし、シェイクスピアや東映ヤクザ映画、『ミスティック・リバー』等を補強材とする。ザラザラした現実を神話的な構造美で映す政治論的ノワールの傑作を入江悠が放った。

    ここで表象されているのはトランプ・安倍時代の風景だろう。土地と経済の結託が生む暴力性、利権政治や移民排斥を多層的に見つめる描き方。射程は長く広い。日本論に世界を覆う負の連鎖を組み込んだ『22年目の告白』、この10年の浮遊の総括『SR~マイクの細道~』と併せ、三作でワンセットとの捉え方も可能だと思う。

  • キングスマン:ゴールデン・サークル
    エレガンスと鬼畜、両極のふり幅が倍増!
    ★★★★

    今年三度目のジョン・デンバー!というネタのカブりっぷり(共時性?)にびびったが、独特の世界像&キレッキレのアクションは前作に引き続き快調。ロイヤルワラント級スーツの英国紳士の世界から、普段はアディダス愛用のエグジー(タロン・エガートン)、そして米カウボーイスタイルと、ファッションまでちゃんと意味を持って組み込まれた映画作りの秩序は格別。

    ハリーは前半ポンコツ化、ジュリアン・ムーア扮するサイコ女傑が目立つ形で、ブラックてんこ盛りだが(トランプ&ドゥテルテ風刺も窺える)、結構悪ノリが激しく好みは分かれるかも。ただし、ほぼ「ファック」しか言わないエルトン・ジョンの怪演は文句なしの加算対象!

  • 最低。
    女優(たち)の映画としては「最高。」の域
    ★★★★

    原作は陽性、映画は陰性。紗倉まなの小説に底流するタフな、というよりどこかあっけらかんとした「明るさ」が欠落している事に、実は最初引っ掛かっていた。身バレの社会疎外という主題性が強く、より一般的な視座に寄せた趣か。ただ原作の四編中三篇を再構成したパノラマ的な群像劇を観ているうち、原作とはまた別個の感銘に達していった。

    下手すれば凡庸化になりかねぬ脚色の方向性を、しっかり映画の個性に定着させたのは何より女優陣の力だと思う。紗倉からグラデーションで繋がる佐々木心音、森口彩乃の大胆な踏み込み、山田愛奈が体現する思春期の刺々しさ。脇を固める実力者たち。各々が役割に適切かつ最高値で応じるアンサンブルだ。

  • わたしは、幸福(フェリシテ)
    赤道直下のソウル・パワー
    ★★★★★

    すんごいセクシャル。住人たち(登場人物)の桁違いの生命力、スラムにも洗練と混沌が共存するエクストリームな街の表情が、映画の官能性に直結している。前半の展開は『ローサは密告された』を連想したが、むしろ磁場の強さに圧倒され、やがて「幸福」の探究を主題にスピリチュアルな趣を持つ後半に傾いていく。聖と俗、慈悲と残酷、濃厚な性愛の沸騰。

    コンゴ民主共和国の首都キンシャサ――といえばザイール時代に『ソウル・パワー』のライヴステージが開催された場所でもある。カサイ・オールスターズの演奏は、固有の地理に根差した「ソウル・ミュージック」として筆者には聴こえた。精神ごと土地と人間を活写した超・写真集的な傑作だ。

  • 希望のかなた
    今日のニュースを、市井の職人はパンの味にこめる。
    ★★★★★

    カウリスマキ自身が本作を「傾向映画」だとコメントしていることに深く納得しつつ、やはり笑いがこぼれてしまう。その発言自体、ユーモラスかつ真摯。そして生活者として、市井の映画作家として、いまの社会状況と当たり前のように付き合い続ける「時代の人」だとも思った。シリア難民の流転劇の今回は、世界の不寛容に対する優しい反骨にあふれている。

    小津安二郎は自身のことを豆腐屋に喩えたが、それに倣うとカウリスマキはパン職人というイメージだ。毎朝起きては天然酵母で有機栽培の小麦粉をこね、同じようで日々味が違う、みたいな。今回はかっこいい音楽も満載。ちなみに史上最悪のスシ屋が出てくることだけお知らせしておきたい!

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