シネマトゥデイ

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「メンズノンノ」「Numero TOKYO (Web)」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。

近況: BSスターチャンネルの無料放送番組「GO!シアター」、12月は『パッドマン 5億人の女性を救った男』『私は、マリア・カラス』『それだけが、僕の世界』についてコメントしています。執筆参加した『世界のカルト監督列伝』『鬱な映画』『漫画+映画!』『新世紀ミュージカル映画進化論』『究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10』(いずれも洋泉社)が発売中です。

サイト: http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • パッドマン 5億人の女性を救った男
    ものづくりの無血革命と男性視点のフェミニズム
    ★★★★★

    傑作。実話ベースの成功物語だが、実現までの壮絶さは憲兵からの拷問を受ける『まんぷく』の萬平さんにも負けていない。普通のおっさんが生理用ナプキンを自作し始めると、インド社会の慣習のタブーに露骨に触れて村がざわつき始める。主人公が保守的な価値観から徹底排除されるのが前半だが、それは新時代に移行する為の儀式にも見える。

    後半はまるで21世紀版のキャプラ『スミス都へ行く』だ。利権よりも分配の精神、女性の社会的地位向上を説く演説シーン。この理想主義が爽やかに響くのは猛烈な過渡期にある現代インドならではだろう。『きっと、うまくいく』辺りからボリウッド娯楽映画は先端的な大衆思想の反映も注目点となった。

  • たまゆらのマリ子
    マリ子の炎上ロストワールド
    ★★★★

    驚き! 「ストレスの肥大」の視覚化でこんなに巧いのは見たことないかも。クソな環境に身を置いて不満を内に溜め込んでいくと、負のセンサーがやたら過敏になる。やがて怒りの質量がどんどん重くなり、エフェクトを掛けるように体感する現実そのものが幻想と混濁して変容していく。

    この感覚を「芝居と実景」だけで見事に表現しているのだ。瀬川浩志監督の語り口はリアリズムからの拡張という生命線を手放さず、本質的な意味で優れたシュルレアリスム映画だなと思うのだが、普段は標準語、だんだん心の声の凶暴な関西弁が漏れまくっていく主婦マリ子(牛尾千聖)の転がり方はスラップスティック的でもあり、バスター・キートンも連想した。

  • グリンチ
    一周まわって普通にメリークリスマス
    ★★★★

    毎度おなじみ、X'masの聖なる力(&ある種の正論)で中二病的ひねくれ男を諭すお話。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』派としては基本「上から目線」な説教臭さが苦手ではあるんだけど、アクション主体の軽快な語り口が魅力で結構脱臭作用がある。こってり芝居で押すジム・キャリーの実写版(00年)よりずっと見やすいかなと。

    イルミネーション作品はいつも既成曲が溢れるジュークボックス・アニメーションといった趣だが、今回はコンセプトが強固なせいか、ダニー・エルフマンのスコアがメイン。もちろんさすがの出来ばえ。そしてリトル・リチャードが流れる前座短篇『ミニオンのミニミニ脱走』のロックンロールな快走で加点!

  • 彼らの原発
    新鮮かつ原初的なドキュメンタリーの醍醐味がある
    ★★★★★

    象徴的に言えば、ここは「3.11以前」の日本社会が温存されている場所ではないのか。もちろん住民の意識差はまちまちで、不意打ちのように魅力的な顔が映る。同時に「住んでる人間でないとわからん」一筋縄ではいかない複雑な現実が無加工に近い状態で圧縮されている。

    カメラの向こうから“普通の男子感”出しまくりな口数の少ないこの若い監督は「愚者のふりをした賢者」かも。エゴが見えない自然体の佇まいでコミュニティの中にするっと入りこみ、普段喋らない重要な本音をポロッと喋らせる。ラフな撮影と編集の中に宝石のような瞬間が多々あり、レイヤーを掻い潜って世界を発見していく過程が生っぽく伝わってくる。シメは三上寛!

  • パンとバスと2度目のハツコイ
    ソフト化のタイミングで未見の方はぜひ!
    ★★★★★

    劇場公開時に書き損ねたので遅ればせながらの賛辞を。今泉力哉イズムの恋愛輪舞が商業映画の企画内で端正かつ高精度にまとまった逸品。「好き」の不安定・不確定と絵を描くことの終わりを巧く掛けたオリジナル脚本。ポール・オースター『孤独の発明』(使い方がわりに村上春樹的)なども伏線のピースというより出汁のもと的な余白として効いてくる。この辺りのセンスは上等。

    そして何より役者の良さだ。ヒロイン・深川麻衣をはじめ、妹・志田彩良、達者な伊藤沙莉(設定に注目)の魅力。とりわけ「非文化系」の好青年、三代目JSBの山下健二郎のキャラは今泉の画期ではないか。マイペースな作家の確かな自己更新が見て取れる嬉しい一本。

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