シネマトゥデイ

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「メンズノンノ」「週刊プレイボーイ」「Numero TOKYO (Web)」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。

近況: 10月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町にて『運命は踊る』18:55の回上映後、脚本家の會川昇さんとトークさせていただきます。BSスターチャンネルの無料放送番組「GO!シアター」、10月は『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』『ガンジスに還る』についてコメントしています。執筆参加した『世界のカルト監督列伝』『鬱な映画』『漫画+映画!』『新世紀ミュージカル映画進化論』『究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10』(いずれも洋泉社)が発売中です。

サイト: http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • アンダー・ザ・シルバーレイク
    パワフルなテクストの集積にざぶんと入る(プールにご注意!)
    ★★★★★

    前二作からの流れで観ると、完全にD・ロバート・ミッチェルの三部作かつ全面展開だ。青春の終わりを迎えた三十路男がポップカルチャー陰謀論の狂った探偵となり、アソシエイションからR.E.M.までの選曲も含めて完成しないパズルのピースが用意される。

    露骨に『サンセット大通り』『A・ウォーホルのヒート』『マルホランド・ドライブ』などLA/ハリウッド郊外悪夢譚の系譜だが、その本質を最も明晰に浮き彫りにした後継と言える。要はポストモダンな現実、消費社会の霊園を生きる事。我々の琴線に触れるのは、おもちゃ箱的な快楽の裏にある虚無と哀しみの詩情。そして最近オッと思う米映画はこの会社じゃんという「A24」は凄い!

  • 運命は踊る
    イスラエルの固有性が世界の普遍に橋渡しされる凄さ
    ★★★★★

    黒澤明からの影響を公言するS・マオズ監督だが、本作は異なる視点への切り替えで全体性を浮上させる明晰な語りにおいて『羅生門』を彷彿させる。自らの従軍体験をPOVで焼きつけた『レバノン』に対し、今回は国と民族のトラウマを対象化して家族の悲喜劇に凝縮させた。一見洗練された生活の奥にレバノン戦争やホロコーストなど歴史の層が、そして個と世界のメカニズムが見えてくる。

    原題のFOXTROTが示すのは、まさに運命のダンス。負の連鎖というよりプラスマイナスゼロの法則――因果応報のパズルだが、父が息子に聞かせる1970年1月号のピンナップガールを巡るお話など、大きめで愛敬たっぷりの特別なピースも混ざっている。

  • 世界で一番ゴッホを描いた男
    わだばゴッホになる
    ★★★★

    名画のファストファッション的な複製画工房といったところか。中国・ダーフェン油画村については以前NHK『地球イチバン』で観た事があり、その時に複製専門職は「画工」、オリジナルの発表者は「画家」との称号で呼ばれると知った。本作ではゴッホを独学で描いて20年のベテラン「画工」が憧れのアムスに行く。

    もし技法を研究し魂や思考ごとトレースし尽くし、本気の情熱で「偽物」の精度を上げていけば「本物」を転倒させる“アート”が生まれ得ると思う。だがこの中年男性に眠っていたのは“青年的な自我”だ。偉大な先人の模倣を経て、独り立ちして「ゴッホの弟子」となる。棟方志功などもこのプロセスを普通に通ったのかもしれない。

  • 太陽の塔
    「彼」は何を見ているのか、の徹底探究
    ★★★★★

    近代以降の頽廃に突き立てた中指のように、万博を超えて進歩主義のぶっといアンチテーゼとして屹立し続ける太陽の塔。この未知の怪獣的モニュメントから全方位的に岡本太郎、思想家としての彼を取り囲もうとした意欲作で驚くほど見応えがある。国家(公的)事業と前衛芸術の転倒的な関係は『バンクシーを盗んだ男』にも通じるし、むろん『縄文にハマる人々』と繋げても面白い。

    バタイユについて語ると爆発寸前に熱くなる西谷修先生など、語り手の面々も魅力的。監督の関根光才は続けて趣里主演『生きてるだけで、愛。』(これも力作)も公開されるが、共に人間のある種の獣性、システムを食い破る過剰な生命力を志向している点が興味深い。

  • 教誨師(きょうかいし)
    魂の共振する小さな部屋がマグマのように熱くなる
    ★★★★★

    ほとんどギリシャ哲学的な対話劇。死刑制度という人間存在の根源と社会システムを複合的に問う難しい主題に、監督の佐向大は『休暇』(脚本)の成果を踏まえて執念で喰らいつく。スタンダードサイズの限定空間で放たれる言葉の精度と密度。シンプルな前半から映像的に豊かな後半へ。『絞死刑』を連想する向きは多いだろうが、もっと愚直かつ熱誠なアプローチで考察を深めていく。全編静かだがものすごくエモい。

    大杉漣最後の主演作だが、ホスト役=受ける側として皆の話を傾聴する役回りなのに泣けた。百戦錬磨のプロと新星・素人を混ぜ込んだ配役は価格帯ミックスによる最強コーデ的な効果を生み、とりわけ烏丸せつこの「本物」感は圧巻!

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