シネマトゥデイ

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「朝日新聞」「キネマ旬報」「テレビブロス」「週刊文春」「週刊プレイボーイ」「メンズノンノ」「Numero TOKYO」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。

近況: 9月15日(金)19:30より、Mistletoe×PLANETS特別企画「情報環境は映画/音楽の快楽をどう変えるのか」にて、『ラ・ラ・ランド』をめぐって音楽ジャーナリストの柴那典さんと対談します(司会:宇野常寛さん)@会場:STRATUS TOKYO(外苑前)。※LIVE中継あり。執筆参加した『漫画+映画!』『新世紀ミュージカル映画進化論』『究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10』(洋泉社)が発売中です。

サイト: http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • おクジラさま ふたつの正義の物語
    世に蔓延している安易な「答え」を、適切な「問い」に引き戻す
    ★★★★★

    筆者が和歌山出身だから、というわけではないと思うが、アカデミー賞作品『ザ・コーヴ』ほどプロパガンダの恐ろしさを実感した映画はない。反捕鯨、という「答え」が先にあるだけで、映し出される「風景」がまるで変わってしまうことに衝撃を受けたのだ。本作はそのアンサーの試み――公平な反証から再検討を通して、建設的な解毒剤の役割を果たす。

    佐々木芽生監督は問題の全体性を図式的な対立構造から丁寧に解きほぐしていく。太地町の生活に馴染んだ米国人ジャーナリストのジェイ・アラバスター氏など、優れた「個」の姿も含め、実にいろんな声をたくさん拾っている。どこにも偏らない視座というのは、それだけでなんと感動的なのか!

  • ダンケルク
    これは完全にエンタメ大作の顔をした実験映画だ。
    ★★★★★

    ノーラン流儀がさらなる最高値をマークした大怪作に近い大傑作。二回目の鑑賞で、超緻密でハイボルテージな破格の異形設計とサウンドスケープに改めて圧倒された。既存のコードを解体してシャッフルした時間と空間=戦場に蠢くのは、剥き出しの無数の「個」。ハリー・スタイルズさえ何の変哲もない一人の兵士として放り出されている。

    本作に影響を与えた映画群11本をノーランは公式発表しているが、お話の枠組みとして最も近いのは『炎のランナー』だろう。「ダンケルク・スピリット」という英国の国民的な物語、スタンダードな美談を、この映画でしか体感し得ない“新しい世界”として、最初から自分で図面を引いて組み立てている。

  • すばらしき映画音楽たち
    確かにとっても「すばらしき」充実の内容!
    ★★★★★

    原題はずばり“SCORE”。これほど本格的な劇伴についてのドキュメンタリーは史上初ではないか? 無声映画時代からの歴史・変遷、そして現在の状況まで、わずか93分でまるっと総ざらい。証言者もハンス・ジマーやジャンキーXLことトム・ホルケンボルフなど錚々たる重要人物がずらずら出てくれる。

    ジェームズ・キャメロンが作曲家のことを「セラピスト」に喩えているのが面白い。映画監督の感情や意図を汲み取って音楽に変換する。方法はオーケストラ、電子音楽、おもちゃの楽器まで……。ダニー・エルフマンいわく「バーナード・ハーマンから学んだのは、映画音楽にはルールがひとつってこと。それは“ルールはない”だ」!

  • オン・ザ・ミルキー・ロード
    シンプルに純化されたクストリッツァの活動写真
    ★★★★★

    『ジプシーのとき』から『アンダーグラウンド』『黒猫・白猫』に至る独創の形成がクストリッツァの青年期~壮年期だとしたら、完成したスタイルを自らの原点に向かい、ある種の透明性に戻しているのが以降の流れだと思う。今回ついに監督&主演=「自作自演」で、彼の無声活劇/喜劇志向が全開になった。過去にオマージュを捧げていたチャップリンや、キートン、ロイドばりのドタバタ劇を全身全霊で生きてみせる。

    もちろん映画全体で奏でられるのは祝祭と破壊が渾然一体となったボリュームたっぷりのバルカン狂騒曲。これだけハイエナジーのボーイ・ミーツ・ガール(!)に付き合ったM・ベルッチに拍手。『鶴は飛んでゆく』の引用も泣ける。

  • ひいくんのあるく町
    この監督は町の中に残り続けるイノセンス=希望を追いかけていく
    ★★★★

    町はずれのホームセンターにいる「ひいくん」にカメラがついていくところから、次第にひとつの共同体の歴史と現在、不思議な有機性が見えてくる。場所は山梨・市川大門。甲府のシャッター街を映し出した大作としては空族の『サウダーヂ』があるが、こちらはわずか47分で、日本社会のある断面のずいぶん奥深くまで案内してくれる。

    これを日本映画大学の卒業制作として撮った監督・青柳拓は、自らが直面した問題に素直に反応し、そこから生じた疑問に向け、ぴったり等身大のサイズで次の思考と行動につなげていく。戦略や野心どころか、余計な自意識すら絡むことがない。目の前の物事を身の丈でまっすぐ見つめるニュートラルな知性は宝だ。

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