シネマトゥデイ

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「メンズノンノ」「週刊プレイボーイ」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。

近況: テアトル新宿にて『素敵なダイナマイトスキャンダル』トークイベント。4月14日(土)23:00~スタート「末井昭オールナイト」の上映前、末井昭さん×柄本佑さん×冨永昌敬監督のMCを務めます。BSスターチャンネルの無料放送番組「GO!シアター」、4月は『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(一週目)、『心と体と』(二週目)、『タクシー運転手』(三週目)、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(四週目)についてコメントしています。同じく同番組内「映画をもっと SPトーク」で「THE 映画対決!強盗VS刑事」にも出演しております。執筆参加した『世界のカルト監督列伝』『鬱な映画』『漫画+映画!』『新世紀ミュージカル映画進化論』『究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10』(いずれも洋泉社)が発売中です。

サイト: http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • ダリダ あまい囁き
    「ダリダ」と「ヨランダ」の狭間で
    ★★★★

    満を持しての映画化、というべき安定の完成度。1967年パリでの自殺未遂を起点に、仏の国民的歌姫ダリダ(1933年生で美空ひばりより4歳年上)の54年間の数奇な生涯を多面的に探っていくミステリー風の語り口が吸引力アリ。主題は社会的ペルソナ「ダリダ」と、等身大の女性としての「ヨランダ」(本名)のギャップ&葛藤。普通の幸福をこそ求め、それに逃げられた、というスーパースターの素顔は我々にもわかりやすい理解だろう。

    音楽映画としては演者の物真似パフォーマンスではなく、オリジナル音源を使ったのが大正解。伝記ドラマの真実性と、本物の歌声の説得力がうまく融合している。70年代後半の米国進出ディスコ時代も◎!

  • モリのいる場所
    イノセントへの志向の裏に
    ★★★★★

    沖田修一監督の「若年寄」イズムが十全に発揮された一本。朴訥かつ巧緻な味わいの中に、微量の毒や風刺精神がぴりっと効いている。山崎努が自身のアイドルと語る熊谷守一の大切な企画を、ベテランではなく沖田監督に任せた事自体に感動。昆虫学者ファーブルの「アルマスの庭」等を連想する庭の造形と描写も素晴らしく、まさにひとつの宇宙といった趣。

    設定は昭和49年、高度経済成長の延長で都市化の波が起こっており、美大生達による建設反対運動は三里塚闘争にリンクする時代の雰囲気アリ(その一方、お茶の間的なドリフターズの話題が出るさじ加減がいい)。樹木希林つながりの他、問題提起の在り方としても『人生フルーツ』に通じる。

  • 妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII
    平成の終わりになって、ようやく「昭和」の男女観が終わる?
    ★★★★

    働き方改革のせいだろうか、保育園に息子を送っていく時に会うパパの数が随分増えた(数年前とえらい違いですよ!)。そんな生活の現場感覚からすると、本作の「専業主婦の倦怠」や「パートに出る出ない」といった問題の立て方は、いかにも『サザエさん』的な呑気さに思える。とはいえこの意識には世代差があり、全体のギャップを埋めていく作業は必要なのだろう。

    西村まさ彦扮する幸之助は、おそらく「昭和」の亭主関白、男性優位の最後のシンボルではないか。日本を代表するベテラン巨匠監督が、ついにその息の根を止めた、とは言えるかも。そこから『マディソン郡の橋』を彷彿とさせるラブストーリーに転調する語りの巧みさは流石。

  • ファントム・スレッド
    PTA初の「男脳・女脳」系映画ですよ!(もちろん傑作)
    ★★★★★

    なんと英国の物語!ってのはある種隠れ蓑で、実のところコレは最もP・T・アンダーソンの「自分語り」に近いのでは? 孤高のオートクチュール職人、完璧主義者のデザイナーが主人公だが、顧客がいてナンボという商業性との兼ね合いが映画監督の仕事に共通するとアンダーソンは語っている。そして理想的なミューズとして迎えたモデルが「普通」の女子だっていうジレンマ!

    ウケたのが「サプライズ」をめぐる相違のエピソード。そりゃもう哲学者カントの日常に爆弾を落とすようなものだろう。オタク男と世俗パワー全開妻の痴話げんかを異常な緊張感で『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のヴァリエーション的な主従関係劇に仕立てる腕は圧巻!

  • 枝葉のこと
    たぶん今年の映画でいちばんゴロッと生々しい
    ★★★★

    『魅力の人間』でPFFアワード2012準グランプリ。あれから何年だよ! 異能・二ノ宮隆太郎がようやく渾身の長編を撮った。推薦コメントで山下敦弘監督が「初期・北野武映画」を例に出しているが、本当にそう。あの歩行のリズム。ザキヤマ系の本人を映しているだけで、音楽一切なしの画面がこれだけ持つのは驚異的。

    「重さ」を中心に、「軽さ」は脇に(クズな会話は相変わらず秀逸)。優しい不肖の放蕩息子にして、まだ終わっていない労働者にして、ある無名作家の鬱屈は、苛立ちの青春を過ごした者なら痛いほど染みるに違いない。不器用が反転した乱暴さと、面倒臭いほどの繊細さで、極私的な焦燥からひとつの普遍にタッチしている。

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