シネマトゥデイ

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「朝日新聞」「キネマ旬報」「テレビブロス」「週刊文春」「週刊プレイボーイ」「メンズノンノ」「Numero TOKYO」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。

近況: 執筆参加した『漫画+映画!』『新世紀ミュージカル映画進化論』『究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10』(洋泉社)が発売中です。

サイト: http://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • ブランカとギター弾き
    若き奇才から、優しき俊英へ
    ★★★★

    前衛ゴリゴリの駒場寮ドキュメンタリー『W/O』(00年)以来、不意打ちのようにお目に掛かった長谷井宏紀(林文浩の名著『外道伝』では「アートバカ」として紹介)の新作。かつてのイメージとは大きく異なる平易な作風に驚かされた。これは完全に良い意味での成熟だろう。余計な手を加えず、ただ世界に耳を澄ますかのように、アンプにつないだアコギの音も、路上の子供達のざわめきも、すべてが豊かな人間味を持って響いてくるのだ。

    お話はシンプルな枠組みだが、しかしその中にマニラの街の多元性が生々しく記録されている。クストリッツァからの賞賛を裏返せば、彼とは全く違った方法で同じことを描いている映画と言えるかもしれない。

  • ロスト・イン・パリ
    巴里の空の下セーヌは流れる
    ★★★★

    日本公開は7年ぶりとなるアベル&ゴードンの新作(ブルーノ・ロミは不参加)。クセになるスタイルは一段と磨きが掛かり、「もっと(他の作品も)観たい」という気持ちにさせられる人達だ。今回は伝統的な仏映画のコミカライズ版といった趣。パントマイムを基盤に、色使いまで計算され尽くした可愛いタッチが貫かれ、主に描かれるのは本人達の言葉を借りると「橋の下のパリ」だ。

    カナダの田舎からやってきたマンガ的な喪女と、シーニュ島(小型の「自由の女神」像がある)にテントを張るセーヌの放浪者。「下層」から人生をライトアップし、殺伐とした現代に古典的な明るい光をもたらす。道化師ならではの洗練された風刺に全編惚れぼれ。

  • 歓びのトスカーナ
    誰かが押した「失格」の烙印をぶっ飛ばす
    ★★★★

    この映画は、あらゆる人物を「評価」の目線で見がちな我々に自戒を促すところから物語を起動させているように思う。施設から脱走したWヒロインの狂騒はアクが強い。他人に迷惑をかけまくる。しかし次第に彼女たちの「魂の旅」に胸の奥が熱くなる。ドナテッラが養子に出された息子にこっそり会いに行くくだりは涙腺崩壊!

    本来、人間はどのように生きてもいい――そんな理念に基づき、制度からの解放を謳ったのが米ニューシネマだった。本作は『カッコーの巣の上で』等を正統的に受け継いで(『テルマ&ルイーズ』を連想させるのもこの文脈故だ)、イタリア社会のある種の寛容性の上にドラマを成立させている。久々の王道ルーザー映画の秀作!

  • MOTHER FUCKER
    実は珠玉の「感動作」です!
    ★★★★

    ロック・ドキュメンタリーとしては地下日本の偉人シリーズ、“Less Than TV”の密着物だが、むしろニューファミリーの考察というアングルで観て欲しい傑作だ。親が若い頃の自己実現の延長に居て、その趣味性(文化)に子供が触れて育っているマンション住まいの核家族――と言えば、これは現代日本のスタンダードな都市生活者の姿である(ウチもそう)。

    映画は小学生の一人息子・共鳴君が自身Vo.を務めるバンド(!)チーターズマニアのデビューライヴの日に向けて進む。この構成が秀逸で、家族3人チームの葛藤がひとつの成功体験に結実していく。息苦しいと言われる世の中だが「楽しく生きる」やり方はいくらでもあるのだ。

  • 彼女の人生は間違いじゃない
    『君の名は。』や『シン・ゴジラ』が描かない「場所」と「人」
    ★★★★★

    廣木隆一監督自身による小説も素晴らしかったが、これは「映画」として新たな貌を獲得した傑作。特に瀧内公美(拍手!)が福島の仮設住宅から高速バスに乗って渋谷に向かうロードムービー的パートの、まるで「国境」を超えるような感覚の時間推移にハッとした。この週末出勤は震災以降、再編成されてしまった東京と地方の関係性、近くて遠い心的距離をまざまざと示しているように思う。

    秋葉原から東北へと巡礼を延ばした『RIVER』以降、『こどものみらい~』『海辺の町で』、『さよなら歌舞伎町』も含め、3.11を起点に自らのルーツを再探究した「廣木サーガ」の決定的な一本。今泉力哉の『退屈な日々にさようならを』とも並べたい。

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