森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「Numero TOKYO 」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況: YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。8月10日より、渡辺紘文監督&雄司さん(『テクノブラザーズ』)の回を配信中。ほか、熊切和嘉監督(『658km、陽子の旅』)、片山慎三監督(『ガンニバル』)、佐向大監督&山岸謙太郎監督&小村昌士監督&小林且弥プロデューサー(『無情の世界』)、二ノ宮隆太郎監督(『逃げきれた夢』)、高橋正弥監督(『渇水』)、シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

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  • コンフィデンシャル:国際共助捜査
    抜け感増しも大歓迎!
    ★★★★

    ヒット作の続編らしい余裕や軽みが良く出た好編。今回は南北に米が加わり、前作のバディムービーを超えてトリオ編成のチーム戦になる。ユ・ヘジンは自分達をアベンジャーズに擬えるが、むしろ連想させるのは『ミッション:インポッシブル』。ヒョンビンがトム・クルーズだとすると、ダニエル・ヘニーとのWイケメンにユ・ヘジンがサイモン・ペッグ的なお笑い担当という図式。

    笑いの点で今回ハネてるのが少女時代のユナ。悪役は『犯罪都市』(『コンフィデンシャル』の1作目と同じ2017年)等で強い印象を残したチン・ソンギュ。監督は前作から交代したが本格都市型アクションの強度も問題なく、韓国映画界のシステムの盤石ぶりを感じる。

  • クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド
    ヨーロッパにやってきた1970年のトラヴェリン・バンド
    ★★★★

    また凄いお宝が発掘された。1970年1月、人気絶頂期のCCRのパフォーマンスが劇場で体験できる。カリフォルニア野郎達4人組が、最初で最後の欧州ツアーに繰り出し、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールへとたどり着く。50年も埋もれていた記録フィルムが埃を払って開封だ。

    前半は少年期に結成されたザ・ブルーベルベッツなどバンドのバイオグラフィーで、こちらも貴重。後半は約50分ノンストップ。「トラヴェリン・バンド」から始まり、曲間も短くシンプルに畳み掛けるエナジー爆発の演奏。一連の4K復元ライヴ映画は音楽ファンにとって最高のタイムマシンだ。このデジタルの恩恵には、良い時代になったなあと呟きたくなる。

  • バーナデット ママは行方不明
    クセは強いが、しっかり笑えて泣ける!
    ★★★★

    リンクレイターが傑作『アポロ10号1/2 宇宙時代のアドベンチャー』(22年)の前に撮った2019年の快作。サタデー・ナイト・ライブの作家出身、マリア・センプルの小説が原作。ビートルズの『アビイ・ロード』丸ごとがシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」になったり、シンプルに変換・整理しつつ独特の雰囲気を良く伝えている。

    情緒不安定なズボラ主婦だが実は元天才建築家――というC・ブランシェットの一見完璧な強者の軋み(今回はその反転形)は、『TAR』『ブルージャスミン』『キャロル』等とも通じる十八番。そこから真っ当な人生の再生劇へと転がる展開が抜群で、南極(ロケはグリーンランド)も美しい!

  • 月
    ベストワンとしか言いようがない
    ★★★★★

    どんな言葉も届かぬ凄まじさ。『茜色に焼かれる』のパワーをさらに超え、超重量級の映画作家の貌となった石井裕也が立ち現れる。相模原障害者施設殺傷事件をモチーフに(同事件を反映した先行作には大森立嗣の『タロウのバカ』がある)、寝たきり入所者の視座/想念から書かれた辺見庸の小説を果敢な豪華キャストと共に大胆に再創造した。

    この映画を観ることは、人間存在の闇の奥底に独りゴンドラに乗って降りていくような体験と言えるだろうか。他人事で済ませぬ殺傷力。欺瞞や虚飾をぎりぎりまで剥いでいく真摯さ。『エレファント』の参照や井上陽水の名曲「東へ西へ」もこれ以上ないほどハマり、どこまでも消えぬ衝撃をもたらす。

  • ほつれる
    加藤拓也が世界に届く日も近い
    ★★★★

    序盤の「交通事故」というモチーフで、カサヴェテスの『オープニング・ナイト』と成瀬の『乱れ雲』が同時に頭に浮かんだ。実際、人間関係がほつれゆく様には両作家ばりのエグみを感じる。日本の映画界を代表する演技巧者がそろい踏みのキャスティングだが、その中で田村健太郎の「相手に独特のプレッシャーを与える気持ち悪さ」が出色。

    初監督の『わたし達はおとな』でリアリズム演劇のメソッドを巧みに応用した加藤拓也だが、今回はカメラの手数が明らかに増え、前作で監督が自己規定した「覗き見感覚」を超える深度を獲得したのでは。極めてソリッドな84分で、深田晃司作品の編集等も手掛けるシルヴィー・ラジェの参加も大きいと思える。

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