シネマトゥデイ

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「他者」にヘイトの叫びを上げる排他性の国の住人は今こそ必見だ

  • 天国の門
    ★★★★★

     あきらかに当時は、作品評価よりも感情的拒絶だったのだろう。失敗作のレッテルが貼られた“呪われた映画”などという言葉で語り継ぐことに、もうピリオドを打つべきだ。
     
     ベトナム戦争の現実を直視した『ディア・ハンター』に次いでマイケル・チミノが選んだのは、19世紀末ワイオミングで起きたジョンソン群戦争だった。希望にあふれる時代の後に訪れた魔の刻。それは、富裕層が東欧系移民を粛正した酷たらしい事実だ。淡く流麗なヴィルモス・ジグモンドのキャメラが、陰惨な事件の背景を雄弁に語る。公開時1980年というアメリカの時代状況が、人間心理のはらわたから目を背けさせたのだ。30年以上の歳月を経て、チミノ監修による完全版によって、ようやく作品を受け容れられる者も多いはずだ。
     
     では、アメリカ成り立ちまでの黒歴史にすぎないのか。いや、決して対岸の火事ではない。土煙の中の凄絶な戦いは、過去のものですらない。内向きになり、「他者」にあらぬ疑いをかけてヘイトの叫びを上げる排他性が根絶しない限り、地獄への門はいつ何処でも開く。酒瓶片手に傍観するジョン・ハートにならぬために、我々も今まさに直視すべき作品である。

⇒映画短評の見方

清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家・クリエイティブディレクター●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX、ニッポン放送●円谷プロ「ULTRAMAN ARCHIVES」●過去に「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書に「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞、ギャラクシー賞、民放連最優秀賞 受賞

近況: ●ニッポン放送「草野満代 夕暮れWONDER4/朝ドラ特集」●kotoba春号「特集:ブレードランナー2019-2049」●デジタルハリウッド大学「アニメフォーラム」講演●映画.comコラム●「Pen」SF特集/●NHK BSプレミアム「ザ・ベストテレビ」出演●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」●TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」

サイト: http://eiga.com/extra/shimizu/

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