シネマトゥデイ

シネマトゥデイ

圧倒的に生々しい

  • 父の秘密
    ★★★★

    新装版『キャリー』はイジメ描写をSNS仕様にアップデートしたのは律儀だけど、筆者には「スター女優のキャリーごっこ」にしか見えなかった。だが同じ学園のイジメを扱いつつ、段違いの生々しさを備えているのがメキシコ映画『父の秘密』だ。ヒロインは転校先の学校で、最初優しい歓迎を受けるのだが、男子生徒とのハメ撮り動画がインターネットで出回り生き地獄に突き落とされる。この十代の性欲の凶暴性も、陰湿な手のひら返しもめっちゃリアル。ヒロイン役は新進女優テッサ・イアだが、クラスメイトを演じるのは大半がイアの友人の素人だという。

    後半は、それまで妻を亡くした喪失感で抜け殻になってた父の怒りが爆発。『ハードコアの夜』や『サマリア』を想い出す人も多いだろうが、叙述自体は淡々としたドキュメンタルなタッチを貫く。だが空気は徐々に殺伐さを湛え、やがて至る海上での凄みのある長回し撮影は圧巻!

    作風は「ダルデンヌ兄弟+ミヒャエル・ハネケ」。いかにもカンヌ受けしそうなタイプだけど(「ある視点」部門グランプリ)、優等生枠に納まらぬ殺傷力アリ。監督は1979年生のマイケル・フランコ。熱い国メキシコからクールな才能の登場だ。

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森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「メンズノンノ」「Numero TOKYO (Web)」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況: YouTube配信番組『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。11月30日より、竹内洋介監督(『種をまく人』)の回を配信中。ほか、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)、樋口尚文監督(『葬式の名人』)、映画ジャーナリストの徐昊辰さん(『SHADOW/影武者』&『帰れない二人』について)、田中征爾監督(『メランコリック』)、大崎章監督(『無限ファンデーション』)、安里麻里監督(『アンダー・ユア・ベッド』)、深田晃司監督(『よこがお』)、江口カン監督(『ザ・ファブル』)、長久允監督(『ウィーアーリトルゾンビーズ』)、工藤梨穂監督(『オーファンズ・ブルース』)、三宅唱監督(『ワイルドツアー』)、佐向大監督(『教誨師』)、片山慎三監督×松浦祐也さん×和田光沙さん(『岬の兄妹』チーム)、二宮健監督(『チワワちゃん』『疑惑とダンス』)、広瀬奈々子監督(『夜明け』)、緒方貴臣監督(『飢えたライオン』)、関根光才監督(『太陽の塔』『生きてるだけで、愛。』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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