露わになる戦争の不条理

2019年4月6日 中山 治美 セメントの記憶 ★★★★★ ★★★★★

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セメントの記憶

”風が吹けば桶屋が儲かる”じゃないが、”戦争が起これば建築業者が儲かる”。
内戦後、再開発ラッシュで湧くベイルートの労働力となっているのは、今まさに内戦真っ只中のシリア人移民労働者だという。
本作はセメントを媒体に、戦争の不条理を静かな怒りを持って白日の下に晒した秀作だ。
建築現場から見える海は美しく、歩み始めた街からは活気すら感じる。
しかし彼らは、時に工事音に戦時中の記憶を呼び覚まされ、夜はスマホで破壊されまくっている母国の状況を見守る。その心情は幾ばくか。
ドキュメンタリー映画『アレッポ 最後の男たち』と合わせて鑑賞すると、本作がより重層的に胸に響いてくるに違いない。

中山 治美

中山 治美

略歴:茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。GISELe、日本映画navi、goo映画、スカイパーフェクトTV(ぴあ)、朝日新聞webサイトおしごとはくぶつかん情報館内で「おしごと映画」を執筆中。いつの間にやら映画祭を回るのがライフワークとなっている。お気に入りはオランダ・ロッテルダム国際映画祭とスペインのサンセバスチャン国際映画祭。

近況:本サイトで「映画で何ができるのか?」と「ぐるっと!世界の映画祭」を連載中。また、編集に携わった塚本晋也監督・著「『野火』全記録」(洋泉社)、DVDマガジン「石原裕次郎シアター」(朝日新聞社)が発売中デス。ライフワークの旅の記録をまとめたブログはこちら。https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

サイト: https://www.oshihaku.jp/series/00007

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