シネマトゥデイ

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猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • デトロイト
    あまりにタイムリーであることに胸が痛む
    ★★★★

    近年アメリカでは、警察の人種的偏見のせいで罪のない黒人が命を落とすことが続いた。 “Black Lives Matter”は、それに抗議する運動だ。一方、この映画の舞台は1967年で50年も前。なのに、あまりにもタイムリーに感じられるという事実に、胸が痛む。デトロイトの暴動は数日に及んだのだが、映画は主に一晩の出来事に焦点を絞る。そこで起きる黒人市民に対する暴力は本当にひどく、目を背けたくなることも。だが、どんなに辛くても、現実を現実として見せたのは、被害者への敬意。社会や政治の問題点を指摘する、パワフルでサスペンスにあふれる映画を作り続けるキャスリン・ビグローに、あらためて拍手を送る。

  • ナチュラルウーマン
    その人をそのまま見ない、偏見の残酷さ
    ★★★★★

    街中で、 ベッドの上で。映画にはたびたび鏡が登場し、主人公マリーナの顔が映し出される。だが、人は自分をそのまま見てくれないのだという現実を、彼女は見せつけられることに。ゲイであるために愛する人の葬式にも行けなかった悲しみはトム・フォード「シングルマン」でも描かれたが、今作は現代の話。偏見から勝手な詮索をされたり、侮辱を受けたりしても、彼女は威厳を保ち続ける。英語のタイトル「A Fantastic Woman」(卓越した女性)は、そこから来るのだ。トランスジェンダーの作品は近年少しずつ出てきたが、今作は実際にトランスジェンダーの、しかも優れた女優を探し出してキャストしていることも評価すべき。

  • ラブレス
    愛のない人々が生み出し、繰り返す悲劇
    ★★★★

     ラブレス(愛がない)、というタイトルは、まさにぴったり。主人公は離婚を決めた夫婦。家はすでに売りに出し、それぞれに新しい恋人もいるが、問題は12歳の息子。パパが「子供には母親が必要」、ママが「この年齢にはお父さんがいたほうが」と押し付け合うのを、息子は陰で聞いて泣く。
     話が展開していくうちに、このふたりの間には最初から愛などなく、息子は望まれずに生まれてきたとわかる。そして、この母親もまた、自分の母に愛されていないのだ。
     ここで起こる悲劇はすべて、愛のなさが生んだもの。この人たちはこれからもまた繰り返すのだと思うと、なんともやるせない。そんな状況を冷静な視点から語る、優れた作品。

  • 女は二度決断する
    現代のヘイト問題を描く、絶望的に辛いスリラー
    ★★★★★

    自らもトルコ系ドイツ人であるファティ・アキン監督は、「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」などで、ドイツに生きるトルコ系の人々を描いてきた。ネオナチによるテロを発端にするこのスリラーは、とりわけ暗く、救いようがないくらい辛い作品だ。ファティは、近年、ドイツで、ドイツ以外の血筋の人々を狙ったテロが多発している事実に想を得てこの物語を書いたという。トランプのアメリカやイギリスのEU離脱など、ナショナリズムの高まりに多くが不安を抱える今だけに、不安を新たにさせられ、絶望的な気持ちにもなった。愛する夫と息子を無意味な暴力のせいで失った主人公を、ダイアン・クルーガーが名演する。

  • ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
    個人的な危険をおかしても、報道の自由のために闘った
    ★★★★

     今最もタイムリーな映画。実際、スピルバーグは、これは2017年に公開されないならば意味がないとすら思い、速攻で作っている。1971年にワシントンポスト紙がベトナム戦争に関する最高機密文書を報道したことについての話。ニクソン政権から相当なプレッシャーを受けた彼らは、刑務所入りや同紙の滅亡といったリスクに直面した。ワシントンポスト紙がなくならなかったことはもはや周知のこと。そしてその直後、彼らはウオーターゲート事件を暴くことにもなるのだ。トランプ政権が報道の自由を奪おうとしている中、今作は非常に重要。さすがスピルバーグとあって、堅いテーマでありながらも、娯楽性あるスリラーになっている。

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