猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • ジョン・レノン 失われた週末
    ジョン・レノンに愛された女性の視点でその頃を語る
    ★★★★

    ビートルズに関するドキュメンタリーの中でも、これはユニーク。ジョン・レノンと一時期深い仲だった中国系の個人秘書メイ・パンの視点から、この恋の始まり、彼女が見たレノンとヨーコ・オノ、レノンとポール・マッカートニー、レノンと長男ジュリアン、またビートルズが正式に解散した時のことなどが、多数の写真、アーカイブ映像、アニメーションとともに語られていくのだ。そんな中では、家の中でレノンが見せたダークな側面にも触れられる。パンが涙ながらに語る真剣な恋の終わりは、とても切ない。一方でそこにはまだ腑に落ちない部分もあり、レノンから話を聞けない以上、本当のことがわかる日は来ないのだとも感じる。

  • トランスフュージョン
    よくある設定から想像するのとは良い意味で違っている
    ★★★★★

    退役軍人がそのスキルを使って悪いことに手を染めるという設定はよくあるものの、これはありがちな犯罪アクション映画というより、人間ドラマ。アクションも出てくるしそれらのシーンは緊迫感があるが、過去の決断への罪悪感、昔は仲が良かったのに今や疎遠になってしまった息子との関係やPTSDに悩む主人公をメランコリックに描く部分こそ、この映画の強み。時々時間を逆戻りさせる語り方は、何が彼を苦しめるのかを見せる上で効果的。そんな心の内を、サム・ワーシントンが、静かに、ニュアンスを持って表現する。今作で監督デビューを果たす元ラグビー選手で俳優のマット・ネイブルも、主人公の元戦友役として良い味を出している。

  • アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~
    中年女性たちを妄想に浸らせてくれる
    ★★★★★

    ごく普通の私なのにスーパースターに見初められちゃった、というのは多くの人が持つ夢。25年前には「ノッティングヒルの恋人」がヒットした。だがこの映画は一段とハードルを上げる。なにせ女性が16歳も上なのだ。一般人同士であってもあまり例がないのに、超ホットなミュージシャンの男性からグイグイ押され、プライベートジェットで世界を旅するなんて、中年女性にとっては最高の妄想物語ではないか。そこに浸るのは良いが、この映画の中年女性は美しきアン・ハサウェイであることを忘れないように。ただ、男女が逆なら、この年齢差はこの映画の主人公ほどには責められないはず。社会にあるそんな女性差別に触れているのは良い。

  • 恋するプリテンダー
    このヒットが劇場用ロマコメの復活を助ければ良いが
    ★★★★★

    グレン・パウエルとシドニー・スウィーニーという今最も勢いに乗っているふたりが組むのが、最大の見どころ。だが、シェイクスピアの「から騒ぎ」を元にしたというストーリーに新鮮さはなし。肌を露出させ、性的なジョークを入れるのが現代風ということ?せりふも陳腐で、感動を狙うロマンチックなシーンでのスウィーニーのせりふも予想通りだった。主演のふたりは魅力的で頑張っているが、できることは限られている。ただ、最近Netflixが量産しているロマコメに比べて劣るわけでもないので、星は3つ。このジャンルの劇場用映画がほぼ消滅しているだけに、このヒットが優れたロマコメ映画の製作に繋がりますようにとの祈りも込め。

  • 無名
    結末を知った上でまた見直したくなる
    ★★★★

    とにかくゴージャスな映画。カメラアングル、照明、プロダクションデザイン、衣装、俳優たち、すべて美しい。俳優たちのせりふや行動にある「間」も、独特の雰囲気を高める。その一方、アクションシーンは迫力満点。ここではスタイリッシュ感を捨て、リアルで泥臭く、血生臭いシーンが展開される。時系列に従わず、前後を行ったり来たりする、パズルのようなストーリーの語り方も効果的。最初は少しとまどうかもしれないが、次第にチェン・アー監督の意図がわかってきて、最後はなるほどと感心。結末を知った上で、見逃していたディテールを拾うためにもう一度見たくなる。ワン・イーボーとトニー・レオンは演技、魅力とも抜群。

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