オフィスのブラインド越しにスタジオ内をジロリと見回しては女優を品定めし、楽屋の壁にのぞき穴を仕込んでは女優の様子をコッソリと観察。自宅でも妻アルマ（ヘレン・ミレン）の着替えをチラチラと盗み見。さらには、『サイコ』の劇中にヒロインが殺人鬼にのぞかれるシーンを盛り込んでしまう。まるで獲物を狙っているかのような、被写体へのコワいほどの執着ぶりが傑作を生み出す秘けつ？

『サイコ』のジャネット・リー（スカーレット・ヨハンソン）をはじめ自作のヒロインとして迎えたがるのは金髪女優ばかり。

お気に入りの女優がブルネットだった場合は金髪のカツラを着用させるこだわりよう。自宅の書斎にはグレース・ケリーらブロンド女優の写真がズラリと並び、映画のブロマイドにサインを求めるファンがいれば、その中から金髪女性を選んでペンを執るほどだったとか。

名作『めまい』のヒロインに抜てきしたのに、妊娠によって出演を辞退したヴェラ・マイルズ（ジェシカ・ビール）にブチ切れ。契約の関係で『サイコ』に彼女を出演させるが、脚本に関する質問を無視するなど、何かとつらく当たる。かわいさ余って憎さ百倍とばかりに、自分をフッた女優を逆恨みする困った監督にしか見えないが、その裏には彼女をスター女優にしたかったのに果たせなかったという痛切な思いが。同情できなくもないが、やはり子どもっぽい？