ミルクマン斉藤

ミルクマン斉藤

略歴: 映画評論家。1963年京都生まれ。デザイン集団「groovisions」の、唯一デザインしないメンバー。現在、京都・東洞院蛸薬師下ルの「三三屋」でほぼ月イチ・トークライヴ「ミルクマン斉藤のすごい映画めんどくさい映画」を開催中。雑誌「テレビブロス」「ミーツ・リージョナル」「キネマ旬報」等で映画コラムを連載中。

ミルクマン斉藤 さんの映画短評

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  • アナログ
    涙の一滴も出ないけれども…。
    ★★★★★

    ‘15年の年末TVスペシャル『赤めだか』の縁か、二宮和也、ビートたけし、タカハタ秀太が組んだいわばメロドラマ。冒頭スローモーションで描かれる波に象徴されるように海というロケーションが大きな意味を持つ(糸電話でニノと波瑠が喋るシーンなど、ワイドスクリーンならでは)。しかし、それにしてもあまりに意外性のないベタすぎる展開に白けきってしまうんだよなあ。ただ、コメディ・リリーフとして秀逸な桐谷健太&浜野謙太の悪友コンビや、母親役の高橋惠子、カフェ店主リリー・フランキーらが(物語の展開される舞台が幾箇所かにかなり限定されているだけに)かなりの効果を発揮していて、楽しんでしまうことも確かである。

  • オオカミの家
    見てはいけないものを見てしまったトラウマ感。
    ★★★★★

    よくもここまで禍々しいイメージを紡ぎ続けられるものだ。コロニアというチリに実在したコミューンについて映画内で詳しく語られることもないのだが、恐怖と抑圧に満ちた精神状態をここまで不気味にしかも、ストップモーションというとてつもない作業量のかかる手法によって、しかもワンカットで描いた映画はかつて無い。とにかくメタモルフォーゼの嵐。光の移ろいだけでここまでイメージを広げられるものだろうかとも感心する。敢えて言えばスタレーヴィチやシュヴァンクマイエル、クエイ兄弟やD.リンチの最初期アニメーションを思わせる。併映の『骨』もまた、これにも増して禍々しい作品。秘儀を見てしまったような忌ま忌ましさ。

  • キリング・オブ・ケネス・チェンバレン
    切実さはびんびん伝わってくるものの。
    ★★★★★

    もともと舞台劇俳優のM.フリーマンが製作を買って出ただけあり、限定空間的構造はかなり舞台劇的で、じりじりと主人公vs官憲の焦燥感を高めていく。だがPTSD傾向の元海兵隊老人(フランキー・フェイソンは名演といえる)を寄ってたかって警察官(ほぼ白人)が苛めにかかる展開には、かなりイーストウッド的怒りを感じるとはいえ、スケール感に欠けるのは否めない。『フルートベール駅で』や『デトロイト』等々、こうした事件の果てしない頻出は米国の周知の事実だが、恐れずに書いてしまえば食傷気味なのも確かだ。実際の事件をここまで掘り詰めていながらのエピローグも、事実の後ろ盾として機能しているとはいえ蛇足に思えてならない。

  • シアター・キャンプ
    愛情に溢れたほんわかミュージカル劇。
    ★★★★★

    全編ドキュメンタリー・タッチ…つまりモキュメンタリーとして撮られた子供たち夏休み演劇合宿のドタバタ劇。でも大袈裟になりすぎもせず、いかにもありそうなリアルな筋立てなのが本作の美点だ。物語は参加者用に書かれた新作『ジョーンのままで』(ジョーンは入院してしまった創業者)の話に集約していくが、そのミュージカルを作っていく作曲やキャスティングの過程が毒味もほどほどで楽しい。学園長の後継者として名指しされた根っからのビジネスマン、トロイなど、昔なら製作ウィル・フェレルが演じてもいいような役だ。しかし造りとして目新しいところはないが(例えば『ピッチ・パーフェクト』)、ミュージカル好きなら楽しめること必至。

  • ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)
    世を去ってなお謎と矛盾に満ちた知性を追う。
    ★★★★

    JLGの全ての時代を網羅した作品は案外少ないが、これはその一本。ヌーヴェルバーグ黎明期からA.カリーナをミューズとした今でも最も愛される時期。ヴィアゼムスキと出会った『中国女』以降、毛沢東主義に傾倒していく時期。過去作を自己否定し、イデオロギーに完全にのめり込んでいく「ジガ・ヴェルトフ集団」の時期。そして『勝手に逃げろ/人生』からの受賞しまくりの華々しい時期。大作『ゴダールの映画史』へと至るヴィデオという媒体も積極的に導入し始めた時期…。その全てに渡ってM.メリル、N.バイ、J.デルピーら、その時々のミューズの現在の証言も含めながら描いていく。彼の軌跡を手っ取り早く知るには最適な良作だ。

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