猿渡 由紀

猿渡 由紀

略歴: 東京の出版社にて、月刊女性誌の映画担当編集者を務めた後、渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスターのインタビュー、撮影現場レポート、ハリウッド業界コラムなどを、日本の雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿する映画ジャーナリスト。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

猿渡 由紀 さんの映画短評

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  • 恋するプリテンダー
    このヒットが劇場用ロマコメの復活を助ければ良いが
    ★★★★★

    グレン・パウエルとシドニー・スウィーニーという今最も勢いに乗っているふたりが組むのが、最大の見どころ。だが、シェイクスピアの「から騒ぎ」を元にしたというストーリーに新鮮さはなし。肌を露出させ、性的なジョークを入れるのが現代風ということ?せりふも陳腐で、感動を狙うロマンチックなシーンでのスウィーニーのせりふも予想通りだった。主演のふたりは魅力的で頑張っているが、できることは限られている。ただ、最近Netflixが量産しているロマコメに比べて劣るわけでもないので、星は3つ。このジャンルの劇場用映画がほぼ消滅しているだけに、このヒットが優れたロマコメ映画の製作に繋がりますようにとの祈りも込め。

  • 無名
    結末を知った上でまた見直したくなる
    ★★★★

    とにかくゴージャスな映画。カメラアングル、照明、プロダクションデザイン、衣装、俳優たち、すべて美しい。俳優たちのせりふや行動にある「間」も、独特の雰囲気を高める。その一方、アクションシーンは迫力満点。ここではスタイリッシュ感を捨て、リアルで泥臭く、血生臭いシーンが展開される。時系列に従わず、前後を行ったり来たりする、パズルのようなストーリーの語り方も効果的。最初は少しとまどうかもしれないが、次第にチェン・アー監督の意図がわかってきて、最後はなるほどと感心。結末を知った上で、見逃していたディテールを拾うためにもう一度見たくなる。ワン・イーボーとトニー・レオンは演技、魅力とも抜群。

  • エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命
    最初から最後まで感情に満ちた一大悲劇
    ★★★★

    なんとも痛ましい本当の話。見終わってからもしばらくやるせなさが心に残る。ユダヤ系の家族に生まれた6歳の少年が、くだらない理由で家族から引き離されてしまい、教会のお膝元でカトリック教徒として育てられていくのだ。宗教の名のもと、権力を使って誰かのアイデンティティを奪うとは本当に残酷。面会に来た母に「家に帰りたい」と泣きつく幼いエドガルドの姿には涙し、裁判のシーンでは思わず手を握るが、本当に強烈なのは終わり近く。イタリアの歴史上重要な時代を背景に、人に焦点を当てるこの映画は、ある意味オペラ的。両親にとっては時間との戦いでもあり、緊張感もある。84歳の大ベテラン、ベロッキオの手腕に拍手。

  • システム・クラッシャー
    まさかあのトム・ハンクスの映画と同じ少女とは!
    ★★★★

    普段あまり語られない事柄に焦点を当てる、強烈な映画。9歳の少女の暴力、暴言がすごくて、「ここでまたキレるのではないか」と、ずっとハラハラしていた。そんな彼女を演じたのが、この映画の翌年に「この茫漠たる荒野で」で正反対の少女になりきったヘレナ・ツェンゲルだと後で気づいてびっくり。あの若さにしてこれだけの演技の幅を見せた彼女の今後に大きく期待。ノラ・フィングシャイト監督は、5年をかけて里親や施設で実際に働いたり、スタッフの話を聞いたりしてリサーチをしたとのこと。大人たちのキャラクターが、複雑さを持たせながらも共感できるように描かれているのも納得。あっさり問題解決させないラストも良い。

  • マリウポリの20日間
    勇気あるレポーターがとらえたみんなが見るべき映像
    ★★★★★

    今年のオスカー長編ドキュメンタリー部門の候補作は意義あるテーマを持つ傑作揃いだったが、受賞したのはこれ。そこには、勇気あるレポーターが危険な場所で足を運び、伝えなければいけないことを世界に伝えたことへの評価が大きく関係していると思われる。この映画の監督で、APのレポーターであるミスティスラフ・チェルノフがとらえた現地の一般市民の映像は、実に生々しく、心が痛むものばかり。これまで当たり前に住んでいた自分の家が突然破壊されるのは、どんなことなのか?現地の映像は稀だったため、ニュースで使われたものも多数混じっているが、この映画であらためて全体をしっかりと見られるのは貴重なこと。みんなが見るべき映画。

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