轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴: 文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「クイック・ジャパン」「DVD&動画配信でーた」「シネマスクエア」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況: またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

轟 夕起夫 さんの映画短評

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  • ゴールデンカムイ
    実写版『子連れ狼』シリーズの如く海外でも人気が出るかも
    ★★★★

    シリーズの導入部として充実した作劇。漫画の世界をいかに3次元の実写へ変換するかは、日本映画がずーっと向き合っているテーマだが、本作は一つの解を見せている。なかなかにエグい原作にも若山富三郎、勝新太郎という兄弟リスペクトがあったが、まるで往時の「勝プロ」が手がけたような、常軌を逸したエキセントリックな描写に回帰しているのである。

    事実、かつて「東宝配給」「勝プロ製作」という提携が劇画ブームと連動し、実写版『子連れ狼』シリーズ(72~74)などで気を吐いていた。不死身の杉元役、主演の山?賢人や脱獄王・白石役の矢本悠馬、アイヌの少女アシ?パ役の山田杏奈まで、そんな「勝プロ」娯楽路線の匂いがする。

  • ミツバチと私
    大人も子供も、不確かな「本当の自分」を探している
    ★★★★

    服を着る。着替える――全篇にわたって何度も行われるこの行為が、社会上の性別に違和感を抱く8歳の主人公の揺れる心象と同期してゆく。背景には2018年、舞台のバスク地方で性自認由来の痛ましい事件が起こっており、それが初の長編劇映画に挑んだソラグレン監督の機軸になっている。

    とはいえ主張強めの作風とは無縁で、主人公とその母親と祖母、さらには養蜂場を営む叔母との関係、そして「呼び名」をめぐる物語を、とろ火でじっくり煮詰めるスタンスだ。劇中、レコードから流れるのはスペインの夫婦ディオ、セルヒオとエスティバリスの1973年リリースの「Búscame」で、「私を探し見つけて」という歌詞内容も含めて効果的。

  • PERFECT DAYS
    これは、役所広司主演による『TOKYO天使の詩』か!?
    ★★★★★

    そこに描き出されてゆく、「平山という名の男が日々をシンプルに愛でる姿」にはほとんど共感を覚えない。東京の街の捉え方もファンタジー過ぎるだろう。だが、終始惹きつけられるのだ。監督ヴィム・ヴェンダースの夢想する“ランドスケープの映画”として。こんな絵空事があってもいい。

    本作はまた、どこを切っても役所広司のアイドル映画、でもある。ヴェンダースは彼を通してリスペクトする小津安二郎、並びに小津映画の代表的人物・平山を偶像幻視しているのだから。そして全篇、役所広司の特性である「クレショフ効果」が及んでおり、その視線の先に(好むと好まざるとにかかわらず)観客各々の“世界の見え方”が現出するのであった。

  • シチリア・サマー
    ウンベルト・ビンディの名曲が流れるシーンを観よ
    ★★★★

    ジョルジョとニーノ、と名付けられた青年ふたりの淡い恋。史実(=ジャッレ事件)からインスピレーションを得ているので、結末はすでに多くに知られている。だが、脚本と初監督を手がけたジュゼッペ・フィオレッロは臆さずに彼らの生の軌跡と、取り巻いていた社会の不寛容を独自に再現し、われらに差し出す(ラミロ・シビータの撮影が素晴らしい!)。

    高揚したジャンニが部屋で母親の手を取り、突然踊りだす印象的な場面で流れるのは、60年代イタリアを代表する歌手、そしてゲイであったことで不当に傷つけられたウンベルト・ビンディの名曲「IL MIO MONDO」(邦題「私の世界」)。これが(その歌詞も相まって)とても切ない。

  • 首
    “世界のキタノ”という冠を外して、気楽に観てみよう!
    ★★★★

    様々なエスタブリッシュメントに対して“LOVE & HATE”の感情を抱えつつ、その本質を探ってゆく北野武の作法。今回は先行する戦国時代が舞台の映画やドラマ、“本能寺の変”を描いた多くのスタンダードな作品スタイルに物申している。

    一見『アウトレイジ』型の群雄割拠の権力闘争劇だが、『みんな~やってるか!』(95)や『龍三と七人の子分たち』(15)で試されていたコントの羅列が盛り込まれ、時代劇へのシニカルな視点も散見する。つまりは暴力や死が、笑いのための“フリ”として機能しているのだ。豪勢なキャストの中では下克上の世を転がってゆく中村獅童が一際いい。たけし扮する同じ百姓出の秀吉と比すべき役柄に。

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