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『M:I-2』公開直前!大特集

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トム・クルーズ

   1963年7月3日ニューヨーク州シラキューズ生まれ。12歳のときに両親が離婚し、姉妹と共に母親に引き取られたが、生活は苦しかった。高校生の頃はレスリングの選手だったが、ケガのため断念。その後、俳優を志し、ニューヨークで演技の勉強をする。映画デビューは『エンドレス・ラブ』(81)で、青春映画をステップにし、86年の『トップガン』で大ブレイクする。その後も、『7月4日に生まれて』『インタビュー・ウィズ・バンパイア』などで確実に地位 を築く。96年には自ら製作を務めた『ミッション:インポッシブル』が大ヒットを記録。妻のニコール・キッドマンと主演した『アイズ ワイド シャット』(98)が話題になった。




 8年前のトム・クルーズが与えた衝撃的な「感動」

 新村千穂 Chiho Niimura



「人として素晴らしくありたい。それが僕 の、何よりの目標だね。俳優、スターとして の成功以前に、そんな些細なことが僕にとってはとてもとても重要で、大切な目標な んだ」

 もう8年も前になる。『遥かなる大地へ』公開キャンペーンで、初来日(92年6月)したトム・クルーズが、インタヴューの最後に残した言葉だ。あまりに素直で、シンプル過ぎるコメントだったからだろうか、ストレイトに胸の内に入り込んできたそれは、これだけの時が過ぎ去った今でも、鮮明な記憶をもって蘇り、その時、確かに抱いたはずの、ある種衝撃的な「感動」をも呼び起こされる……。

 当時、彼はまだ29歳だった。『トップガン』(86年)以降に確立した、トップスターの座を保持していたものの、前作『デイズ・オブ・サンダー』(90年)の興業的大失敗(映画会社・パラマウント映画の重役たちが解雇されるほどの大失敗)ばかりか、私生活でも離婚(女優ミミ・ロジャースと)、そして再婚(現夫人の女優ニコール・キッドマン)劇をわずか1年間という時間の中で、フルスピードで展開させ、もっとも慌ただしくも不安定極まりない時期のことだった気がする。「再生」や「復活」という言葉では、少々語弊もあるが、『遥かなる大地へ』は、そんな仕事と私生活を、彼にとっては一掃させ「新たなる始まり」を意味する、それこそ彼にとっては「何より重要で大切」な作品だったはずなのだ。だからこそこの時、今思えば、最初で最後とも取れる、大々的なキャンペーン活動を展開したのだ……と解釈すれば、それ以降の「舞台挨拶のみ」や「10分程度の取材及び記者会見のみ」といった、取材する側にとっては、ちっとも面 白くもなく、釈然としない来日模様にも納得がいくというものだ。多忙という理由などでは納得はいかない。事実、『遥かなる大地へ』の取材の際にも、彼は15分も遅れて、走りながらインタヴュー部屋へやって来たのだ。
 
 
「部屋を出ようと思ったら、仕事の電話がかかってきちゃったんだ。本当にごめんなさい。緊急の要件とはいえ、キミの時間を無駄 にさせてしまった。お詫びに、なんでも聞いてよ。嘘偽りなく、誰に怒られようと(横に座る強力なパブリシスト女史を横目で見ながら)、特別 に僕の知ってる全てを話すから。本当にごめんなさい。ごめんなさい」  遅れた者が「ごめんなさい」と平謝りするのは、人としてはごく普通 の常識範囲内の行為だが、スターに限らず非常識行為甚だしい環境に身を置く私には、こういった彼の、ありふれているはずの、些細な行為から、すでに衝撃的「感動」を覚えたのだった……。

 

 彼から全てを聞ける時間は30分。映画『遥かなる大地へ』については若干触れつつも、彼の素顔見たさにプライヴェートな質問ばかり、ここぞとばかりにぶつけてみた。それでも、彼は初めの言葉通 り、嫌な顔ひとつせず、笑ってやり過ごす。かといって茶化すわけでなく「紳士」然とした態度で、言葉のひとつひとつを慎重に選びながら、こちらが納得いくまで話し続ける。例えスターの面 を被り、上等な芝居をされていたとしても、それならそれで、「騙されました。気持ちよく」とキッパリ言えるほど、余裕と自信ある完璧な「紳士的振る舞い」を、そこに差し出してきた。

  「僕が自信たっぷりで、余裕ある人に見えるの(笑)? 確かに、僕はあらゆる人から、もっとも<成功>した男、俳優と見られるんだろうね。でも、どんなに<成功>したところで、毎日、毎日大きな気持ちの揺れ<不安>はあるんだ。尽きることなくね……。金銭的、精神的、そしてアーティスティックな部分のことで、これでもしょっちゅう落ち込んでるんだよ。

  ただ、そんな風に落ち込んでも、僕の場合、麻薬とか間違った方向に進まずに済んでいるのは、根っから体を動かすこと<スポーツ>が好きというのもあってか、とにかく<動き>始めちゃうんだよ。内に篭ったところで、落ち込みから開放されるはずもないって、僕は思ってるから。とりあえず<動く>ことで、何かが見つかると信じてるし、今までも、そうして様々なチャンスを見つけられてきたしね」

   あまりに「健全」過ぎる答えだ。彼がいまだかつて「優等生スター」と言われる所以は、こういった、学校の道徳の時間に善良ぶった先生が説くような、健康的な内容の話にあるのだ。決して自慢ではないが、この時私は、この嘘臭い話に、感心の素振りなど見せなかった。尋常とは思えぬ 欲望渦巻くハリウッドで、トップの座に就いた者が、これほどの健全さと純粋な思いを信じ、生きてこられるはずもないのだ。一般 的と言われる社会に生きる者とて、困難極まりないことなのに……。

  「ハリウッドというより、俳優として生きて行く中で、<常識的に生きる>とか、<精神的に健全である><純粋である>というのは、本当に困難なことなんだよ。みんな、そういう物をいつしか失っていってしまう。僕だって時に見失いそうになるよ。こんなにも複雑な人間関係の上に成り立っている世界の中にいるとね。ただ、僕は俳優として<成功>するより何より、<ひとりの人>として生きるための信念を持っていたし、それを覆してしてまで<成功>なんて欲しくなかった。これは、本心だ。自分が<ベストと思える状態>で、<ベストな人と>仕事をする。それが、こうして結果 として<成功>に結びついんだよ。だから、僕はたとえ<嘘臭い成功話>と言われようと構わないけど、この経験してきた事実を面 白おかしく、ハリウッド的に作り直す気は全くないので、ごめんね(笑)」

 またしても、「騙されました。気持ち良く」状態に陥るはめになった。裏をかいて突っ込んだ自分の歪んだ心が恥ずかしくもあった。 しかし、どう考えても、こんな彼の「健全」さは「成功」すればするほど、疎ましさにも似た反感を、多くの人々が抱きかねない。いい例が、ここ2~3年の世界中のタブロイド紙。どうにか彼の「歪んだ側面 」を見出そうと、でっち上げの悪質な記事が氾濫した。

  「僕の<成功>で、知る由もない人々から怨まれ、妬まれ、嫌われ、悪口を言われるのは悲しいけれど、仕方ないことというか<成功>の代償と思うしかないと思っている。そういうことって、僕にはコントロールもできないし。だからね、これはさっき言った<ひとりの人>として生きるための信念ってことにも通 じてくるんだけど、僕は自分のために他人を犠牲にしないと心に決めているんだ。他人を蔑んだり、辱めたり、傷を与えるようなことは絶対したくないと思っている。僕を理由もなく傷つけた人にさえ、自分からは同じ様な真似はしたくない。もっと言えば、そんな人達と自分を同じレヴェルに持っていきたくはないからね」

 この8年前の単独インタヴューは、本当に貴重な物だったと、今改めて感じている。その後の彼のインタヴュー記事を収集してみたところで、そこにはキャンペーン作品の解説めいたコメントと、妻ニコールと養子(2人)との生活がいかに充実したものかを語るに終わっているのだ。8年前を境に、彼の「成功」は止まることを知らないのは周知の事実。あの「新たなる始まり」の時だったからこそ、「俳優、スターとしてのトム・クルーズ」として、もしくは「ひとりの人、トム・クルーズ」として、語るべく物もあり、語るべく時だったのだろうと思うのだ。「騙されました。気持ち良く」でいい。というより、この8年間、その思いが裏切られなかったように、「人格者たる人物になろうとしている人こそ、成功に導かれる」のだと、いつ迄もトム・クルーズには見せ続けてもらいたいし、そう信じさせてほしい。衝撃的な「感動」の記憶を息づかせたまま……。

『トップガン』
TOP GUN

110分
DVD:4,700円(税抜 )
CICビクタービデオ
監督:トニー・スコット
出演:メグ・ライアン
ヴァル・キリマー

ここから直接DVD/ビデオが購入できま



『デイズ・オブ・サンダー』
DAYS OF THUNDER
ビデオ:3,690円(税抜 )

DVD:4,700円(税抜 )
107分
CICビクタービデオ
監督:トニー・スコット
出演:ジェリー・ブラッカイマー
ドン・シンプソン

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