『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』ジェシカ・チャステイン 単独インタビュー

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Google +1
  • ツイート
  • シェア
『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』ジェシカ・チャステイン 単独インタビュー

ステレオタイプな女性像を打ち破る!

取材・文:編集部・市川遥 写真:奥野和彦、INSTARimages/アフロ

第2次世界大戦下のポーランドでナチスに迫害されるユダヤ人300人を動物園にかくまい、その命を救った女性の実話を基にした感動作。柔らかでフェミニンでありながら、並外れた勇気と強さを見せたアントニーナを見事に演じたジェシカ・チャステインが来日し、大好きだという動物たちとの共演から、女性が少ないことが問題になっている映画界での自身の取り組みまで語った。

[PR]

役づくりでは探偵になる

ジェシカ・チャステイン

Q:どこから役づくりを始めたのですか?

まず、アントニーナの日記を基にした本を読むことから始めて、ポーランドのワルシャワ動物園へ行ったの。彼女の家はまだそこにあるのよ。そしてアントニーナの娘であるテレサに会い、彼女の娘として育つのはどんな感じだったかを聞いたの。アウシュヴィッツへも行ったわ。今まで強制収容所に行ったことはなかったから、行って体感しておく必要があると感じて。そして動物たちに人生を捧げている人たちと時間を過ごし、アクセントの習得にも取り組んだ。アントニーナはロシア生まれで18歳のときにポーランドに移って来たから、彼女の声を見つけることはとても重要だった。リサーチするときのわたしは探偵で、全ての問題や謎を解こうとするの!

Q:優しさの中で強さを表現しているのが素晴らしかったです。

彼女は、ヒーローというのは必ずしも剣を持ち、戦う者じゃないということを示す例よ。愛と思いやりの心を持って人々の命を救ったヒーロー。歴史の授業では、こんな美しくて勇敢なことをした女性がいたなんて習わなかった。今のこの時代、彼女のそうした教えを伝えるべきだと思ったの。

動物たちとの触れ合いは全てリアル!

ジェシカ・チャステイン

Q:アントニーナはゾウ、ライオン、バッファローをはじめとしたたくさんの動物たちと触れ合いますが、彼らは実際にセットにいたのですか?

もちろん! 動物たちはみんな本物よ。動物たちとのシーンも全てわたしが演じたの。彼らは決して強制されたりしなかったから、わたしたちはたくさんの美しいシーンを撮影することができたのだと思う。彼らが中心で、わたしはただ周りで演じていたという感じね。

Q:夜の動物園でゾウに鼻でつかまれるシーンも?

ええ! 彼女が怒ったら、鼻でわたしをつかんで持ち上げることもできたし、とても危険なものになっていたかもしれない。でも、これ以上ないほど安全だと感じられた。こうしたシーンを作るために、撮影前にたくさんの時間を動物たちと過ごしたの。このシーンの場合は、彼女(ゾウ)はリンゴが好きなことがわかったから、セットのいろんなところに隠してみたら、撮影が始まると彼女はリンゴを捜して鼻を動かし始めて……。映画では彼女がストレスを抱えているように見えると思うけど、実際はゲームをしていただけなのよ!

女性の多い撮影現場を作る

ジェシカ・チャステイン

Q:ニキ・カーロ監督との仕事はどうでしたか?

ニキとの仕事は大好き。彼女は素晴らしいフィルムメイカーなのはもちろんのこと、とても地に足が着いていて、偉大なリーダー。それでいて母性が強いの! わたしは「強さ」と「母性」が同時に存在しているのを見るのが好き。時に女性はか弱い存在と見られることがあるけど、それは間違っていると思う。例えば、最も危険な動物って母親でしょ? 母グマとか母ライオンとか。彼女たちは家族を守るためなら何だってやる。わたしはそれをニキの中に見たわ。すごい強さよ。この映画を観たとき、母性と女性たちを祝福していると感じられることを、とても気に入っている。わたしたちの社会のとてもパワフルで強い部分を見せられたとね。

Q:ここまで女性が多い撮影現場(全体の20%程度)は初めてだったそうですね?

そうなの。素晴らしい環境だった。女性たちがとてもハッピーだったというだけでなく、男性たちもそうだったのよ(笑)。ああしたバランスがあると、誰も自分がマイノリティーだと感じないし、小さな存在だと感じない。自分がその作品の一員だと感じることはとても重要。全ての撮影現場に男性、女性のどちらのエネルギーもあるべきだし、どちらかが大多数を占めるような環境は健康的とはいえないわ。

Q:今回、映画のプロデュースもされています。

誰を雇うかといった意思決定により参加することができるから、映画をプロデュースするのは好き。わたしにとって撮影現場に包括性があるということはとても重要で、全てのジェンダー、性的指向、人種……ある層だけでなく、全ての人がストーリーテリングの責務を負うようにしたい。わたしは映画に、わたしが実際に生きている世界を反映させたいと思っているの。それは、現場によりたくさんの視点を持ち込むことで実現できる。だから、プロデューサーの利点は、そうした環境を作ることができることね。

Q:プロデュースは今後も続けていきたいですか?

ええ! わたしはフレックル・フィルムズという制作会社を持っているんだけど、目標は映画業界で過小評価されている声に光を当てることなの。

映画が描いてこなかった“本当の女性”を演じる

ジェシカ・チャステイン

Q:ジェシカさんは意識的にステレオタイプ的な女性の役柄を避けているように感じます。そして成功し、素晴らしいキャリアを築いています。

まあ、ありがとう! 時に簡単でないこともあるわ。女性の描き方で批判されたりもする。『ゼロ・ダーク・サーティ』『女神の見えざる手』だと、男性だけでなくたくさんの女性からも「なぜ彼女には夫や恋人がいないの?」と聞かれた。男性主人公の映画だと、こうしたことが問題になるのってとても稀じゃない? それで認識したの。“女性とはどういうものか”というステレオタイプがわたしたちの社会にどれだけ根深くあるかということを。そうしたことに向き合うのはチャレンジではあるけど、ためになる経験よ。

わたしにとって重要なのは、映画というメディアでわたしたちが今まで見たことがなかったような、仕事にフォーカスした、男性によってではなく自分自身によって自分を定義する女性のイメージを見せ続けること。“女性であることとは何か”というメディアの見方を変えるためなら、何だってやる。だって女性であることって、たくさんの側面があるものだから。

Q:事前に計画を立て、キャリアを築いてきたのですか?

うーん、この1年でこれをして、5年後にはここにいるべきで……というような計画はしたことがないの。禅みたいにその瞬間に集中するようにしている。なぜなら、先を見ても、それはわたしにはコントロールすることができなくて、不安や心配事を増やすだけだから。わたしはそれよりも、今現在、この瞬間を生きる方に関心がある。そうして初めて、本当に人生を生きているといえるのだと思う。もし他のことを考えていたら、今を生きることはできないわ。

Q:セクハラ問題についても積極的に発信されていますね。

女性たちが話し始めたとき、彼女たちが安全だと思えるようにサポートするためにどんなことでもしようと思った。わたしにとっては、すぐにツイートしたりして、サポートを表明するのはとても自然なことだったの。誰もがだけど、特に女性は一つになるととても強い。だから女性たちにはわたしがサポートしているということを知ってほしかったし、誰かが暴力を受けていたり権利を侵害されていたりしたら、闘うわ。エネルギーは伝染していくとも思うしね。だからわたしがこのことについて話すと、もしかしたら日本にいる誰かが名乗り出て、自分の物語を語るのに安全だと思ってくれるかもしれない。そうすると、それがまた広がっていくかもしれないじゃない?


ジェシカ・チャステイン

強い女性役で知られるジェシカだが、本人はどちらかというと本作のアントニーナに近い柔らかでキュートな雰囲気。動物たちとの共演を愛情たっぷりに楽しげに明かしたかと思えば、映画界の問題について真剣な目をして語り、彼女自身も「母性」と「強さ」を同時に体現しているように感じた。

(C) 2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』は12月15日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにて公開

最新インタビュー

インタビュー一覧 »

[PR]