『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』木村文乃 単独インタビュー

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『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』木村文乃 単独インタビュー

「カニ語って何?」から始まった初挑戦

取材・文:坂田正樹 写真:上野裕二

アニメーション映画『メアリと魔女の花』(2017)のスタジオポノックによる新プロジェクト「ポノック短編劇場」の第1弾『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』で、女優の木村文乃がアニメーション映画声優初挑戦を果たした。3本の短編で構成される本作の中で木村は、『メアリ~』を手掛けた米林宏昌監督の冒険ファンタジー『カニーニとカニーノ』に登場するサワガニ兄弟の兄・カニーニの声を担当。「悩みながら声を模索した」という木村が、謎の“カニ語”を駆使した米林監督の世界観、そして兄弟のあり方について語った。

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18分で大冒険ができる驚き

木村文乃

Q:アニメ映画の声優初挑戦で、しかもサワガニの少年役。米林監督からオファーされたとき、どんなお気持ちでしたか?

まず、憧れの米林監督とご一緒させていただけることが、何よりもうれしかったです。少年役に関しては、もともと自分の声をあまり女性らしいと認識していませんでしたし、弟のカニーノ役が、「明日、ママがいない」(2014・日本テレビ系ドラマ)で共演したことのある鈴木梨央さんと聞いていたので、何とか乗り越えられるのではないかと。

Q:濁流にのみ込まれた父親を捜しにいく兄弟の冒険物語ですが、台本を読んだ感想は?

たった18分の尺の中で「こんな大冒険ができるんだ!」と驚きました。普通の映画やドラマだったら、おそらく人物紹介などで終わっている時間ですが、そこを凝縮して、兄弟の冒険と成長を描けるところは、やはりアニメ特有のものだと思いました。あとは、米林監督にとって男の子を主人公にした作品は初とのことで、その新たな挑戦にわたしも参加できることが光栄でしたし、すごくワクワクしました。

映像に見とれてセリフを忘れる

木村文乃

Q:映像がとても美しく、迫力がありました。

もう言葉を失うというか、ただひたすら感動でした。本当はセリフを言わなきゃいけないのに、画に見とれて忘れてしまうくらい美しくて(笑)。「今、わたしは、自分の好きな世界にいるんだ」と思わせてくれる作品に携われて、とても幸せな気持ちになりました。

Q:特に印象に残っているシーンは?

とにかく動物が印象的で。魚だったり、鳥だったり、たぬきだったり、カニーニたちを脅かす存在としていろいろな生き物が出てくるのですが、どこかニクめないんですよね。中でもグロテスクに描かれた巨大魚は、逆にかわいかったりして(笑)。最近は、川に行って魚を見ることも少なくなってきているので、その感覚を呼び起こしてくれるというか、生き物は“かわいい”ということを再認識させてくれる映像だと思いました。

“カニ語”は言葉ではなく感情表現

木村文乃

Q:アニメ映画の声優は、やはり難しかったですか?

初めてというのもあるのですが、何より米林監督をリスペクトする気持ちが強かったので、「それだ! その言い方がほしかった」と思っていただけるような声を作ろうと、とにかく必死でした。わたしが発する声で映像の雰囲気や表情が決まってしまうところもあるので、「監督が描きたい表情とこの声は合っていたんだろうか?」と常に悩み、模索していました。「やりきった!」というよりも「大丈夫かな……」と、どこかムズムズした感じがありましたね。

Q:米林監督と意見を交わすことは?

クランクインする前に一通り説明してくださったのですが、「こんな物語にしたいんです」とおっしゃる姿は、義務でも責任でもなく、「いいものを作りたい」という純粋な心であふれていました。ただ、実作業に入ると、とってもシャイな米林監督に代わって、ご本人の意思をよりかみ砕いてわかりやすく伝えてくださるスタッフさんがいらっしゃったので、その方を介してコミュニケーションを取り、作り上げていきました。

Q:ところで、セリフは日本語ではなく、“カニ語”と聞いていますが

そうなんです。米林監督から「全編、カニ語で行きますから」と言われたときは「え? カニ語って何?」と、さすがに戸惑いました(笑)。セリフというよりも、感情を表現する言葉なんですよね。とにかく前例がないので、スタッフみんなで、「カニ界で喜びを表現する言葉って、どんな感じなのかな?」とか、いろいろアイデアを出し合いながら作り上げていきました。

Q:例えばどんな感じですか? 一言いただけるとイメージしやすいのですが。

うーん、そうですね……例えば、「わぁ、カニニ~!」みたいな感じでしょうか(笑)。米林監督の画はすごく表情が豊かなので、説明するような言葉は必要ないんだなと思いました。「おかえり」「ただいま」とか、わかりやすい言葉を使っていなくても、最小限の表現で伝わるんだなと。そういった意味では、小さいお子さんから、お年寄りの方まで、幅広くご覧いただける作品になったと思います。

兄弟のカタチは一つじゃない

木村文乃

Q:本作では兄弟の絆や葛藤が描かれていました。木村さんは弟さんがいらっしゃるということで、兄カニーニの気持ちに共感する部分はありましたか?

あまりそういう人間が作り上げた感覚は、必要ないかもしれないですね。先に生まれたのはカニーニですが、お兄ちゃんと言っても先頭を歩けるような責任感のあるタイプではないのかなと思います。弟カニーノの無邪気さは確かに年下っぽいけれど、兄の後ろ姿を見て「あ、これじゃダメだ、自分が行かなきゃ」と覚悟を決めて一歩踏み出せる勇気があったりする。兄弟のカタチにもいろいろあって、それぞれだと思います。

Q:確かに世間一般の兄のイメージ、弟のイメージって何となくありますよね。

例えば、長女はしっかり者のイメージがありますが、逆に長女だから甘やかされて自由に育つ人もいて、そのぶん、反面教師で弟がしっかりする場合もある。実はわたしのところがそのパターンなんです。母親が長女で、「お姉ちゃんだから」と何でも我慢させられて育ってきたから、「自分の娘にはそうしたくない」という思いがあったようで、この通り、自由奔放に育ちました(笑)。ですから、一概には言えませんが、カニーニとカニーノも、性格が真逆だっただけなのではないかと。「兄だから」「弟だから」というのは、その人の性格を決めつけてしまうようで、わたしはあまり好きではないんです。適材適所ではないですが、自分で自分のお尻を叩いて頑張るのか、誰かに背中を押してもらって頑張るのか、その子なりのステージがあって、その子なりに成長することが大事なのではないかと思います。

Q:なるほど、これは兄弟というよりも、二つのキャラクターとして捉えていると。

そうですね。怖いと思っても恥じなくていいんだ、どちらかが泣いていたらお互いに励ませばいいんだ、兄弟関係なく、一緒に力を合わせて頑張ろう! というような、そんな気持ちになっていただけたらいいですね。

Q:ちなみに、木村姉弟が映画のような状況に陥ったら?

どうですかね? 全く逆かもしれないですね。弟がカニーニで、わたしがカニーノ(笑)。性格的にはそんな感じですが、ただ我が家は、「働かざる者食うべからず」ではないですが、「どうしよう?」の前に「今、やるべきことを考えなさい」というふうに育てられたので、不慮の事故に遭遇したとしても泣くのではなく、まず人を呼ぶなど行動に移すことに頭が行くと思います。そういった教育が、いざというときに力を発揮するような気がします(笑)。


木村文乃

発する言葉は“カニ語”と擬音のみ。セリフは決して多くはないけれど、米林監督が描き出す表情豊かなキャラクターに、渾身の思いを込めて命を吹き込んだ木村。17歳という年の差を感じさせない鈴木梨央とのコンビネーションは、予告編の「トト!」という叫びを聞くだけで、その絶妙さが感じ取れる。言葉は少なくても愛があれば通じ合える。それぞれの個性をつなぎ合わせれば、どんな困難も乗り越えられる。そういった木村ならではの視点と感性が、カニーニというキャラクターになって躍動する。

(C) 2018 STUDIO PONOC

映画『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』は8月24日より全国公開

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