見どころ:未来から過去へと送り込まれたウルヴァリンや、超人的パワーを持つX-MENのメンバーが、二つの時代を舞台に地球の危機を救うべく戦いを繰り広げるSFアクション。ブライアン・シンガーが『X-MEN2』以来の監督として復活し、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンをはじめ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ハル・ベリーなど豪華俳優陣が競演。プロフェッサーXと宿敵マグニートーの共闘、過去へ向かうウルヴァリン、X-MENの集結など、過去と未来で複雑に絡み合うストーリーと壮絶なアクションに期待が高まる。
あらすじ:2023年、バイオメカニカルロボットのセンチネルの攻撃により、X-MENと地球は危機的状況に陥る。プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)は宿敵マグニートー(イアン・マッケラン)と共闘し、1973年にウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)の魂を送る。しかし、1973年の地球でセンチネル・プログラムの開発を阻止しようとする間も、2023年では地球滅亡の危機が迫っており……。
監督が1、2作目のブライアン・シンガーに戻ることでヨギったイヤな予感は的中! どこか生真面目で、ヲタク(アメコミ)愛に欠けた『アメイジング・スパイダーマン』にも似たガッカリは否めない。かなり面白くなる時代設定や展開を生かせないあたり、「これならブレット・ラトナーに撮らせた方が…」と思ってしまうほどだ。
ただ、監督がニコラス・ホルトからクイックシルバー役のエヴァン・ピータースに推し変したのが丸わかりで、彼の登場シーンだけが力が入っているのは笑える。また、70`sコスで登場するミスティークの姿は一瞬、『アメリカン・ハッスル』延長戦かと思わせるが、『アベンジャーズ』と比べちゃアカンです。
派手なアクションや特撮に目を奪われる人気シリーズだが、マカヴォイら演技派役者の投入でさらにレベルUP。人間に疎まれるミュータントの苦悩や存在意義を彼らが自問自答するシーンはそれこそシェイクスピアものの舞台を見ているような気になる。自虐にまみれたチャールズの心に渦巻く悲しみ、恐ろしい未来を知っても泰然自若なエリック、そして怒りとモラルの狭間で揺れるレイヴン。彼らの複雑な心理演技を見るだけでも価値アリ! 今回はタイムトラベルが絡む展開で、再現された70年代カルチャーがちょっとした笑いを誘う。1つ気になったのはミュータント撲滅兵器を開発する博士自身もマイノリティなこと。にじむ皮肉さは監督の狙い?
命題は、滅亡の危機に瀕した暗澹たる未来を変えよ。鍵を握るのは、1973年のミスティークの衝動。立ちはだかるのは、プロフェッサーXとマグニートーの若気の至り。掟破りの設定を用いながらも、茫洋としてきた『X-MEN』&『ウルヴァリン』クロニクルを整理&リセットする脚本の志には、膝を乗り出す。しかし、時空を旅するウルヴァリンは精彩を欠き、歴史の岐路を前にしても、シリーズ監督復帰したブライアン・シンガーの興味の矛先は、どうやらクイックシルバーをコメディリリーフ的に活かすこと。快作『~ファースト・ジェネレーション』の監督マシュー・ヴォーン再登板待望論が沸き起こる上で、本作の存在は重要だ。
特に必見なのは、70年代のマグニートとクイックシルバー。この2者には監督が依怙贔屓したかのようなクールなシーンあり。若きプロフェッサーXの見せ場の方向性は、マグニートとは真逆。その対比も巧い。
もともとブライアン・シンガー監督は、スーパーヒーローとは何かという論点には興味がない。X-MENを、特殊であるゆえに差別される存在として描くのは今回も同じ。その分、"各ミュータントの超能力の見せ場"に特化して描く。
さらに今回は、ヒーロー映画である以前にサスペンス映画。現在と70年代、2つの時代で同時進行するタイムリミット付きのサスペンスを堪能させてくれる。
今までの『X-MEN』『ウルヴァリン』シリーズすべての続編という欲張りな構成。でも監督がB.シンガーに戻ったので、やたら重厚(でやや鈍重)な彼のスタイルに逆戻りしてしまった。マシュー・ヴォーンが『~ファースト・ジェネレーション』(個人的にはシリーズ断トツの傑作)で試みたような青春映画的部分や、現実の事件を織りこんだ伝奇的要素などにはあまり興味がないのだろう、今回も’73年ベトナム和平パリ協定やJFK暗殺(!)といった大イヴェントが用意されているのにちっとも物語と関わらないのが勿体ない。それにタイムトラベルものの禁じ手を平然と繰り出すのにはのけぞった。それやっちゃえばもう何でもアリやん!
ブログなどをご利用の方は以下のURLをトラックバックURLとして指定してください。