見どころ:『アース』などを製作したBBC EARTHが、水をテーマに大自然を特殊なカメラで撮影したドキュメンタリー。573日の撮影期間を要し、謎めいた森、燃え盛る地下世界、異国の砂、灼熱の平原、魅惑の海中都市、凍てつく山脈、荒れ狂う激流の七つのカテゴリーの自然で構成。『ウォーキング with ダイナソー』のニール・ナイチンゲイルと共にパトリック・モスが共同でメガホンを取る。ジンバブエ共和国のビクトリアの滝の縁からの眼下に落ちていく水、数千羽のフラミンゴの色が変化する過程など、迫力あるビジュアルでいまだ見たことのない大自然が眼前に広がる。
あらすじ:多くの人々が雨に濡れないように身を潜める中、雨は自然の神秘と奇跡の象徴だと愉悦を覚える少女。そこへ地球の旅への案内人が出現。世界最大の落差と称されるジンバブエの滝、大群のフラミンゴの色が瞬く間に変化する様子など、七つの大自然の王国を最新鋭のカメラが捉える。
大画面、デジタルのクリアな細部、3Dとなると、映像に没入せずにはいられない。
まず、ライド感。雲の上から密林の樹木の根元に急降下。海中から砂漠に急移動。情景から情景への移動が繋がって描かれるので、地球上のあらゆる場所を自在に移動する何かに乗っているようなライド感が体感できる。
そして、3Dの奥行き感。珊瑚礁を泳ぐ多様な生物たちの、手前から奥までの距離感のバリエーションの豊かさ。アフリカ高地の満天の星も、それぞれの地球からの距離の差異まで感じとれるかのように見えてくる。自分は今、いったい何の視点になっているのか。ふとそんな疑問が湧く瞬間がある。
アフリカ大陸の大自然を4K解像度の3D映像で臨場感たっぷりに味わえる…というのが売りだが、確かに奥行きのある立体画面は十分な迫力がある。特に、ヴィクトリアの滝をカメラが滑り落ちていくシーンや、色とりどりの魚が舞い泳ぐサンゴ礁の水中撮影などは、3Dならではの見せ場だ。
ただ、その一方で1時間半の尺にあれこれと詰め込み過ぎたせいでダイジェスト版のような印象は否めないし、盛り込まれたネタもナショジオのドキュメンタリー番組で見慣れたものばかり。新たな発見や驚きはほとんどない。
あくまでも、ネイチャー・ドキュメンタリーを普段あまり見ないライト層向け。3Dという付加価値がなければ評価も厳しい。
どうしてここまで「観たことのある映像」しか撮れないのか。掃いて捨てるほどある同種のドキュメンタリは紋切型の表現に満ち満ちているが、この映画はそんな絶対公約数的自然映像の集合体でしかない。ちょいとばかし昂奮するのが水飲み中のヌーを襲うナイルワニとか(観たことはあるが)、突然の豪雨に見舞われ呆然となるライオンのショットって……。雰囲気だけで繋いだような映像をさらに苛立たせるのがほとんど内容のないナレーション。でもエンドクレジットでオリジナル版ナレーターの名を見て驚いた。イドリス・エルバ。いかに中身がなくてもペントコスト司令官の声なら納得できるかも知れない、滝クリじゃ無理なものでも。
※数量や販売期間が限定されていたり、劇場によっては取扱が無い場合があります。
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