見どころ:東日本大震災翌日から800日にわたり福島第一原子力発電所事故の被災者たちに密着し、その苦悩を見つめたドキュメンタリー。放射能汚染により避難を余儀なくされた飯舘村の住民を中心に、事故直後の様子や廃業の決断など、原発事故に翻弄(ほんろう)される人々の生活を映し出す。故郷を奪われ各地に離散して生活の再建を模索する中、やり場のない怒りを訴える酪農家の姿に胸を締め付けられる。
あらすじ:東日本大震災による福島第一原子力発電所事故から2週間後、現地を調査していた京都大学の今中哲二助教は飯舘村が放射能で汚染されていることを知り村に伝える。しかし、住民たちは事故の実態が不明のまま汚染地域に取り残され、農産物の出荷停止対応に追われていた。やがて、飯舘村は計画的避難区域に指定され住民全員の退去が決定し……。
ドキュメンタリーは被写体以上に、実は撮り手の人間性を映し出してしまう。本作の監督2人は、福島第一原発事故後いち早く飯舘村に入り酪農家を追った。時に彼らと酒を酌み交わし、時に政府の理不尽な対応に涙する。ジャーナリストとしてはいささか客観性に欠けているかもしれない。だが被災者にとって必要だったのは、2人のように話を聞いてくれる存在だったのではないか? ゆえに人々はカメラの前で本音をさらし、特別に撮影を許可した場面もある。こんなに被写体との距離が近い震災ドキュメンタリーは類がないだろう。
上映時間は圧巻の3時間45分。飯館の人々の3年間を思えば、短い。