見どころ:夜になると博物館の展示物が動き出す『ナイト ミュージアム』シリーズ最終章。展示物に命を吹き込むエジプト王の石板の魔力が消えかかる危機を回避すべく、アメリカ自然史博物館からロンドンの大英博物館へ乗り込んだ夜警のラリーと仲間たちが大騒動を繰り広げる。主演のベン・スティラー、ロビン・ウィリアムズ、オーウェン・ウィルソンらおなじみの顔ぶれに加え、オスカー俳優のベン・キングズレー、テレビドラマ「ダウントン・アビー」シリーズなどのダン・スティーヴンスらが新たに登場。
あらすじ:アメリカ自然史博物館の展示物に命を吹き込むエジプトの石板(タブレット)の魔力が消えかけていた。最悪の事態を回避すべく夜警のラリー(ベン・スティラー)と仲間たちは、石板の謎を解く鍵を求めロンドンの大英博物館へ向かう。一行はエッシャーのだまし絵に迷い込み、恐竜の化石や九つの頭を持つ大蛇に襲われ、ロンドン市街でチェイスを繰り広げるはめに……。
シリーズ第3弾はロンドンが舞台。お馴染みのメンツに加えて今度は大英博物館の展示物たちが動き出し、またもや大騒動が展開することとなる。
基本路線は前2作と全く変わらず。マンネリといえばマンネリかもしれないが、古代中国のヘビ怪獣に襲われたり、エッシャーのだまし絵に迷い込んだりのギミックを、細かいことは考えずアトラクション感覚で楽しむべし。
そして、昨年相次いで亡くなったロビン・ウィリアムスとミッキー・ルーニー。ルーニーなんて1939年から3年連続“ハリウッドで最も稼ぐスター”1位に輝いた人だからね。そんな歴史上の偉大な名優の晩年を見届けることが出来たことに、映画ファンとして感謝したい。
確かにテンポは良く、飽きさせはしない。だが、「これで打ち止め!」感の強かった2作目に比べ、かなり惰性感が強い脚本で、ほとんど新鮮味が感じられない。悪く言えばコドモ騙し。それは作り手も分かっているようで、原始人でもベン・スティラー、「キャメロット」の舞台俳優で『リアル・スティール』繋がりのヒュー・ジャックマンを登場させるなど、苦肉の策が見え隠れ。さらに、大英博物館の警備員役にレベル・ウィルソン(祝『ピッチ・パーフェクト』日本公開!)を投入し、お笑いパートを彼女に丸投げしたのは嬉しくもアリ、悲しくもアリ。どうしても現実と重ねて見えてしまうロビン・ウィリアムズの最後のメッセージで、★ひとつおまけ。
思い起こせばB・スティラー扮する深夜警備員ラリーは最初、1作目でセオドア・“テディ”・ルーズベルトのことを「第4代大統領」と間違えていた。そのラリーもシリーズ3作を通して精神的成長を遂げた。導いたのはそう、“テディ”。彼は『ナイト ミュージアム』の世界観の羅針盤であり、一貫してラリーの父親的存在だった。そして、演じたR・ウィリアムズもまた。当シリーズの監督S・レヴィが以前、(本作にカメオ出演したH・ジャックマン主演の父子物)『リアル・スティール』を撮っているのは偶然か。闇の中でしか命の宿らぬ“夜の博物館”は映画そのものの暗喩、と捉えると名優2人に捧げられたラストの献辞もいっそう心に沁み入る。
一応のシリーズ完結編を謳った、本作の新味は何か? それは“スリリングならば何でもアリ”という方向に舵を切ったことと言えよう。
博物館内はもちろん、ロンドンの市街地でもトラブルが発生。街の銅像までもが動き出す大騒ぎは何も考えずに楽しめる。が、展示物を動かす石板の魔力の法則性が軽んじられているのは減点。ツッコミどころが多く、一度アラを見てしまうと気持ち良く楽しめないかもしれない。
とはいえ完結編らしく主人公ラリーとおなじみの展示物たちの別れは、シリーズを追ってきた身には感慨深い。とりわけ、レギュラー出演者だった故ロビン・ウィリアムズの最後の場面には彼自身と重なり泣けてくるだろう。
ただ楽しい。アイディアはシンプル、博物館の展示物たちが生命を持って動き出す、という1点だけ。なのに、楽しさがキープできているのが、このシリーズのスゴイところ。
今回の舞台は大英博物館。ギリシャ神殿の腕が欠損した彫像たちがゆっくりと歩きだし、ヒンズー教の手足が多い神々たちが軽やかに踊りだす。必見なのは、エッシャーの絵画空間。主人公たちが、あのねじれた空間の中に入って、奇妙な追いかけっこを繰り広げる。さらに、ベン・スティラーの2役、「ダウントン・アビー」のダン・スティーヴンスのお笑い演技、人気俳優2人のカメオ出演など、楽しさ満載。今は亡きロビン・ウィリアムズの笑顔もここに。
» 『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』の予告編・動画一覧
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