見どころ:東京国際映画祭やニッポン・コネクションなどで上映されたドラマ。孤独に生きてきた男が結婚の直前にトラブルを抱え、親友と婚約者の間で揺れ動く。監督は、テレビドラマ「必殺仕事人2009」やさまざまな映画に関わってきた春本雄二郎。主演は、俳優として活動するほか『百円の恋』や『あゝ、荒野』シリーズなどでボクシング指導を担当してきた松浦慎一郎。『フローズンライフ』などの梅田誠弘、『ろくでなし』などの遠藤祐美らが共演する。
あらすじ:家族を知らずに育ち、今はボクシングのトレーナーとして生計を立てている旭(松浦慎一郎)。一緒に住む佳織との結婚を控え、夢見ていた家庭をようやく作ることができると喜ぶ中、親友の洋人に仕事を紹介する。しかし、それが原因で洋人は詐欺の被害に遭ってしまう。養護施設で出会って兄弟のように助け合ってきた大切な友人の洋人を助けようとする一方で、認知症が進む祖母のために結婚式を急ぐ佳織の願いをかなえたい旭は、次第に追い詰められていく。
「愚かさ」で転がすタイプの映画だが、そこに胸が苦しくなるほどのリアリティが密着している。主人公はカネの件で下手を打ち、ある種の真面目さから袋小路に向かう。脇が甘く、判断ミスを繰り返し、相談せずに一人で決め、格好のつけ方を間違う…。この不器用さは愛されキャラにも仕立てられる要素だが、本作は彼を苛烈なスパイラルに放りこむ。
これは階層とコミュニケーションで決定される現代社会が強いるゲームなのか。その中でズタボロになっても、世界は捨てたもんじゃないと言えるのか。監督・春本雄二郎が影響を受けた先人の中にダルデンヌ兄弟を挙げていたのは納得。『サンドラの週末』と一緒に観たい。あと役者陣の顔が本当にいい!