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ボブ・ディランから励まされたトッド・ヘインズ監督が『アイム・ノット・ゼア』を語る

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奇才トッド・ヘインズ
奇才トッド・ヘインズ - 写真:Nobuhiro Hosoki

 伝説的なフォーク・ミュージシャン、ボブ・ディランの半生を6人の俳優を起用して製作した映画『アイム・ノット・ゼア』について、監督のトッド・ヘインズに話を聞くことができた。俳優6人それぞれがディランの異なった側面を演じるという奇抜な発想はどこから生まれたのだろうか。

‐どうやってボブ・ディランから許可を得たのでしょうか? また、彼はどれくらい本作にかかわっていますか?

(トッド・ヘインズ)僕はインスピレーションを得るため、ポートランド州のオレゴンに住む妹を頼りに旅をしていたとき、急にディランの曲を聴きたい衝動に駆られたんだ。徐々に彼の曲にハマっていって、ディランの人生や知られていない部分を知っていくうちに、僕でしかできないクリエイティブな方法でこの衝動に答えてみたいと思ったんだ。ただ、音楽の著作権を取るのが難しいことは知っていたし、今回の作品にはディランの曲がなければ成り立たないこともわかっていた。そして2000年の夏に、インディペンデント・フィルムメーカーのジェシーとプロデューサーのジェフ・ローゼンに出会い、具体的なコンセプトを告げた。そのときは彼らも気に入ってくれたんだが「ディランが気に入らなければ意味がない。それに彼は今までどんな映画にもNOと答えてきている。まずディランに手紙と自分の作品を送ってみてはどうかな」とアドバイスしてくれた。そしてその年の秋に、ジェフからディランの曲の使用と製作がOKになったことを知ったんだ。ディランからは許可と励ましの言葉をもらったけど、彼は直接この映画に関与はしていないよ。

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‐恐らく5年間くらい脚本を書いていたと思いますが、どの時点で誰をキャスティングしようと思ったのですか?

(トッド・ヘインズ)脚本を執筆しているときは、特定の俳優を思い描いて書いていたわけじゃないんだ。ただシャルロット・ゲンズブールだけは別で、彼女の持つ演技の素質と、フランス人の彼女が愛人の対象としてピッタリだと思って、彼女をイメージしながら役柄を書いたよ。ケイト・ブランシェットが演じたジュードの役は、オリジナルのアイデアから女性だったけれど、最初から彼女を意識していたわけではないんだ。彼女がこれまで演じてきた役の変装ぶりに徐々に気付かされ、それが進路をはっきりさせてくれたんだ。

‐撮影中に苦労されたことはありますか?

(トッド・ヘインズ)低予算の割には、多数の豪華な俳優を起用しての大がかりな作品だったから、撮影期間も長く、あっちこっちで撮影していたよ。モントリオールが提供してくれたものは、1966年のロンドンを背景にした場所と、1962年のニューヨークを背景にした場所だった。その詳細を美術セットでよみがえらせるためにスタッフたちは短い時間の中でいい仕事をしてくれたと思う。彼らには悪夢のような撮影だったかもしれないけどね。俳優たちも同じで、本当によくやってくれたよ。6人全員が、自分がまるで主役であるかのような意気込みを持って全力で演じてくれたからね。

 映画化が難しいと思われた人物ディランを、斬新な手法と見事な感性で作り上げた本作では、ケイトがアカデミー助演女優賞にノミネートされた。まさにアーティストたちがアーティストに真っ向から挑戦した作品といえるだろう。(取材・文:細木信宏)

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