アカデミー賞、なぜ『ハート・ロッカー』は『アバター』に圧勝したのか?

第82回アカデミー賞

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アカデミー賞で作品賞と監督賞を手にした58歳のキャスリン・ビグロー監督 - Todd Wawrychuk / A.M.P.A.S.

 第82回アカデミー賞での作品賞と監督賞は、下馬評では一番有力視されていたジェームズ・キャメロン監督の『アバター』を押しのけて、キャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』の受賞となった。『ハート・ロッカー』は6部門の最多受賞、『アバター』は3部門の受賞となったが、なぜこのような結果となったのだろうか。

映画『ハート・ロッカー』写真ギャラリー

 ビジョン的にも3Dの技術的にも画期的な作品として、多くの映画関係者から高い評価を受けていた『アバター』。また、興行的にも瞬く間に歴代1位の『タイタニック』を追い抜き、最高地位を獲得した作品。そのため、『アバター』を押しのけ『ハート・ロッカー』が監督賞のみならず作品賞を受賞したことは業界内にかなりの衝撃が走った。

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 なぜこのような結果になったのだろうか。一番大きな要因として考えられるのは、今年から導入された「選考投票システム」だろう。これは、候補作品に優先順位をつけて投票していくものだが、この投票システムの場合、過半数以上でひとつの作品が1位にならない限り、2位、3位に多く挙がった作品の方が勝ちやすいことがある。それを今回の場合に当てはめると、もし『アバター』が1位としての投票数が1番多かったとしても、それが過半数に満たない場合は受賞と見なされない。そのため、2位3位にあがった作品を全体表に加算していくのだが、2位3位に『ハート・ロッカー』が一番多く入っていたのではないだろうか。

 あくまでも推測だが、『アバター』の場合、1位に投票した人も多かったが、「受賞してほしくない」と思い、下位に投票した会員も多かったのではないか。キャメロン監督が『タイタニック』で受賞したときの「わたしは世界の王者だ!」というスピーチに反感を抱いた会員も多いと聞く。また、興行的に大成功している映画よりはもっと別の映画にチャンスをあげたいと思った会員もいたのかもしれない。それに比べ、資金的にも環境的にも苦労し、男性でさえ大変な状況で今回の映画を完成させたビグロー監督には、ほとんどの会員が好印象を持ち、1位でなくとも2位、3位に持ってきやすかったのではないか。

 もう一つ考えられるのは、アカデミー会員の大半が俳優、女優で構成されていることだ。これはよく聞くことだが、多くの役者は、自分の仕事がコンピューター・グラフィックスにとって代わってしまうことに危機を感じている。そのため、CGがふんだんに使われている『アバター』よりは、生身の役者の演技で製作された『ハート・ロッカー』のほうに票を入れやすかったのではないか。また、いままでの傾向からもアカデミー賞の作品賞でSF作品は受賞しにくいという背景もある。

 いずれにしても、今回の投票結果が女性監督に門戸を開くことになり、しかもビグローが長年業界に貢献してきた58歳の監督であるということなどを考えると、今回の投票結果は大変有意義だったと言えよう。(文:こはたあつこ Atsuko Kohata)

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