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河瀬直美監督や、是枝裕和監督、黒沢清監督を愛したサンセバスチャン映画祭ディレクター、日本映画に思うこと…

河瀬直美監督や、是枝裕和監督、黒沢清監督を愛したサンセバスチャン映画祭ディレクター、日本映画に思うこと…
サンセバスチャン国際映画祭のディレクターのミケル・オラシレギ氏-美食の街バスク出身者らしい大きなお腹を持つ熊のような風ぼうと人懐っこい笑顔が印象的 - Photo:Harumi Nakayama

 スペインで開催されていた第58回サンセバスチャン国際映画祭が現地時間25日に閉幕した。本年度コンペティション部門に『玄牝−げんぴん−』が選出された河瀬直美監督や、是枝裕和監督、黒沢清監督を愛した同映画祭ディレクターのミケル・オラシレギ氏は今回で勇退し、来年の映画祭は新ディレクターのホセ・ルイ・レボルディノスに受け継がれる。

 日本映画のことや、映画祭のあるべき姿について、オラシレギ氏がラストインタビューに応じた。 オラシレギ氏はバスクTVの元プロデューサー。1993年から映画祭事務局に籍を置き、2001年にディレクターに就任。美食の街バスク出身者らしい大きなお腹を持つ熊のような風ぼうと人懐っこい笑顔で堅物の世界の巨匠たちをもとりこにし、『ワンダフルライフ』『花よりもなほ』『歩いても 歩いても』で3度参加した是枝監督にも「食事もおいしいけど、彼がいるからサンセバスチャンにまた来たいと思う」と言わしめた、まさに映画祭の顔。映画への情熱もひとしおだ。

 「今回のコンペ作15本のセレクションは、河瀬さんの『玄牝−げんぴん−』のようなドキュメンタリーや、一見ジャンル・ムービーのような韓国のキム・ジウン監督『アイ・ソウ・ザ・デビル』のようなスリラーといった、今までのコンペ作の流れとは違った、バラエティに富んだ作品になりました。一つの新しい考え方や映画の見方を提示出来たと思っています」と今年の映画祭について振り返った。

 中でも河瀬監督のドキュメンタリー『玄牝−げんぴん−』は、病院での無痛分娩が当たり前のスペインにおいて、自然分娩という選択肢もあることを提示した作品。それをコンペ作として上映するという挑戦的な選択をし、話題となった。オラシレギ氏は「自然であることに反対する人はいないでしょう。劇中に登場する吉村医院の吉村正先生は特殊な考えの持ち主だけど、観客にとって難しいと思ったのは、河瀬さんならではの“映画言語”、つまり物語の語り方にあると思います。河瀬さんの作品はこれまでスペインで『殯(もがり)の森』しか公開されておらず、彼女の作品を見慣れていない人もいるでしょう。しかし、今回の作品は今までとは少し違う。でも河瀬さんが持っているユニバースをとても良く表現していると思います。私は河瀬さんの、自然と人のコミュニオン(キリスト教における神と信徒の交わりという意味)という世界観が好きですね」

 しかしその一方で、本年度は他に「心に残る日本映画はなかった」という。いまだに是枝監督の『歩いても 歩いても』が「私の日本映画のベスト(笑)」というオラシレギ氏には、それを超える作品はなかったということだろう。そのオラシレギ氏の後継者であるレボルディノス氏は、アジア映画好きとあって、今度は同映画祭での日本映画の上映本数が増えることを期待したいところが、オラシレギ氏は「他の映画祭ではディレクターが変わるたびに、それまでの歴史や傾向が断絶してしまうが、サンセバスチャンは継続性のある映画祭なんです。私が前任者から引き継ぐ時もそうでしたし、今回も約15年以上一緒に仕事をしてきたホセ・ルイに、私たちが長年培ったことを受け継ぐことになるでしょう。彼が新しいアイデアを持っているのを知っています。でも変革というのは時間をかけてゆっくりとやって欲しい。彼には『忍耐強くあれ!』という言葉を伝えたい」と、後継者たちへの思いを語った。

 そのオラシレギ氏にディレクターとしての想い出を尋ねると、悩んだ末、2つ答えてくれた。「1つは第50回大会のパーティーに、そのシンボルとしてフランシス・フォード・コッポラを招いたことです。彼は1969年の第17回大会の時に、映画『雨のなかの女』で最高賞のゴールデン・シェル賞を受賞したのですが、彼にとっては初めて国際的に評価された瞬間だったんです。彼は今となっては世界的な巨匠ですけど、この映画祭がいかに新人監督を模索してきたのかと感銘を受けましたね。他にも、ローラン・カンテ、フランソワ・オゾン、ウォルター・サレス、ツァイ・ミンリャン監督もこの映画祭から育っていったんですよ。そんな映画祭に関われて誇りに思います。もう一つは私が最初に映画祭に携わった1993年のこと。生涯功労賞を受賞した米俳優ロバート・ミッチャムがゲストとして参加していたんです。もはや神のような存在の彼に会えたのは嬉しかったですね」この夜、オラシレギ氏は惜しまれつつ9年間のディレクター生活に別れを告げたが、今後は北米地域の作品選定担当者として、新しいディレクターを陰で支えていくことになるという。(取材・文:中山治美)


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