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阪本順治監督、自然災害の後に芸能が果たす役割を語る「何か役割があるから続いてきた」

阪本順治監督、自然災害の後に芸能が果たす役割を語る「何か役割があるから続いてきた」
『大鹿村騒動記』の阪本順治監督

 原田芳雄、三國連太郎、佐藤浩市ら豪華キャストで話題の映画『大鹿村騒動記』の阪本順治監督がこのほど、インタビューに応じた。同作品は病気療養中の原田のたっての希望で映画化までこぎ着けたオリジナル作品だ。原田と共に村長を口説いた製作秘話や、東日本大震災が起こり延期になった新作への思いを明かした。

 舞台となった長野県下伊那郡大鹿村は南アルプスに位置し、「日本で最も美しい村」連合に加盟が認められた風光明媚な村だ。また約300年にわたって村歌舞伎が継承されており、原田はその歌舞伎を題材にしたNHKドラマ「おシャシャのシャン!」(2007年)に出演して村の魅力に取りつかれた。その思いを旧知の阪本監督に託し、映画の企画を持ちかけたという。

 「芳雄さんの要望は大鹿歌舞伎の舞台に立って歌舞伎をやってみたいというのと、不良をやりたいと(笑)」かくして原田演じる風祭善は、鹿料理が名物の村でディア・ハンター』ならぬ「ディア・イーター」なる食堂を経営するファンキーな男。しかし妻・貴子(大楠道代)を弟分としてかわいがっていた治(岸部一徳)に駆け落ちされる始末。その2人が18年ぶりに村に戻ってきたことから騒動が起こる。

 脚本は金大中拉致事件を題材にした『KT』の阪本監督と荒井晴彦のコンビだけに、ただの人情喜劇では終わらせない。リニア中央新幹線の通過ルートや過疎化など、同村が抱える問題も盛り込み、骨太な作品に仕上がった。

 「柳島貞康村長に『村の名前をそのまま貸して欲しい』とお願いに行った時、村長が書いたメモを横から覗いたら『(脚本が)リアル過ぎるじゃねぇか』って書かれてた(苦笑)。リニア問題は飯田市という隣接する大きな街が駅を誘致していて、大鹿村はそれに連動する形で存在している。もっぱら景観やトンネル建設による土砂災害の危険性が議論の対象となっているけど、実際は劇中のように、目に見えて賛成・反対派で村が二分しているワケではないんですけどね。外から見た、この村の話を描かせてもらった」ゆえに村長は難色を示していたが、それを説得したのが原田だった。

 「『例え、村民を二分していたとしても、その真中をつないできたのが歌舞伎ではないか? 江戸時代に贅沢禁止令が出されても、戦争で男が村からいなくなっても、自分たちの核となる歌舞伎を失うわけにはいかないから上演してきた。そういう力を持った歌舞伎を映画で撮ってみたい』。そう芳雄さんが上手に言ったものだから(笑)、村長も『分かりました』と。村長はリニア問題に関して『行政の長として、皆さんの意見を聞いて判断するしかない』とおっしゃったので、劇中で本人役として出演して、そのセリフをそのまま言ってもらいました」

 また同村は、ちょうど50年前の1961年(昭和36)6月に起こった集中豪雨災害で55人の犠牲者を出すなど度重なる土砂災害に見舞われており、それも映画で触れている。東日本大震災で浮き彫りになった、自然災害や財政難打破のための新規事業開発で揺れる日本の村社会の縮図が、この映画で描かれている。

 「そこで考えるのが芸能の役割ですよね。映画や歌舞伎といった芸能がなくとも人は生きていけるんだけど、何かある役割があったから連綿と続いてきたのだと思う。芸能と寄り添うことで、その人の生活が豊になると信じていいのかな?と思いましたね」

 阪本監督は芸能の役割について震災以後、より一層深く考えるようになったという。阪本監督の新作は震災の影響で延期になったが、それも、阪本監督自身が一度書き上げた脚本を再考する時間が必要だと感じたからだ。

 「新作は現代の東京や世界情勢にも触れた内容だったので、まず自分が今、何を感じて、どういう言葉が浮かぶのか?を長期的に整理しないと、自信を持ってこの時代にあるべき映画を世に送り出せないと思った。別に震災そのものを描こうというワケでもないし、それが映画のやるべきことだとも思ってません。ただ震災を受けて自分なりの答えを見つけるためには、物語を考え、文字を書くという作業を通じないと導き出せない。映画人なので脚本を書くことで、その答えの入り口に到達出来ればと思ってます」(取材・文:中山治美)

 映画『大鹿村騒動記』は全国公開中


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