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『ショージとタカオ』ドバイ国際映画祭で賞を受賞!井手洋子監督を直撃!警察の取り調べの可視化の遅れをを指摘

『ショージとタカオ』ドバイ国際映画祭で賞を受賞!井手洋子監督を直撃!警察の取り調べの可視化の遅れをを指摘
井手洋子監督-ドバイ国際映画祭にて - Photo:Harumi Nakayama

 第8回ドバイ国際映画祭で人権問題に果敢に取り組んだ作品に贈られるヒューマン・ライツ・フィルム・ネットワーク賞を受賞したドキュメンタリー映画『ショージとタカオ』の井手洋子監督が現地でインタビューに応じた。井手監督は「ドキュメンタリー部門で受賞できなかったのは悔しいけれど、ほかにも対象となった作品がたくさんある中(ドキュメンタリーとフクションの10作品が対象)、わたしの作品を選んでいただけてうれしい。さっそく、(出演者の)桜井昌司さんと杉山卓男さんに報告します」と声を弾ませた。

 同作品は1967年に茨城県北相馬郡利根町布川で起こった強盗殺人事件「布川事件」の容疑者となった桜井さんと杉山さんを追ったドキュメンタリー。警察は二人組の男という想定の基に、地元でやんちゃをしていた桜井さんと杉山さんを別件逮捕。「自白」を強要された二人は、その後、無罪を主張するも認められず、20歳から29年間獄中生活を送ることになる。映画は、2人が仮釈放された1996年から再審公判が始まった2010年までを捕らえた貴重な記録だ。同賞の審査員も「14年間も長期に渡ってカメラを回し続けていたとは驚愕に値する」と感嘆の声を上げていた。

 そして2人が、今年5月に再審無罪判決を勝ち取ったのは記憶に新しい。彼らにとって実に長い闘いであったことは言うまでもないが、たった一人で二人を追いかけた井手監督にとっても結末の見えないつらい時間だったという。

 井手監督は「撮り始めて2年ぐらいは二人が社会へ戻るための変化もあったし、自分も(制作意欲という)熱を保つことができたんですけど、その後はキツかった。2人が再審に持ち込める見通しもなかなか立たず、何を撮ったらいいのかわからなくなったこともあり、断続的にしかカメラを回さない時期もありました。今思えばそれは、モノを創る者ならではの孤独に耐えられなかったのかもしれません」と胸の内を語る。

 だが積み重ねた年月と苦労は、確実に実を結んでいる。10月に行われた釜山国際映画祭ではアジア部門最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。また国内でも第84回キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門第1位を獲得したほか、平成23年度文化庁映画賞・文化記録映画部門で大賞受賞と高い評価を得ている。今回のドバイは中東プレミア上映となり、地元の女性弁護士も鑑賞に訪れて井手監督に称賛の言葉をかけていった。

 井手監督は「2人の日常を通して司法が浮かび上がれば良いと思っていたが、こんなに被疑者の人権が尊重されていないのかとビックリしたんです。取り調べ中のビデオ撮影はダメ、弁護士の同伴もダメと、世界の中でも日本ほど取り調べの可視化が遅れている国はないでしょう。でも韓国もドバイも話をうかがうと、同じように、市民と司法の間は距離が遠いのかなと感じましたね」と語る。

 布川事件は一応の決着を迎えたものの井手監督と、桜井さんと杉山さんたちの闘いはいまだ続いている。今月5日、桜井さんは水戸地検を訪れ、同地裁に提出された検察側の意見書は「名誉毀損」などとして抗議の申し入れ書を手渡した。また1986年に起こった福井女子中学殺人事件が今年11月30日、再審開始の決定が名古屋高等裁判所金沢支部で出されたように、えん罪の可能性が高い事件が日本にはいまだ多数ある。そのため、体験者である桜井さんと杉山さんは支援や講演活動のために全国を飛び回っている。そして本作もまた、口コミで評判が広まり、国内外での上映が続いている。

 井手監督は「2人のブログを見ると講演先の街をずいぶんと観光されていて、失った青春を今、取り戻そうとしているのかなと思うんです。いつか欧州の映画祭に呼ばれた時には、2人も一緒に連れていってあげたい」と遠くドバイから、劇中で良い味を出している“主演俳優“の2人を思いやっていた。(取材・文:ドバイ・中山治美)


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