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菊地凛子、今だから言える映画『ノルウェイの森』で直子役を勝ち取った経緯とは?

菊地凛子、今だから言える映画『ノルウェイの森』で直子役を勝ち取った経緯とは?
菊地凜子

 映画『青いパパイヤの香り』や『シクロ』で世界中から注目を集めたトラン・アン・ユン監督が、村上春樹のベストセラー小説「ノルウェイの森」を映画化し、これからアメリカで公開されるこの新作について、繊細な直子役を演じた菊地凛子が語った。

 同作は、現在は37歳のワタナベトオル(松山ケンイチ)は、青春時代を過ごした18年前の友人を思い出す。当時ワタナベは、友人キズキ(高良健吾)の恋人である直子(菊地凛子)に恋をしていたが、ある日キズキが自殺してしまう。彼を失った喪失感から、それぞれ別の道を歩んでいた直子とワタナベが、突如再会したことで、新たに二人の複雑な心境が交錯していくというドラマ作品。

 村上春樹の原作について「原作は、わたしが演じた直子と同じ歳に読んでいるんです。同じリンクする感覚があったんです。儚いものに惹かれるみたいなものが。ただ、大人になると言葉を見つけてきて、なんとなくそのこと(本に惹かれた理由)を説明するんですが、若い時にはそれが上手くできなかったんです。だから、最初はなんで直子が好きだったんだろ? と思っていたんです。でも、ずっとこの直子が好きで、私の気持ちの中にあったんです。それと同時に、わたしはこういう本が好きなのかと理解させてくれたのも、この原作だったんです。だから、わたしが原作を読んで10年後、この作品の映画化という時に、自分が演じてみて初めてこの原作をより理解できると思ったんですよ」と原作の直子に深い思い入れがあったようだ。

 そんな思い入れのあった作品への出演経緯について「あの『ノルウェイの森』が映画化され、それをトラン・アン・ユン監督がメガホンを取るというビッグニュースが紙面に出ていて、さらにこれから制作し、その出演俳優をオーディションで決めるみたいなことが書かれていたんです。そこで、あれ? わたし、オーディションを受けていないぞ! と思って、この映画のプロデューサーである小川さんに電話して聞いたら、わたしにフィットしないということで、そのオーディションのリストから外されていたそうなんです。でも、それはちょっとフェアじゃないと思ったのがきっかけでした!」と一度、断られた彼女は「そこで、どうしてもやらせてほしいということを何度も言ったんです。すると、トラン監督には会えないけれど、ビデオ・オーディションだけはやると言ってくれたんです。個人的には、そのオーディションをやったら勝手に満足してしまったんです。やることをやったら、すっきりしたんです。すると、次の日にトラン監督が会ってくれたんですよ。彼から、どういう風にこの演技をしたのかと聞かれたんですが、今日この場に来たのは、役がもらえるのかを聞きに来ただけで、この直子の役柄についての自分の演技のアプローチの説明をしたくはなかったんです。それをトラン監督に伝えると、トラン監督は今までそういう風に言ってきた女優はいなかったと言って、その後プロデューサーを説得してくれて、この役柄を頂けることになったんです」と彼女の強い意志から勝ち取ったようだ。

 トラン・アン・ユン監督との仕事について「彼の作品を観ていて、特に『シクロ』が好きだったんです。だから彼の名前だけで、今度の『ノルウェイの森』はすごい映画になるぞと思ったんです。わたし自身も、今日本を離れて(ニューヨークに拠点を置いて)1年以上経つんです。でも、今すごく日本が近くに感じるんです。ある程度、距離を保つと違う日本が見えてきて、それがリアルに感じられたんで、この作品にも(自分は)マッチすることができたんだと思います」と日本を客観視できたことが、彼女を成長させたようだ。さらに、「この原作は、文学としてはフラットで、透明なものだと思っていて、実際にこの映画を観ると、ものすごく動物的なんです。そういう感覚を出せたのは、日本の外から見た日本の文化みたいなものをトラン監督なりに感じたからで、それが逆に(日本人監督が出せない)リアルなものだったんだと思います。わたしは、それが成功例だと思っています」と日本のベストセラー作品を見事に映画化したトラン監督を讃えた。

 いろいろなものに刺激を受けている印象を受けるが、そんな直感力を保つために、心がけていることは「基本は、嫌だなぁ、怖いなぁと思うことをなるべくやるようにしているんです。結局、そういう風に嫌だなぁ、怖いなぁと思うようなことは、大概初めてのことで、結局それを選択しないと、いつまでも小さな部屋に住んでいるのと変わらないんです。もちろん、それは楽で、心地良いのですが、それを続けていると駄目なんです。それをしていると、これから先に役を演じられないと思います。だからと言って、奥歯を噛み締めて根性でやるというわけではなく、どうこの役柄を楽しむのか考えています。これが役を理解していくことにもつながるし、人を理解していくことにもつながると思ってます」と型にはまらない役柄に挑戦してきたからこそ、国際的な女優として評価されたのかもしれない。

 今、ニューヨークを拠点に置いている理由は「本当は、映画『バベル』が終わって、エージェントもこちらアメリカにあって、何もかも揃っていたんです。いつでも、こっち(アメリカ)においでよ! という感じだったのに、わたしはそれを避けたんです。それは日本人だし、日本の映画に出たいし、仕事してみたい日本の監督だって一杯いるという感覚で、すべては結局怖かっただけなんです。ただ、怖いことを避けると、ろくなことがないことを学び、その経験を通して、今はまっさらなことをやろうとしています。今まで踏んできていない芝生を踏みたいと思っています」と明かした。

 インタビューを通して、彼女のプロ意識の高さと、演技に対するどん欲な姿勢がうかがえた。取材したわたしも、10代にこの映画の原作を読み、菊地凛子があの直子役にふさわしいか疑念をもった。だが映画を鑑賞してみて、今の日本の女優の中であの繊細な役柄を演じられるのは、彼女しかいないという確信に変わった気がした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)


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