“衝撃”の宝庫、Jホラーの新しい波を作るのはこの人!白石晃士監督に突撃取材!

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気合い十分の白石監督

 『ノロイ』『オカルト』など衝撃的なラストで物議を醸すホラー映画の鬼才であり、大島優子主演の『テケテケ』、ももいろクローバーが出演した『シロメ』などアイドルを「化け」させる手腕を持つ白石晃士監督が、初めて海外に進出した韓国との合作映画『ある優しき殺人者の記録』の誕生秘話を明かした。

葵つかさが体当たりの熱演!韓国で日本のAV女優が大人気

 少年時代に幼なじみの女の子が目の前で死んだことがトラウマとなり、精神を病んで障害者施設で暮らす男サンジュンが施設を脱走。「神のお告げ」を聞いて18人を殺害したという彼を、事件を目撃したもう一人の幼なじみでジャーナリストのソヨンが取材する密室劇を、モキュメンタリースタイルで捉えていく。

日本人の新妻役でド肝を抜く怪演を見せるつかさちゃん (C) NIKKATSU、ZOA FILMS

 観客がまるでその場に居合わせたかのような感覚に陥るカメラワーク、緊張感が途切れない演出もさることながら、キャスティングも秀逸。特に目を引くのが、ソヨンを演じるキム・コッビと、サンジュンが拉致する日本人夫婦の新妻にふんした、カリスマ的AV女優の葵つかさという二人のヒロインだ。白石監督は『息もできない』などでコッビを高く評価しており、彼女の役柄はあて書きだったという。「コッビさんが日本のインディーズ作品に出演されていることを知っていたのと、彼女が出演するとで映画の風格も上がると思ったので」

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 一方、本作でこれまでのイメージからは想像できない血まみれの怪演を披露し、ある意味、コッビを上回るほどの凄みを感じさせた葵つかさ(役名もつかさ)については「韓国では日本のAV女優が大人気なのでそのニーズに応えるという前提はありましたが、何しろかわいかったので!(笑)それに、彼女が出演している『ゴッドタン キス我慢選手権』はアドリブが必要とされると思うんですけど、それを見て度胸があると感じましたし、彼女のかわいらしくありながらも、どこかつかみどころがない“浮いた”雰囲気が役柄にピッタリだったので」と起用の経緯を語る。

『息もできない』でブレイクしたキム・コッビ

あながち「狂人」とも言えない殺人者

 「自分が殺人に手を染めるのは『神からの使命』であり、全てが終わったときには奇跡が起こる」そう語る主人公の殺戮者サンジュンは、はたから見れば狂人だ。しかし、劇中で彼に密着するディレクターがサンジュンに脅喝され、共犯者に仕立て上げられていく筋書きになっているせいか、不思議と次第にサンジュンに感情移入してしまうところが不思議だ。

大量殺戮者サンジュンの言う「神のお告げ」の真偽は……?

 「例えば、『オカルト』は、地下鉄サリン事件をもとにしていて、事件を一人の人物に集約している。宗教というのは心の救済になることもあれば、極端に先鋭化すればテロに向かうこともある。そういうふうに人が生きていくうえで何かを信じることが、いろんなことを生む、つまり人間の本質を突いているのではないか」と、監督はその理由を語る。

 さらに、「信じがたいような事件が起きたとき、人は加害者の側を遠い世界のように捉えがちなんですけど、実はあらゆる側の人が何かのきっかけで『そちら側』に転じることがある、そういった気持ちを疑似体験するというのが、映画の一つの醍醐味(だいごみ)なんじゃないかなと思っていて」と続け、正と負、両極端のベクトルを持つ人間の危うさについて考察する。

衝撃的な「アレ」の誕生秘話

 「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズの口裂け女、カッパ、トイレの花子さん、『カルト』の霊体ミミズなど、白石作品に登場するUMAや怪奇現象はどれも強烈なインパクトを残すが、本作でも空にアッと驚くような物体が現れる。そのオリジナリティーの秘けつを尋ねると「そもそも人のかたちをした幽霊に興味がない」という。

 幽霊に興味を持てない理由は、「元が人間なんだからたかがしれていると思ってしまうので、自分の映画ではもっと得体のしれない存在にしたい。例えば、『オカルト』ではUFOを出したいなと思いましたが、自分は金属型のUFOというものに幽霊と同じく興味を持てない。何らかの知的生命体が人間の持っているような科学を推し進めて作り出したもの、という想像の範囲に収まってしまうので」と、あくまで「想像が及ばないことの怖さ」にこだわる。同時に、「それに、個人的にウジ虫のようなウニョウニョした動きが生理的に大嫌いなので、お客さんにもその怖さを体感してもらうべく細長い物体の集合体として表現しました」と言い、ビジュアルへの情熱も並々ならぬものが伝わってくる。

この後、トンでもない展開に……!

ある意味ロマンチック?アッと驚く衝撃のラスト

 白石監督の過去作と比べて白眉なのが、ラストがある意味ロマンチックなラストになっているところ。「今回の場合、初めに韓国のプロデューサーのウンギョンさんが『最後はキレイに終わりたい』という意向があったので、それを汲むかたちで考えました。ただし、自分はとにかく偽善が嫌いなので、重みがあったうえでの「自分が信じられる」キレイなラストを作りたいと思いました」。これまでと同様に意表を突く仕掛けでありながらも、不思議と見終えたあとの印象の「爽やか」であることは、白石作品のファンをも驚かせるはずだ。

 ラストの予想のつかなさのレベルでは、M・ナイト・シャマラン以上といっても過言ではない。しかし、「自分が面白いと思える作品」を貫く一方で、「日本は世界で一番、映画が面白くても売れない国だと思っている。逆に言えば、面白くなくても売れる作品が多いということ」と、邦画界の現状を嘆きつつ、「そんな状況が良くなるためには何十年単位かかると思うので、海外の方が自分の満足のいく作品を作れるかもしれない」と、今後の海外進出への可能性を語る。あの手この手で観客を驚かせ続ける白石監督が、ハリウッドに進出する日はそう遠くないはずだ。(取材・文:編集部 石井百合子)

映画『ある優しき殺人者の記録』は、9月6日より全国順次公開

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