中島貞夫監督『極妻』以来17年ぶり新作で迫った“ちゃんばら”の美学

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劇中では、映画『太秦ライムライト』(2014)で話題になった“5万回斬られた男”の異名を持つ福本清三が所属する「剣会」も登場。殺陣の真髄を伝える。 - (C) 吉本興業

 中島貞夫監督が、『極道の妻(おんな)たち 決着(けじめ)』(1998)以来17年ぶりとなる新作『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』についてこのほど、インタビューに応じた。同作品は昨年10月の京都国際映画祭2015での上映を皮切りに、第10回さぬき映画祭、第11回大阪アジアン映画祭、島ぜんぶでおーきな祭・第8回沖縄国際映画祭と巡回中で、中島監督も精力的に上映会場に足を運んでいる。

 中島監督は東映京都撮影所出身。1964年に『くノ一忍法』で監督デビューを果たすまで、松田定次監督『水戸黄門 天下の副将軍』(1959)、マキノ雅弘監督の『恋山彦』(1959)、田坂具隆監督『親鸞』(1960)など名匠たちの助監督を務めて腕を磨いた。映画は、そんな中島監督自らが案内人となり、日本映画発祥の地である京都の映画史から、そこで育まれた時代劇の魅力や真髄に迫る85分のドキュメンタリーだ。

 製作に至った経緯について、中島監督は「助監督時代に散々、時代劇に関わってきたから辟易していたのだけど、近年どんどん京都の映画界が寂しくなって職人に仕事がなく衰退してきたことに対する危機感があった。特に殺陣師たちね。京都には様々な伝統芸能があるが、立ち回りもその一つ。刀を振り回しながらあれだけ動くにはどれだけの鍛錬が必要なのか。ちゃんばらを取り上げることで彼らの仕事ぶりを見直せたらと思って」と語った。

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映画のラストでは、中島監督が理想とする“ちゃんばら”を魅せる - (C) 吉本興業

 もっとも“歴女”なる言葉が生まれたほど歴史がブームになって久しい。『るろうに剣心』シリーズは、3作累計興行収入が120億円を突破し、テレビドラマの映画化『信長協奏曲(のぶながコンツェルト)』(2016)は興収20億円を叩き出した。その影響か、小道具を扱う会社が新人社員を募集したところ女性からの応募がほとんど。東映京都の殺陣技術集団「剣会」への入会志願者も多いという。ただ地上波での時代劇は減少し、企画があったとしても俳優陣のスケジュールを考慮して撮影は東京近郊が主流となった。

 中島監督は「無理してこの世界に入っても食べていくことができないから長続きしない。舞台公演で立ち回りのシーンを入れるとか、活躍の場はあると思うのだが。確かに若い作家で“ちゃんばら”をやりたがる人はいるんですよ。でも、やはり知識が必要。知識を得るために、普通の映画を撮る時以上に時間をかけることができるのならやってもいいと思いますけどね」と苦言を呈する。

中島貞夫監督は1934年千葉県生まれ。京都国際映画祭実行委員長を務めるなど映画界のため、精力的に活動している。

 本作は、その知識を深める一助となるに違いない。特に抜刀までの精神的な部分を丁寧に解説している。中島監督は「日本刀を持つという特殊な形態に、日本人の死と向き合う姿勢を感じさせる。ちゃんばらは、死と向かい合わないと単なるパフォーマンスに過ぎないから。そして刀を持って戦うというのは、どれだけ鍛錬が必要か。それが前提条件としてあって、刀を持って人間ができる精一杯の戦い方に感動が生まれるんだな」と説明する。

 今回の制作は、中島監督も監督人生を見つめ直す契機となったようだ。「助監督を5年間やっていた時は時代劇ばかりで嫌で嫌でなんとか現代劇をやりたいと思っていたけど、その時に学んだ衣装や小道具など“時代劇のいろは”がのちに役立ったと思わざるを得ないことがあった。うるさいスタッフが多かったからね(笑)」と振り返る。新作の構想もある。ズバリ時代劇で、すでに脚本も完成しているようだ。「その中で本当の立ち回りを見せたいんだよ。女性の観客が主人公に共感して泣くような、身も心も洗われるような作品にしたいと思って」。

 中島監督といえば1987年から2008年まで実に21年に渡って大阪芸術大学映像学科教授から同大大学院教授、そして映像学科長まで勤め上げ、後進の指導にあたった。その間、監督の熊切和嘉山下敦弘呉美保石井裕也、カメラマンの近藤龍人、脚本家の向井康介ら、今の日本映画界を支える逸材を輩出したことで知られる。今年はいよいよ“師匠”の出番となりそうだ。(取材・文:中山治美)

島ぜんぶでおーきな祭・第8回沖縄国際映画祭は4月21日~24日開催

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