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日本が誇るファッションフォトグラファー故・吉田大朋が捉えたエレガントな世界

吉田大朋さん撮影の写真集「グレの世界」より
吉田大朋さん撮影の写真集「グレの世界」より - (C)Daiho Yoshida

 日本人で初めてフランスのファッション誌「ELLE」の専属契約を結び、ファッションフォトグラファーとして一時代を築いた故・吉田大朋さん(享年82)の作品展「Requiemレクイエム 吉田大朋 写真展 軽妙洒脱」が4月5日、神奈川・強羅の箱根写真美術館の開館15周年特別展として開幕した。同日行われたオープニングセレモニーには、箱根町長・山口昇士、「日本カメラ」元編集長の河野和典、写真家・高井哲朗らが出席した。

吉田大朋さんのほか作品も!【写真】

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オープニングで挨拶する吉田大朋さんの長女・吉田佳代さん

 吉田さんは1961年に雑誌「ハイファッション」で写真家デビューを飾り、1965年にパリへ渡り「ELLE」と専属契約。1973年からはニューヨークに移り、本場ファッションの潮流を雑誌「anan」や「MORE」、「ミセス」などに発信してきた。代表作に映画評論家・秦早穂子と手がけた写真集「グレの世界」(文化出版局)ほか、歌手・女優いしだあゆみのシングル「家路」のジャケット写真、作家・池波正太郎の書籍表紙写真なども担当した。

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 作品展は昨年10月から準備を進めてきたが、吉田さんが2月10日、心不全のために急逝した。それは東京都写真美術館で開催された第9回恵比寿映像祭のオープニングレセプションに出席した数時間後の事だったという。作品展は吉田大朋アーカイブのスタッフや遺族が引き継ぎ、“Requiemレクイエム”と称して開催に漕ぎ着けた。

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自然豊かな強羅にある箱根写真美術館。2階のマダム・グレの作品が展示されているスペースには、関連書籍をゆっくり観賞できるスペースもある。

 館内には、皇后美智子様の洋服デザイナーとして活躍した故・植田いつ子さんと、パリのオートクチュール界で“マダム・グレ”の愛称で知られた故ジェルメーヌ・エミリ・クレブさんというファッション界の東西二大巨頭のエレガントな世界を捉えた計41点の写真を中心に、吉田さんの作品が掲載された書籍や愛用していたカメラなどの遺品も展示されている。

 吉田さんの長女で映画会社アスミック・エースに所属し、西川美和監督作『永い言い訳』のプロデューサーでもある吉田佳代さんは「作品展が決まった10月から亡くなるまでの5か月間、父は朝起きるとビュアーを覗いては一枚一枚写真を選ぶという作業をしていた。最期に本当に良い時間を過ごせたと思います。植田いつ子さんとマダム・グレの仕事を展示したいというのは父の意向で、誇りでもありました。特に頑固で孤独と言われるグレのアトリエには、2~3か月に渡って密着させてもらった」と振り返る。

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 佳代さんは吉田さんと共に海外で生活し、当時の欧米文化の影響を受けて育った。アシスタントとして、写真集「地中海夏の記憶」(キヤノン販売)などの撮影旅行にも同行したこともあるという。その後、西洋文化への豊富な知識と、培った語学力を映画業界で生かし、旧ヘラルド・エース時代にはイタリア映画『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)など海外作品の買い付けや、2003年~2004年には東京国際映画祭コンペティション部門のプログラミングディレクターも務めた。

 佳代さんは「“生活のための写真は撮りたくない”とそれまでの仕事を一切やめてパリへ渡った父に対しては尊敬と同時に、反発するところもありましたが、私の人生において父の影響はやはり大きいと言えるでしょう。改めて父の作品を振り返ると、デジタル時代の今と異なり、フィルム撮影ならではの独特な奥行きがあり、骨董品を見るような愛着がある。これらをきちんと保存しなければという思いに駆られました」と語る。

 吉田さんの自宅にはまだ数千点の作品が保管されており、佳代さんら関係者は「この展覧会をきっかけに、回顧展などの形でアーカイブを発表していきたい」と言う。(取材・文:中山治美)

箱根写真美術館・開館15周年特別展「Requiemレクイエム 吉田大朋 写真展 軽妙洒脱」は5月29日まで同館で開催

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