アスベスト被害は日本だけではない…権力と戦う映画監督 韓国被害者が感謝

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第22回釜山国際映画祭にて、原一男監督と現地の原告団の方ら

 石綿工場の元従業員や近隣住民がアスベストによる健康被害を国に訴えた「大阪・泉南アスベスト国賠訴訟」を追った8年半の記録『ニッポン国VS泉南石綿村』が、第22回釜山国際映画祭ワイドアングル部門に出品され、10月18日に上映が行われた。上映会場には、実際にアスベスト賠償請求で国と戦った泉南の原告団をはじめ、釜山にてアスベストの健康被害の調査を行っている市民活動団体も一緒に映画を鑑賞した。今回初めて映画を観た泉南の原告団のメンバーらは「すでに亡くなってしまった原告団のメンバーも映っており、この映画を完成してくれた原(一男)監督にありがとうと言いたい」と異口同音に感謝の言葉を述べていた。

【画像】韓国の市民運動家の人々と原一男監督

 韓国の市民活動家も「映画を見て感動しました。自分たちにはまだまだ不足している部分があり、この映画から学ぶことが多い」、「とても胸が熱くなりました。韓国でも被害者が亡くなる前に映像として記録を残さねば」など概ね高評価だった本作。

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 今回の映画は上映時間が215分。原一男監督作品にしてもかなり長く、これまでの原作品に見られたような破天荒な人物は登場しない。原監督は、「カメラは被写体のプライベートに踏み込む暴力性があり、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三のように良識のない人は短いカットでも説明が付くが、泉南の人たちは良識があり、撮っていい部分とNGの部分がはっきり線引きされていて踏み込むことができず、彼らが話すことをしっかり撮らないと観客に伝わらない」と上映時間が長くなった理由を話す。

 泉南の石綿製造の機械は1972年から3度に分けて韓国に渡り、1990年から1992年にかけてインドネシアに渡った。原監督は、映画の中でインドネシアに渡った石綿製造機械を撮りたかったそうだが、「それを撮りにいくと殺されるからやめてくれとスタッフから言われた」と撮影を断念した経緯を説明。だが韓国の活動家から「釜山のテレビ局が撮影して番組を作った」という話を聞き、「殺されないのであれば、自分も勇気を出して行けばよかった」と悔しがっている様子も見せていた。

 最後に原監督は、ドキュメンタリー映画を撮る意味について問われると、「本当の権力というのは見えないところにある。その権力をカメラの前に引っ張り出すまでは死ぬに死にきれない」と今後もライフワークとして権力そのものを追っていくことを宣言した。『ニッポン国VS泉南石綿村』は、2017年・第18回東京フィルメックス(11月18~26日)の特別招待作品として上映される。(取材・文:土田真樹)

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