カンヌ総代表の「良い映画祭」を作る3つの条件

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カンヌ国際映画祭の総代表で映画『リュミエール!』の監督ティエリー・フレモー

 世界三大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭の総代表にして、初監督作『リュミエール!』を引っさげて第30回東京国際映画祭をはじめ世界各地の映画祭を巡回中のティエリー・フレモーがインタビューに応じ、良い映画祭の条件について語った。

スター勢ぞろい!第70回カンヌ国際映画祭【動画&写真】

 毎年5月に南フランスで開催されるカンヌ国際映画祭は今年で70回の歴史を持ち、世界各国から集まるメディア数だけでも約4,000人と言われる世界最大規模の映画祭である。フレモーは2001年に芸術ディレクターに就任し、2007年からは総代表として取り仕切っているが、その一方で“映画の父”と称されるリュミエール兄弟が遺したフィルムの修復・保存・研究を行っているリュミエール研究所(フランス・リヨン市)の所長としての顔を持つ。

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 そのリュミエール研究所でも2009年にリュミエール映画祭(正式名称はグランド・リヨン映画祭)を立ち上げ、すでに16万人以上を動員する映画祭へと成長させたのだからその手腕には恐れ入る。しかも新作をいち早く上映し、世界中のプロが集まるカンヌ国際映画祭とは対照的に、こちらは毎年レトロスペクティブや西部劇特集など旧作を中心に上映し、一般市民に開かれた映画祭だ。

 10月14日~22日に開催された第9回リュミエール映画祭を無事に終えた直後に来日したフレモーは、同映画祭を開催する理由について「一般大衆への文化的な経験の場であり映画史を学ぶ場として考えています。今の観客は、レベルの高い作品を見せても理解できる教育レベルを持ち合わせています。ただカンヌがコンペティション部門を設け“競争”という側面があるのに対し、こちらは映画を通して人々が社会的や人間的な分かち合いができればと考えています」という。

 大衆に開かれた映画祭とあって、レッドカーペットのような華々しいイベントや、夜の上映を鑑賞するために、観客に正装を義務付けるようなことはないという。「リラックスした映画祭ですが、それでも今年はウォン・カーウァイ監督や女優ティルダ・スウィントンが友人として参加してくれました。映画祭にとって重要なのは、グッド・フィルム、グッド・フード、グッド・フレンドです」と良い映画祭に必要な“三種の神器”を挙げた。

 ただし映画研究家であるフレモーにとって、カンヌ国際映画祭もリュミエール研究所での活動も「同じ仕事」と強調する。その理由は「現代映画を評価するには、クラシカルな映画の知識が必要ですし、リュミエールの映画を分析するにも、現代の映画を知っている必要があります」という。ゆえにリュミエール社が製作した1,422本のうちの108本をデジタル復元し、ナレーションで映画的解釈を付けた映画『リュミエール!』を今に発表したのだ。

 フレモーは「リュミエール兄弟を映画の発明者であるという視点から切り離して、映画作家としての彼らに焦点を当てたいと思いました。本作を見れば(カメラアングルのこだわりや演出など)彼らもまた映画作家であったことが分かるのではないでしょうか。きっと本作は、見た若いアーティストたちに何らかの影響を与えるのではないかと思います」と力説した。

 それにしてもただでさえ多忙であるというのに、映画を製作する時間がよくあったものだとフレモーの仕事術に興味を示すと、「実は昨年、カンヌ国際映画祭閉幕からの1年間を日記形式でつづった『セレクション・オフィシャル(原題)』(日本未発売)を上梓(じょうし)したので、それを読んで頂ければ。ただし600ページありますけどね」と悪戯っぽく笑った。デキる男はPRも巧みなようだ。(取材・文:中山治美)

映画『リュミエール!』は全国公開中

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