国との戦い、最もつらい姿をさらけ出した勇気…原一男新作ドキュメンタリー公開!

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23年ぶり新作ドキュメンタリーの公開を迎えた原一男監督と、原告団の赤松タエさん、佐藤美代子さん、柚岡一禎さん

 ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』の原一男監督最新作『ニッポン国VS泉南石綿村』の初日舞台あいさつが10日、渋谷のユーロスペースで行われ、本作に出演する「大阪泉南アスベスト訴訟」の原告団たちと原監督が1時間以上にわたる突っ込んだやりとりを繰り広げ、会場を大いに沸かせた。

【画像】石綿汚染、つらい姿も見せ国に訴え

 石綿(アスベスト)工場の元労働者とその家族が、国を相手に損害賠償を求めた「大阪泉南アスベスト訴訟」に、8年もの年月をかけて密着した本作。原監督のドキュメンタリー作品としては、およそ23年ぶりの新作ドキュメンタリー映画となり、完成するや世界各国の映画祭からオファーが相次いだ。一足先に釜山国際映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭、東京フィルメックスなどで上映され、高い評価を受けている。

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 この日は本作に出演する「泉南アスベストの会」代表の柚岡一禎さん、原告団の赤松タエさん、佐藤美代子さんも出席。「原告の皆さんは偉いなと思いますよ。誰もが本名で、仮名いっさいなしで映画にも素顔をさらし続けた。最後までAさん、Bさんとはせずにね」と切り出した柚岡さんは、「ただ原さんの過去の作品を観ていると、8年も裁判に密着するような人じゃないと思っていた。面白くもなんともない裁判だし。この8年間はトラブルばかりだったし……。でも原さんだから起伏を追ったドラマチックな話になっていて。原さんはよくこの映画を作りましたよ」と自虐ネタを交えて称賛すると、赤松さんも「ようやってくれた」としみじみ。これにはさすがの原監督も「そんなことは……」と苦笑いするばかりで、その様子に会場は笑いに包まれる。

 さらに「今だから言うけど、この裁判に勝てるとは思わなかったんですよ」と語る柚岡さんは、「今日初めて原さんに聞くけど、原さん、負けた方がいいと思わなかった? 負けの悲劇を描きたかったのと違うかな? われわれが負けた方がもっといい映画になったんじゃない?」と呼びかけると、原監督は「とげがあるなぁ」とあわてた様子で笑いつつ、「そういう印象を持たれているかもしれませんが、そんなことは思わないですよ。とにかく事実を淡々と撮るしかない。仮に負けた時でも負けたなりの仕上げ方もありますから」と返答した。

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原一男監督と赤松さん

 劇中で印象に残ったシーンを尋ねられた佐藤さんは、「わたしは主人が苦しんでいるところですね。主人が亡くなる一週間くらい前に、弁護士さんから撮影をさせてもらえないかと言われて……。本当にしたくなかったけど……」と述懐。しかし国を相手に戦っていくためには、「苦しい」と口で言うよりは動く映像で示さなければいけないのではないかと思い直し、撮影を許可することに。「この苦しんでいる映像はわたしの宝物になりました。娘とも長い間、いっぱいケンカしました。どうしてママはパパの苦しいところを出すんだと。でも娘にも苦しいところを見てもらわないといけない。口ではいくらでも言えますから。今では出して良かったと思いますよ」と語る佐藤さんに、原監督も「撮らせてくれた人は他には誰もいなかった。一番つらいところをさらけ出していいよという決断は勇気がいることですから」と佐藤さんの決断を称賛した。

 また、同じく夫を亡くしている赤松さんは、「夫婦で仲良くいられるのが一番しあわせです。今、ひとりになってよくわかりますわ。スーパーでご夫婦を見かけると、わたしらもそんな時があったかなと思うけど……。年をとるほど、2人でいられることはしあわせなことだと思います」と絞り出すように語り、涙ぐむひと幕もあった。(取材・文:壬生智裕)

映画『ニッポン国VS泉南石綿村』は渋谷のユーロスペースほかにて上映中

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