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ブラック・ライヴズ・マター運動を題材にした映画、重要なのは語り合いたいと思わせること

役にのめり込み過ぎてしまったという主演のアマンドラ・ステンバーグ
役にのめり込み過ぎてしまったという主演のアマンドラ・ステンバーグ

 ヤングアダルト小説「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ」を映画化した『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ(原題)/ The Hate U Give』の完成を受け、主演女優のアマンドラ・ステンバーグ、著者のアンジー・トーマス、そしてジョージ・ティルマン・Jr監督が、6月4日(現地時間)、ニューヨークのジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターで開催されたBookConで語った。

【作品写真】アマンドラ主演作『エブリシング』

 本作は、近年アメリカを騒がせている「ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter)」(黒人差別を批判するスローガン)運動を題材にした物語。黒人の低所得者の多い町に住む16歳の少女・スターは、裕福な白人が多い私立高校に通い、態度や言葉遣いを地元にいるときと使い分けていた。ある日、幼なじみの少年カリルと地元のパーティーに参加した帰り、武器も持たないカリルがあらぬ疑いをかけられ目の前で警官に銃殺されてしまう。彼女はカリルのために立ち上がることを決意する。

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 主演のアマンダは役にのめり込むあまり、感情をコントロールできなくなってしまったことがあったそうで、「カリルの死は(スターにとって)実際に起きた事件でもあって、いかに彼の死が家族に災いをもたらしたかを知っているし、彼に関する動画を何度も観ていたの。演じているうちに、その事実と自分の演技の区別がつかなくなるほど入り込んでしまい、ジョージが『カット』と言っても、感情を通常の状態に戻すことがすぐにできなかったのよ」と撮影を振り返った。

アンジー・トーマス
著者アンジー・トーマス

 原作者のアンジーは、大学4年生のときに本作のアイデアを思い付いたそうだ。「当時わたしは、同じミシシッピ州にある二つの全く別の世界に住んでいたの。一つは暮らしていたほぼ黒人が住む地元、もう一つは通っていた白人中心の私立大学。家に帰るときは、トゥパック・シャクールの曲を聴いていたけれど、白人の居住区に入るとジョナス・ブラザーズの楽曲を聴いていたわ」と語る。まさに原作の主人公のような生活を送っていたのだ。

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 だが、ある日、カリフォルニア州オークランドでオスカー・グラントという黒人の若者が殺された事件を知る。「あの事件は、わたしの住んでいる場所から何千キロも離れた場所で起きたけれど、大学でも話題になるほど影響力があったわ。オスカーはある意味で、どこにでもいるわたしたち黒人の中の一人だったのよ」。同事件にフラストレーションを感じたアンジーは、短編を執筆し、人種差別から起きた別の事件と自身の体験談を基に長編小説を書いたそうだ。

ジョージ・ティルマン・Jr監督
ジョージ・ティルマン・Jr監督

 原作はヤングアダルト小説ではあるが、年齢の枠を超えた普遍的なメッセージが本作には込められているとティルマン・Jr監督は語る。「本作の鑑賞後に、誰かと話したいと思わせることが重要なんだ。警官の暴力についてでも、人種差別についてでも良いんだ。友人関係や家族構成など、たとえ映画内の家族の住んでいる場所に観客が住んでいなくても、自分の家族と照らし合わせてみることができる作品だと思うよ。主人公スターの家族は、次の段階へ進むためになんとか乗り切ろうしていて、それは誰もが共感を持てるものだからね」。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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