子ども映画プロジェクトを若手育成支援の場として活用!

映画で何ができるのか

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講師、インターン、子どもたちみんなで記念撮影。

 全国で子どもの映画制作ワークショップが盛んだ。神奈川県川崎市では地域連携や活性化など、福島県双葉郡広野町では復興支援などの目的で小・中学校の授業で映像制作が行われている。いずれも制作を行う子どもを対象としているが、東京・池袋の生涯学習施設「みらい館大明」では青少年を講師やスタッフとして積極的に参加させることで若手育成支援の場としても活用している。彼らにとっても新たな発見と成長の場となっているようだ。(取材・文:中山治美)

春・夏休みを利用した子ども映画プロジェクト

 JR池袋駅から徒歩約15分。静かな住宅街の中に、池袋子ども映画プロジェクトの会場である「みらい館大明」がある。

映画教室・映画祭会場は東京・池袋の「みらい館大明」。2005年に廃校となった豊島区立大明小学校の跡施設を、生涯学習施設として活用されている。

 同所は2005年に統廃合された豊島区立大明小学校の跡施設を生涯学習施設として活用しており、2012年からは毎年、春・夏休みなどを利用して小学生から高校生を対象とした池袋子ども映画プロジェクトが行われている。主催は豊島区と特定非営利活動法人いけぶくろ大明で、東京子育て応援事業だけでなく、豊島区若者支援事業のサポートを受けている。

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1月27日に開催された第3回みらい国際映画祭。

 そしてプロジェクトのメンバーは、講師のTVディレクター・舞台演出家のタナカ・リョースケと演出家・助監督の中村幸貴をはじめ、ボランティアスタッフも映像を学ぶ大学生や専門学生など20代が中心だ。

 同プロジェクトのコーディネーターを行っている松井走馬さんは「指導する側も、自分たちが学んだことを教えることでさらに知識を深めることができるという効果があると思います。また一度映画業界に入ったものの、過酷な労働条件も重なってこのまま仕事を続けようか悩んだけど、子どもとの映画作りを体験して、“やっぱり自分は映画が好きだったんだ”と改めて気付いたという人もいます」と、この7年の成果を語る。

映画制作による若者への就労支援や地域交流にも貢献

どのように撮ればいいのか、ただ今煮詰まり中。大人スタッフはあえて時間を与えて静閑。

 一言で“若者支援”と言っても、貧困や就労など施策の幅は広い。特に2000年代に入って引きこもりやニート、不登校など若者を取り巻く環境の悪化が社会問題として取り沙汰されるようになり、政府も平成21年(2009年)に「子ども・若者育成支援推進事業」を制定。地域社会でネットワークを作ってこの問題に取り組んでいくことを推進するもので、豊島区でも力を入れている。

クランクアップの瞬間、子どもも大人も大喜び。

 それが先に触れた若手支援事業で、いけぶくろ大明内のには若者の“居場所づくり”として、豊島区といけぶくろ大明の協議で元図書室を活用したブックカフェも開設された。本をきっかけに「つどう」「つながる」「やってみる」を主軸とし、若者の実践の機会をサポートしている。子どもたち映画プロジェクトもその一つで、若者たちのやる気スイッチを刺激し、かつ地域や子どもたちと触れ合うことで社会性の形成を図る狙いもある。

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編集作業をするスタッフに興味津々で近づいてきた子もいた。

 「実は一度、子どもが集まらずもう終わりにしようか、と考えたこともありました。でも隣の練馬区に引っ越ししたはずの男の子が、月1回行っている“映画の日”(子ども映画プロジェクト用の脚本作りワークショップ)になると開始時間の朝9時にブックカフェで待っていたんです。『きょうは映画の日でしょ?』って。この子一人のためにも子ども映画プロジェクトを続けようと思い、今に至っています」(松井さん)

反省会を行う大人スタッフたち。日々、自分たちにも“気づき”がある。

 2018年夏に行われた子ども映画プロジェクトには、映画を専門としていない大学生4人がインターンとして加わった。彼らは教員や社会教育主事の資格取得を目指しており、同プロジェクトへの参加はれっきとした実習だ。彼らに託されたのは、子どもたちのケア。特に2018年は猛暑で熱中症対策は必須だった。

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 子どもたちはそれぞれ監督や録音、撮影など役割を与えられてはいるものの、集中力が途切れて遊びはじめる子どもも出てくる。何よりけがを負わせるような事態は禁物だ。プロジェクトの4日間、彼らは子どもたちの動きを追いながら「自分が今、子どもたちのために何をすべきか?」と向き合った。

子どもたちの映画ポスター制作を見守るインターンの生徒たち。

 東京学芸大学教育学部の岸野美穂さんは「最初は全然、子どもたちに近づけないし、想像以上に子どもたちがパワフルでついていけなかったりしたのですが、最後の頃には遊びに誘ってくれるようになりました。何より完成した映画を観ている子どもたちの満足そうな笑顔を見て、参加して良かったという達成感がありました」と言う。

 学習院大学の山本愛衣花さんは「わたし自身が映画の知識も何もない状態で参加して、自分がどう動いたらいいのか分からず、2日目ぐらいまでずっと悩んだ」と言う。だがその時に気付いたのが、同じように手持ち無沙汰にしている子どもたちの姿だった。「自分も同じような立場だったので『だったら遊んじゃおう』という子どもの気持ちがよくわかった。そういう子どもに興味を引かせるにはどうしたらいいのか、どうやって声をかければいいのかを考えるようになり、子どもとの接し方がすごく勉強になった」と語る。

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新たな発見と成長の場となる子ども映画制作

 岸野さんらインターンの4人の名前がエンディングロールに「児童対応」としてしっかり刻まれた短編『手紙がつないだ夏』は、先ごろ開催された第3回日本こども映画コンクール(主催:毎日映画社、毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社)で審査員特別賞を受賞するという朗報があった。

編集したばかりの作品をみんなで鑑賞。いい表情している!

 そこで急きょ、同じく みらい館大明で1月27日に開催された第3回池袋みらい国際映画祭でも上映された。同映画祭もまた豊島区若者支援事業の一環で行われており、若手映像作家の支援を目的にコンペティション部門が設けられているだけでなく、当日の運営や進行もボランティアスタッフなど若手が中心だ。

4日間ですっかり打ち解けた様子。名残惜しく、子どもたちを見送るインターンの生徒たち。

 その一人、広報担当の前川香澄さんはIT関連会社に就職したものの、同映画祭を手伝っているうちに、元来の映画好きが焚き付けられ、映画業界への転職を目指して、昨年10月から映画の専門学校に通い始めたという。将来像が見えないという若者が増えている今、ここには前を向いて歩き始めた人が多数いた。

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子ども映画プロジェクト2018~秋~『オタ×イケ』の脚本・すずきまゆこ(写真左端)、監督・脚本のほしのけい(写真中央)からの率直な感想に苦笑いするプロジェクト・コーディネーターの松井走馬。

 ちなみに同映画祭では、昨年秋の子ども映画プロジェクトで制作した『オタ×イケ』の上映と、監督・脚本を務めたほしのけい、同じく脚本を担当したすずきまゆこが質疑応答に応じた。観客から「大人と一緒に映画を作って良かった点と悪かった点は?」と問われると、2人は声をそろえて「悪い点は腐るほどある」「休憩時間に必ずタバコを吸いに行くので、戻ってくるとタバコ臭い」と実に率直で忌憚(きたん)のない感想を述べた。これには、講師陣全員苦笑い。SNSでのつながりでは得られない、実際に触れ合ったからこそ互いから学ぶこと、教わることが多々ある。子ども映画制作は、人と交流することの意義を実感させてくれるのだ。

・みらい館大明公式サイト http://www.toshima.ne.jp/~taimei/

・池袋みらい国際映画祭公式サイト https://miraifilmfes.tokyo/movie

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