『アリータ』オスカー俳優クリストフ・ヴァルツが語る、役者としての「姿勢」

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大作でも姿勢は変わらずクリストフ・ヴァルツ

 映画『アバター』(2009)のジェームズ・キャメロンが製作・脚本を務め、ロバート・ロドリゲス監督が最先端のVFX技術を駆使して日本の人気コミック「銃夢」を実写化したアクション大作『アリータ:バトル・エンジェル』(全国公開中)に出演するクリストフ・ヴァルツが初来日。2度のオスカーに輝く俳優としての姿勢を聞いた。

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 「実は明日、東京観光のツアーを予約していてね。今から楽しみでワクワクしているんだよ」。これまでクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009)と『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)で2度のアカデミー賞助演男優賞に輝く名優は嬉しそうに笑う。『イングロリアス・バスターズ』で演じた冷酷なナチス軍人のイメージも強いが、目の前に座る姿は静謐そのもの。その温和な雰囲気は、本作で彼が演じた、主人公アリータをガラクタの山で見つけ、父親のような愛情を注ぐサイバー医師イドに通じるものがあり、本人も「イドは、実はとても演じやすかったんだ」と語る。

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 「この映画の設定は未来で、現代とはまるでかけ離れた世界に見える。でも、イドがアリータに対して持っている感情は、とても純粋な、娘を思う父親と同じ物なんだ」。自身も3人の娘の父親であるクリストフは、実生活での経験をこの役柄に強く反映させた。「例えば、戦いたがるアリータのことをイドが心配する気持ちなんか、世の中の父親が普通に持つ感情だと思う。君たちのお父さんだって、君らがティーンエイジャーの頃はそうだったんじゃない?」とほほ笑んだ。

 冷血なナチスから、温厚な医師まで変幻自在に演じるクリストフだが、役づくりの姿勢はすべての役に共通している。「ゼロから役を作り出したことは、一度もない。この映画のイドは父親としての自分の経験を反映させたが、悪役を演じるときだって、ゼロからつくることはないんだ。自分の中に存在する何がしかの要素を、役柄に近づけるように育てていく。だからこそ、キャラクターに人間らしさが出るんだと思うよ」

クリストフ・ヴァルツが表現する父親としての愛情が、作品に深みをあたえる (C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

 現場でも、監督の演出に異議を唱えたりすることは滅多にないのだそう。「いろんな俳優がいて、監督の演出に対して対立する俳優だってもちろんいるけど、僕はそのやり方は好きではない。監督が頭の中に思い描いているビジョンにいかに近づけるかが、僕ら俳優の仕事だからね。『アリータ』のロバートは、俳優の演技をとても信頼してくれる監督だから、こちらからもアイデアを出すこともあったし、彼もそれをきちんと受け止めてくれた。でも、彼が出す演出プランに口を出したことは一度もない」と役者論を語ったクリストフ。「そもそも、そういうことをする役者って、だいたいパフォーマンスでやっているように思えるんだけど」と皮肉たっぷりに笑う。

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 世界的に名を馳せた『イングロリアス・バスターズ』に出演したときは53歳。オスカーを手にするまで、着々と経験を積んでいた。「映画に出演するまでは、大小問わずひたすら演劇に出ていた。演劇で積んだ経験は自分のキャリアにとってとても大きなものだったと思う。脚本を読む力がついたこともその一つだね。『アリータ』もそうだったんだけど、僕は脚本を読むまで出演を決めないんだ。この作品のように大きなプロジェクトだと、最近は、脚本を家に送ってきたりはしない(笑)。リークされないようにね。それでも、スタジオまで直接出向いて、かなり時間をかけて脚本を読ませてもらった。どんなに大作でも、監督が有名でも、それは変わらないんだ」

 2度のオスカーを彼にもたらしたタランティーノは、ロドリゲス監督の親友でもあることは、ハリウッドでは有名な話。つい、二人の演出方法の違いを聞いてしまったが、「みんなやっぱり聞くんだよね。だから、この質問には結構イラッとしちゃうんだけど」という答えが返ってきた。直後、こちらの怯えを察したように「いやいや君のことを責めているわけじゃないんだ。みんなが聞きたいのもわかるからね」と笑いつつ、「二人は確かに親友同士だけど、監督としてはそれぞれ全く違うってことをわかってもらいたいんだ」と説明する。「クエンティンとロバートは、現場での立ち方もまるで違う。クエンティンは常にエキサイトしてるけど、ロバートは非常に静かで冷静に演出するタイプ。それにロバートは、VFXについて本当に勉強していて最新技術をどんどん取り入れるから、そういう面でもオールドスクールなクエンティンとは大きな違いがある。だから、比べたりできないし、二人とも非常に優秀な監督であり、僕はとてもリスペクトしているんだよ」

 思慮深く、役者としての経験を交えながら、作品、監督への真摯(しんし)な思いを語るクリストフ。彼が演じるイドの存在は、ロドリゲス監督ならではの迫力満点なアクションが展開する『アリータ』に、観るものの感情を大きく揺さぶるヒューマンドラマとしての深みをもたらしている。(取材・文:森田真帆)

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