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綾野剛、孤独であることの本質を語る

その視線に射抜かれる……。
その視線に射抜かれる……。 - 写真:日吉永遠

 吉田修一による原作「犯罪小説集」に収められた短編を、『64-ロクヨン-』シリーズの瀬々敬久監督が映画化した『楽園』で、事件の容疑者で、孤独を抱えて生きる青年を演じた綾野剛が、“孤独であること”について語った。

【場面写真】孤独をにじませた視線が切ない……

 この映画で綾野は、孤独の中で心を閉ざし、悲劇的運命をたどる青年・豪士を鬼気迫るさまで演じるが、「僕自身、孤独を感じるのは当たり前だと思うんです。常に孤独に安定していますが、それは創作的な状態でもあって。何かを壊すにも生み出すにも、孤独はいいエサになっている気がします」と孤独をポジティブに捉えている。それは俳優としての経験に由来し、「よ~いスタート! と芝居が始まったら誰も助けてくれないし、オッケー! をもらったらそのまま世にさらされて歓声と罵声を浴びる対象になる。それは、圧倒的な孤独です」と俳優業の孤独さについて言い切った。

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 「孤独を感じるのは、人に愛された経験があるからこそ」だと訴える。それだけにごまかしたり別の何かとすり替えたりする必要はないと言い、自身も「孤独は孤独のまま捉えます。僕は器用じゃないので」とあくまで潔い。周囲から抜きんでた存在であるスターと呼ばれる人に孤独はつきものなのかと思うが、「そういう人は周りに誰かがいて、自分を照らしてくれていることに気づいていないだけだと思います。僕はスターじゃない。役者ですから、そんなふうに感じたことはありませんけど」とかわしてみせた。

 あくまでも、俳優として映画づくりに参加するつくり手の一人、という意識の強い綾野。だからこそ、「一人では何も生み出せない、発想するのもたかが知れていますから」という姿勢でモノづくりに取り組んでいる。「自分より有能なプロデューサーが山ほどいるから」と自らその役回りを直接担うことはなくても、信頼するプロデューサーとときに二人三脚、「こんなのやりたい、あんなのやりたいと素人の考えかもしれませんが、伝えることは惜しまずやります」と何かをゼロから生み出すことに積極的であるのは確かなようだ。

 一方で綾野は、どこか軽々とその瞬間を生きているようにも見える。実際に彼は、街を歩いていても心がオープンであるようで、「小説でも人でも、輝いているモノをすぐに発見することがよくあります。それで全然知らない人に声を掛けたりして」と笑う。その姿はもちろん、『楽園』で見せた豪士としての孤独な横顔とはほど遠い。孤独であることを当たり前に引き受け、開かれた心を持ち続けてモノづくりに真摯に取り組む俳優としての彼の素顔が垣間見え、彼が多くのつくり手に求められるのも当然に思えた。(取材・文:浅見祥子)

映画『楽園』は10月18日より全国公開

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