修正指示を拒否し助成金を返還 釜ヶ崎の現実を映す『解放区』監督の信念

「後世にとって、とてもいい資料」酒井隆史氏と太田信吾監督

 17日、大阪・釜ヶ崎に流れ着いた若者の姿をドキュメンタリータッチで描いた映画『解放区』が、京都市で開催中の「京都国際映画祭2019」内で上映され、都市研究学者で大阪府立大学教授の酒井隆史氏と、太田信吾監督がトークイベントに登壇。当初、助成金を得て作られた本作への行政からの修正指示と、それを拒否した経緯について語った。

【画像】映画『解放区』フォトギャラリー

 2014年に、映像制作者の支援と映像文化の発信を目的とした助成金の対象となり制作された本作。完成後は大阪アジアン映画祭での上映が予定されていたが、完成後に、大阪市(担当機関及び担当者)から、舞台となっている大阪市西成の釜ヶ崎(あいりん地区)の描写方法に対して修正指示が出る事態となり、太田監督はそれを拒否。映画祭での上映を辞退し、助成金も返還。2014年から5年の時を経て、ようやく公開を迎えた。

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 観客と共に映画を鑑賞した酒井氏は、「あまりにも衝撃的な内容で、話そうと思っていたことが全部吹き飛んでしまった。太田さん、あなたはすごすぎます!」と激賞。「脚本がよく(審査に)通りましたね」という酒井氏に、「僕もびっくりしました」と答えた太田監督は「でも、脚本も企画も通ってOKが出たにも関わらず、出来上がった後で修正依頼がきた」と説明。具体的な修正内容も「西成の描写やドラッグの描写、統合失調症という病気の描写、“どん底”という言葉もダメでした。この全てを修正したら、作品の意味がなくなってしまう。それでお断りすることにしました」と明かす。

 西成に通いつめ、西成の人々と暮らすことで上映許可をもらったという太田監督。酒井氏は「実は釜ヶ崎についてはいろんな映画が撮られているんですが、釜ヶ崎の中で撮られた作品はなかった。あと飛田新地なんかも絶対に撮れなかった。2001年だったら、すぐに怒られていましたよ。後世にとって、とてもいい資料になる」とその努力を絶賛。「西成の姿を見て、日本の人たちがどんな人生を、そして町の生き方をどう望むかが、釜ヶ崎の未来にかかってくる」と語った。

 トークショー後、太田監督に修正依頼を受けた時の印象を聞くと、「あまりにもレベルが低すぎる次元で、あきれ返りました。内容に対する検閲というのは時代遅れ。まず西成でドキュメンタリータッチにして現実を映しますということを主張して採択された結果ですし、脚本も提出していますからね。もう関わるのが嫌なので、助成金も返還しました」と経緯を説明。現在は韓国から助成金を得て映画製作をしているといい、日本との違いに驚いている。「日本だと年度末までに成果物を求めてくる。韓国は日本と違ってレシートもいらない。つまり成果物ではなく、映画製作のプロセスに対して(助成金を)出している。種を蒔くことにお金を使わせてくれるけど、日本は果実になったものに対して。成果物に対しては、監督自身が責任を持つべきで、その方がなおさらこちらも頑張ろうと思います。これからも助成金のありかたは追求していきたいです」と話していた。

 閉鎖された「あいりん労働福祉センター」など、数年前までのあいりんの姿を映し出した本作。太田監督が己の主義を守り通した本作への思いが届いたのか、上映後は多くの観客が監督のもとに駆け寄る姿が見られた。(森田真帆)

映画『解放区』はテアトル新宿にて公開中

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