若手監督の呼びかけで1億円集まる ミニシアター支援「これからが勝負」

小規模映画館支援するクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」ロゴ
小規模映画館支援するクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」ロゴ

 小規模映画館支援するクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」が、13日よりMotion Galleryで開始してからわずか57時間で1億円を達成。発起人の一人である映画監督の深田晃司(40)がインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大により政府から発令された緊急事態宣言に伴う自粛要請が続く中、この支援活動を行った経緯や可視化してきた映画業界の問題点について語った。

全国のミニシアターに呼びかけ、ヒアリング

深田晃司
「ミニシアター・エイド基金」発起人の深田晃司監督

 深田監督は5日、濱口竜介監督と共に「ミニシアター・エイド基金」の立ち上げを自身のTwitterで宣言した。4月20日時点で集まった金額は1億5,272万8,331円、コレクター(支援者)は1万4,433人。支援を受ける映画館は全国87劇場・74団体(16日時点)。新型コロナウイルスの感染拡大により、劇場公開作品が立て続けに延期されるなか、東京で発令された緊急事態宣言前後にはTOHOシネマズ、松竹マルチプレックスシアターズなど大手シネコンが臨時休館を発表し、映画館から客足が遠のいていくこととなった。深田監督が危機感を持つようになったのは3月末から4月頭にかけて。「SNSなどを通じて多くの劇場の悲痛な声が集まり始めたのがその頃で、これは本当に大変なことだと。まずは全国で100館ぐらいある小規模映画館に『ミニシアター・エイド基金』への参加を呼びかけ、経営状況をヒアリングするところから始めました」

 目標額は1億円だったが、この金額はどのように設定したのか。「ヒアリングをする中で、参加いただけるのが60館ぐらいになると予想し、それらの映画館が1、2か月は持ちこたえられるであろう金額が150万円程度と計算し、1億円としました。率直なところこれまでのMotion Galleryの最高額が7,000万円と聞いていたので、1億円でも大変だぞと思っていたのですが、ふたを開けてみたら3日で集まってしまった。ただ、現在は基金を立ち上げた4月頭よりもコロナの状況が悪化していてこの状況がどのぐらい続くのかも見えないので、これからです」

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自己責任に委ねられた自粛要請にジレンマ

ミニシアター・エイド基金
13日に開催された「ミニシアター・エイド基金」会見の模様

 13日には「ミニシアター・エイド基金」のキックオフイベントとして、濱口竜介監督、浅井隆(アップリンク代表)、斎藤工(俳優・映画監督)、渡辺真起子(俳優)らと渋谷DOMMUNEで無観客配信の会見を実施。中継をつないで全国のミニシアターの支配人が閉館の危機に立たされた状況を訴えた。深田監督が彼らの声を聞き最も深刻だと感じたのが、自粛要請が劇場の自己判断に委ねられている点だった。「閉めたら収入はゼロ。開けていても観客も5割から8割減。劇場に足を運びたいのはやまやまだけど感染が怖いから行けないという観客も多く、であればいっそのこと閉めてしまった方がいいのではないかというジレンマもあるようで、開くも閉じるも地獄という状況です」。会見から3日後の16日には緊急事態宣言が全国に拡大され、全国の映画館が休業を余儀なくされている。

映画業界の均衡を保つ公的機関の欠如

 また、深田監督は「これまで映画業界に常時あった問題をそのままにしてきたことへのつけを払う時がきた」とも話す。そこには日本では国家予算の中で文化予算が占める割合が少ない点、自国の映画の振興を支え映画業界の均衡を保つ公的機関がないことなどが挙げられる。

 「国家予算の中で文化が占める割合ですが、例えばフランスは0.87%、韓国は0.99%。日本は0.11%です。アメリカは0.04%と少ないんですけど、彼らの場合は民間から寄付を促す文化が根付いていて、寄付税制も充実しているから、民間からの寄付額が多いんです。日本はそのどちらも少ない。文化予算というのはアート系作品など商業性の低い作品を支えることで多様性を保ち続けるために本来はあるわけですから、その額が少ないと、そういった作品をかけるミニシアターの運営は必然的にギリギリの状況に置かれるわけです。フランスではCNC(国立映画センター)、韓国ではKOFIC(韓国映画振興委員会)という公的機関があって、フランスや韓国ではチケットの売り上げ(劇場の興行収入)から数%が差し引かれ、それが業界全体に分配されるシステムになっている。当然、シネコンチェーンを有する大手映画会社の方が差し引かれる額は相対的に大きくなるので、結果的に資金が業界を循環しインディペンデント映画など小規模な作品の制作や配給、興行が支えられることにつながります」(※数字は野村総合研究所調べ)

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映画館で観る映画がオリジナル

 現在、自粛規制の影響により、自宅でオンラインで映画を視聴する人が増えているが、そもそも劇場で観ることの価値はどんなことにあるのか。「自分が映画館に通い始めたのは中学、高校生ぐらいなんですけど、お金がなかったので多くはテレビで観ていましたし、DVDや配信サービスで鑑賞すること自体は全く問題ないと思います。ただ、映画監督に限らず、カメラマン、音響など映画製作者は映画館の音響環境で最高のポテンシャルが発揮できるように設計して作っています。ですから、まずは映画館で観てもらうのがオリジナルだと思っています。例えばですが、美術館のカタログにはたくさんの絵画が印刷され手軽に見られるので便利ではありますが、カタログがあるからじゃあ美術館はいらないとはならないですよね? 映画も同じで」

 ところで、本業である映画監督としての活動はどういう状況なのか。「今年は、来年の撮影に向けて脚本を書いたりする準備期間だったので個人的にはまだダメージはあまりありません。ただ、映画を作ったところでかける映画館がなくなってしまったら元も子もないので脚本のことは気になりつつも、ミニシアターの応援に力を入れています」と現状を話す。

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ミニシアターを守ることの意味

 集まった1億円は数回にわたって劇場に分配されることになっており、まず5月末に第一弾としてクレジット決済で入金された額、第二弾として後日、銀行振り込みなどで入金された額が支払われる。また支援のリターンには希望する映画館の未来チケット1枚 (2022年内有効)、参加映画館が予告上映時に上映する感謝映像に「●円サポーター」としてクレジット、有志の映画人から寄せられた100本以上の作品をストリーミング配信する「サンクス・シアター」から●本分をストリーミング再生(1年間)などがある(コースによって異なる)。

 深田監督は、全国の映画ファンに「とりあえず目標金額は越えましたが、まだまだ十分という状態ではありません。より多くのミニシアターに支援が行き届くようにさらなる応援をお願い致します。ミニシアターを応援するということは、ひいては映画業界を応援することですし、ミニシアターが失われることは社会にとっても大きなダメージとなります。もし近くに応援したい映画館がありましたらそのチケットを選んでいただいて、支えていただけたらと思います」と呼びかけた。(編集部・石井百合子)

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