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なぜ“おじさん萌え”のドラマがウケるのか?

左からムロツヨシ(1月撮影)、大森南朋(2016年撮影)、眞島秀和(2019年撮影)
左からムロツヨシ(1月撮影)、大森南朋(2016年撮影)、眞島秀和(2019年撮影) - Photo by Sports Nippon/Getty Images/ゲッティイメージズ(大森南朋)

 最近、テレビドラマを観ていると、“おじさん”の存在感が半端ない。しかも、ひと昔前のような煙たい存在ではなく、若い女性の心をくすぐる“癒やし系”として描かれているのだ。本日より放送開始の「おじさんはカワイイものがお好き。」(読売テレビ・日本テレビ系、毎週木曜日23時59分~)でも、俳優の眞島秀和がカワイイものを愛でる“イケオジ”を演じることが話題となっているが、今なぜ、癒やし系おじさんのドラマが受けるのか? 過去作品や現在放送中の話題のドラマをピックアップしながら、その魅力に迫りたい。

【写真】癒やされると大好評のナギサさん

 さかのぼること2003年、小川彌生の原作漫画を小雪松本潤主演でドラマ化した「きみはペット」(TBS系)が大きな注目を集めた。恋愛に不器用なキャリアウーマンがダンボールに捨てられていた年下の美青年を助け、やがて彼をペットとして共に暮らしていくという異色のラブコメディーだが、このぶっ飛んだ設定の物語が大反響を呼び、2011年にはチャン・グンソク主演で映画化され、2017年には入山法子志尊淳主演で再ドラマ化されている。やはり、癒やされるなら、若くて何でも肯定してくれるイケメンがいい……仕事や恋愛に疲れた当時のキャリアウーマンたちは、そんな思いをドラマに託していたのかもしれない。

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 ところが時代は変わって2019年。ドラマ「私のおじさん~WATAOJI~」(テレビ朝日系)では、50代の遠藤憲一が悩み多き新人女性ADを守る妖精(自称)を演じるという意表を突く設定が話題に。女性を癒やす存在が、美青年からいつしか“おじさん”に変わり、今年に入ってからもその流れは顕著に。四ツ原フリコの漫画に基づく「私の家政夫ナギサさん」(TBS系)ではヒロインをサポートする50歳のスーパー家政婦を大森南朋(48)、「親バカ青春白書」(日本テレビ系)では娘を溺愛するあまり同じ大学に進学する父親をムロツヨシ(44)、さらには「妖怪シェアハウス」(テレビ朝日系)では気弱で不器用な女子に喝を入れる妖怪ぬらりひょんを大倉孝二(46)がそれぞれ好演している。

 「きみはペット」から一体どんな変化が起きて、癒やしのポジションをおじさんに取って変わられたのか。例えば、久住昌之原作、谷口ジロー作画による同名漫画を松重豊主演でドラマ化した「孤独のグルメ」(2012~・テレビ東京系)。個人で輸入雑貨商を営む男がおいしそうなお店にひょいっと入って、ただひたすら食べるドラマだが、女子大生のようなかわいいコメントやおやじギャグが評判になり、2012年から2019年にかけて8シーズンにわたって制作されている。さらにその松重も出演した「バイプレイヤーズ」シリーズ(2017、2018・テレビ東京系)では、今は亡き大杉漣さんをはじめ日本を代表する名脇役が一堂に会するという画期的な企画が注目を浴びた。

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 そして、“おじさん”のワードで近年最も沸いたのが、おっさん同志の恋愛模様をキュートに描いた「おっさんずラブ」(2016、2018、2019・テレビ朝日系)。スペシャルドラマから連ドラへ、そして劇場版、新作ドラマも制作され、田中圭を大スターに押し上げるなど、もはやドラマの枠を超えて社会現象に。物語の面白さもさることながら、濃厚なキャラクターも人気を呼び、恋をすると乙女になる黒澤部長を大熱演した吉田鋼太郎は、“ギャップ萌え”おじキャラの火付け役となるべくキュートさに満ちあふれていた。

 おじさんといるとホッとする、そんな思いが自然と湧き起こる今日この頃。前述のように2020年はおじさんに癒やされるドラマが目白押し。時には体を張って外敵から守り、親友のように愚痴を聞き、同じ目線で青春を謳歌し、そして心の底から笑わせてくれる……。常に女性の心に寄り添いながら、大きな愛で受け止めてくれる“おじさん”の存在は、ストレス社会を生き抜くための、なくてはならない心のオアシス。「それなら、若いイケメンの方がドラマ的にはいいのでは?」と言われそうだが、そこが「きみはペット」の時代と違うところ。女性の社会進出や働く意識の深化にともない、自分を肯定してくれるだけでなく、場合によっては苦言も呈してくれる大人の存在が、何よりも大切になってきた証しとも言えるのだ。(坂田正樹)

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