日本のアニメーションの意義と目指す未来とは

第33回東京国際映画祭

 10月31日から開催される「第33回東京国際映画祭」(以下TIFF)の「ジャパニーズ・アニメーション」部門のプログラミング・アドバイザーに就任したアニメ評論家の藤津亮太氏が、今回上映されるアニメ・特撮作品の選定理由について、さらには日本のアニメーションが置かれている現状、未来について語った。

ポケモン父ちゃん?『劇場版ポケットモンスター ココ』予告編

 今年のTIFFの「ジャパニーズ・アニメーション」部門は、これまで同部門のプログラミング・アドバイザーを務めていたアニメ・特撮研究家の氷川竜介氏が任期終了となったことで、アニメ評論家の藤津氏が同部門のプログラミング・アドバイザーを引き継ぐことになった。今年のプログラムは、第一作から20年以上の時を経てなお進化を続ける『劇場版ポケットモンスター』シリーズと、生誕45周年を迎えたスーパー戦隊シリーズの特集、および2019年から2020年にかけて製作されたアニメ界話題の注目作が上映される。

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 今回のプログラムで、世界的人気を誇る『劇場版ポケットモンスター』を軸に据えようという方針はすぐに決まったという。「実はポケモン映画は、ここ2、3年特に注目すべき状況にある」と語る藤津氏。2017年には映画20周年を記念して『キミにきめた!』という、テレビシリーズ最初のエピソードをリメークした作品を作り、翌年の『みんなの物語』は、人間とポケモンとの関係性を考え直すことをテーマに作られた。藤津氏は「息の長いシリーズだからこそ、新たなファンを獲得し、今後も継続していくために、改めてアニメ『ポケモン』の魅力を、映画を通じてアピールしようとしているのではないかと思います」と注目の理由を説明する。12月に公開される新作『劇場版ポケットモンスター ココ』が『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』を手掛けた矢嶋哲生監督の二作目となることにも触れ「アニメ『ポケモン』を立ち上げ、支えてきた湯山邦彦監督に次ぐ新しい世代が登場してきたということも含めて、今こそ『劇場版ポケモン』を特集するタイミングだと考えました」とその意義を説明する。

 そのほか、期間中は『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『ぼくらの7日間戦争』『サイダーのように言葉が湧き上がる』『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』『どすこい すしずもう』と、特別招待作品として『ジョゼと虎と魚たち』『魔女見習いをさがして』なども上映される。このラインアップについて藤津氏は「特に去年から今年にかけては魅力的な作品が多かったので、選定に悩むことはなかったですね。入れるならもういくつか加えたいぐらいでした」と語る。

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 近年のアニメ作品の特色として、風景などの美術スタイルが進化を遂げていることが挙げられる。「一時期は写真を参考にした、精緻な背景美術というのが多かったんですが、今はそれがひと段落ついて、映画でやるなら新たなスタイルに挑戦しようという意気込みを感じさせる作品が多くなった」と語る藤津氏。例えば『サイダーのように言葉が湧き上がる』なら、80年代風ポップのテイストで田舎の風景をポップに描くというスタイル、『ぼくらの7日間戦争』は実際にある炭鉱をベースに、虚実織り交ぜて描くというスタイル。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、写実的なスタイルで架空の都市を描く、といった具合に、それぞれのスタッフたちが多様なスタイルに挑戦しているという。期間中は、そうした個々の作品の特色について解説するシンポジウムも開催されるので注目だ。

 世界的な人気を誇る日本のアニメーションだが、その現状については「ユニークな映像スタイルでいろいろな可能性は見えつつも、テレビなどでの大量生産のツケがまわってきて、足元が少し揺らいでいる状況」だと分析。「特にここ15年ほどはアニメーターの育成がうまくいっていないため、人材の層が薄くなっているという話はよく聞きます。これからどのように人材を育成して、人材にふさわしい対価を払うか。そうした体制を作ることは、未来のアニメ業界の全体の課題だと思います」と人材育成と体制拡充の大切さを指摘した。

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 その上で「日本のアニメは世界の人にとっては、異国の郷土料理みたいなもの。でも、それが好みに合った人にとってはとてもおいしく感じられる、そういうものだと思います。そういう意味で、世界各国の配信サービスがラインアップを組むときには、日本製のアニメも入れておこうかな、という候補にはなる」と日本アニメの世界での位置づけを語った。その点も含め、今回選んだ作品は「日本のアニメ表現の神髄というか、実はこんなにもデリケートな表現をやっているんですよ、ということが分かるものが並んでいると思います」と日本のアニメが何を描いてきたかをこのラインアップから感じ取ってほしいとメッセージを送った。(取材・文:壬生智裕)

第33回東京国際映画祭は10月31日から11月9日まで六本木ヒルズほかにて開催
「ジャパニーズ・アニメーション」部門の各作品はTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて上映

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