映画を10分でネタバレする「ファスト映画」 早期摘発で激減も問題山積み

一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の代表理事、後藤健郎氏
一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の代表理事、後藤健郎氏

 1本の映画を10分程度の動画にまとめ、結末を含めたストーリーをYouTubeなどで公開する、いわゆる「ファスト映画」(「ファストシネマ」とも呼ばれる)。これは著作権違反にあたり、ついに投稿者が逮捕された。今回の逮捕に至る投稿者情報開示に尽力したのが、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)だ。映画やアニメ、音楽など日本のコンテンツの海賊版問題に取り組む同機構の代表理事、後藤健郎氏にその経緯とファスト映画の実態、今後の課題について聞いた。

 この1年間に、少なくとも55のアカウントから2,100本あまりのファスト映画が投稿されたという。新型コロナウイルスの影響で、ネット動画視聴の需要がさらに拡大したこともあって、再生回数が数百万回に達した投稿も確認された。こうした状況にいち早く手を打つ必要があったことを、後藤氏は次のように説明する。

 「2020年くらいから、広告収入を稼ぐ目的のファスト映画が目立ち始めました。これは明らかな著作権侵害であり、犯罪です。例えば主観による感想などで、引用の範囲であればまだ容認できるでしょう。しかしコロナ禍で映画の興行が苦境に立たされるなかで、ネタバレをしたうえに、著作権を侵害し、お金儲けの手段にしていることは断じて許すわけにいきません。ですからアカウントが55の段階、比較的早期に摘発できたことは良かったと考えています。放置していたらさらに広がっていたと思います」

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 デジタルネットワークに絡む犯罪が広がるスピードは年々、加速している。2019年、人気漫画を無断で掲載した海賊版サイト「漫画村」の運営者が逮捕されたが、このケースでは、利用者が小学生の子供たちにまで広がってしまっていた。ファスト映画に関しては、何としてもその二の舞を避けたかったそうだ。例えばアカウントが1,000単位になると、もう手のほどこしようがないという。今回の事件の場合、宮城県警がサイバーパトロールによりファスト映画に該当するアカウントを発見し、弁護士やCODAが著作権者である映画会社との調整を行った上で、YouTubeの本社があるアメリカの裁判所に投稿者の情報開示を申し立て、逮捕につながった。その後、ファスト映画に該当するアカウントが55から13(6月28日時点)に減ったというが、現在残っている該当アカウントにも適切な措置がとられる予定だ。

 今回のファスト映画の氾濫に関して、CODAは映画業界の損失額を956億円相当と試算した。「55アカウントの総再生数が4億7,800万回以上です。1回の再生を、1回のストリーミング料金、200円相当とみなしました。本来なら、著作権者が受けるべき金額という考え方です」と後藤氏は内訳を説明する。

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 2時間前後の1本の映画を、わずか10分で観た気にさせるファスト動画がこれだけ広まった理由の一つは、大量のコンテンツを短時間でチェックする“習慣”にもありそうだ。後藤氏もその点を危惧する。

 今回は早期の対策が功を奏したが、この種の犯罪は著作権侵害のギリギリのところを攻めてくるので、新たなケースが繰り返されるのは間違いない。しかも、映画の劇場公開と同時配信という流れや、5Gの普及など、犯罪者側に有利な状況も生まれつつある。

 「作品がストリーミングされれば、その日にミラー(同一内容の海賊版)が作られているのが現状です。5Gでは、2時間の映画が1.5秒とか3秒でダウンロードできるので、さらに簡単になるでしょう。またこのところ、『鬼滅の刃』などの大ヒット作の影響もあって、海外の海賊版業者が日本のコンテンツを、海外の視聴者向けに作る動きがより加速しています。日本国内での規制が強化されたことで、海外のサーバーやドメインが著作権侵害に多く使われ、捜査が困難になっているのです」

 こうした事案にもCODAは先手を打って対処していく構えだが、結局はユーザー側の意識が重要だと、後藤氏は次のように訴える。

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 「安易な気持ちでの視聴は、著作権侵害を助長し、犯罪者の資金稼ぎに加担することになります。それは結果的に、映画産業に甚大な被害をもたらすことにつながるのです」

 違法動画が公開されることで、それが違法だと知らずに観てしまう人もいる。しかし、それが巡り巡って、作品を提供する業界を圧迫することにつながる可能性もある。違法動画をなくすうえで、いま改めてわれわれのモラルも問われているのだ。(取材・文/斉藤博昭)

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