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米津玄師「M八七」で歌うウルトラマンの孤独 庵野作品参加は「音楽人生の中で大きな祝福」

「M八七」をリリースした米津玄師
「M八七」をリリースした米津玄師

 数々のヒットソングを世に送り出すシンガーソングライター・米津玄師が手掛けた、映画『シン・ウルトラマン』の主題歌「M八七」(エム ハチジュウナナ)。製作陣からのオファーを「すごく光栄」と語る一方、歴史ある作品にして、初代ウルトラマンのテーマソングには強い印象があるため「果たして自分でいいのか」という葛藤もあったという米津。さまざまな感情が交差するなかで書き上げた楽曲に込められた思いを語った。

米津玄師「M八七」ミュージックビデオ

 企画・脚本を庵野秀明、監督を樋口真嗣が務める映画『シン・ウルトラマン』。庵野作品を子供のころから観ていたという米津は「劇場で観ていた『シン・ゴジラ』のチームが手掛けた作品。そんな作品の主題歌の話が、まさか自分に来るとは思わなかった。まさに青天の霹靂でした」とオファーに対する率直な心境を明かす。

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 1966年の放送スタート以来、55年以上にわたり、日本の特撮テレビドラマシリーズを牽引してきた「ウルトラマン」。その歴史は、米津にとっても軽いものではなく「初代ウルトラマンには、非常に印象的なテーマソングがありますし、正直、それでいいのではないのかという思いもありましたね」と正直な気持ちを告白する。

 なぜ、自分に声がかかったのか。「映画を見て、米津さんの感じたようにやってほしい」という言葉だけで、どのような曲に仕上げるかという葛藤をずっと抱えていたという米津。その一方で「『シン・ゴジラ』もそうですが、庵野さんの手掛けた作品はとても美しく、その世界観に自分が関わったとき、どういう音楽を作れるんだろうか、果たしてそこで美しいものが作れるんだろうか……という興味の方が強かったんですよね」と決意の理由を明かす。

最初のタイトルは「M78」

 大きなプレッシャーのなかスタートした楽曲作り。完成した映像もないなか、米津が大きな拠り所としたのが、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」など、初期ウルトラマンシリーズのヒーローや怪獣をデザインした、成田亨さんの存在だ。

 「今回の『シン・ウルトラマン』のコンセプトの一つが、成田さんの描いたウルトラマンの姿を再現すること。だとすれば、成田さんが描いたウルトラマンや精神性から、いかにイマジネーションを膨らましていくかが大切だと思ったんです。その意味で成田さんの絵を眺めながら曲を作るというのは、とても重要な時間でした」。

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 その作業は米津にとって、濃密であり、苦悩の時間でもあったという。「かなりの時間を要しました。僕は初代『ウルトラマン』をリアルタイムで観ていた世代ではないので、ウルトラマンとはいかなるものなのか……というところからスタートしなければならなかった」という米津は「すごく濃いファンもいる作品。そういう環境のなかで、なにを取り入れ、なにを取り入れないかということを丁寧に精査する必要がありました。これまでの中で一番大変だった気がしますね」と振り返る。

 そんななか完成した「M八七」。ウルトラマンの故郷がM78星雲であるだけに、ファンにとっては、タイトルも意味深いものに感じられるだろう。「最初、自分は『M78』というタイトルにしていたんです」と明かした米津は「すると庵野さんから『M78でいくのであれば、M八七のほうがいいのではないでしょうか』と言う言葉が返ってきて。最初はどういう意味なんだろう、と思ったのですが、調べていくうちに、そもそもウルトラマンの企画段階では、M78星雲ではなく、M87星雲だったと知ったんです」と明かす。

 「今回、成田さんのデザインした、カラータイマーのないオリジナルのウルトラマンを再現しようというコンセプトのもとに映画が制作されたという経緯があるならば、M87を採用するというのは妥当であり、この上ないタイトルだなと思ったんです」

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 さらに、米津が「ウルトラマンとはいかなるものなのか」という問いを突き詰めた、自身の答えとして「人間がウルトラマンの心情を推測するなんて、おこがましいことだと思うのですが」と前置きしつつも「ウルトラマンって超然とした存在だと思うのですが、孤独に、一人で痛みに耐えながら戦っている存在に感じられたんです。そんな部分を表現したかった」と曲に込めた思いを語った。

音楽人生への祝福

 明確な正解がないなか「ウルトラマン」という存在に実直に向き合った米津は「『シン・ウルトラマン』に関わったことは、自分の音楽人生の中で、大きな祝福だなと感じました。ある意味で、自分の人生を肯定してくれるような。いままでやってきたことが間違いではなかったと言ってもらえたような気分です」と総括する。

 さらに「今回の曲を作るにあたって、祝福の連鎖というのが自分の中で大きなコンセプトの一つだったんですよね」と続けた米津は「自分は幼稚園のころ『ウルトラマン』がすごく好きだったみたいなんです。でも、僕自身はその事実を覚えていなくて。周囲から好きだったよねと聞いてはじめて自覚したのですが、ウルトラマンが好きだったという事実はなくなるわけではない。当時、ウルトラマンから祝福を受けてきたんだと思うんです。その上にいろいろなことが折り重なって、今の人間性が作り上げられ、自分も大人になり今度は何を与えていけるのかと考えるんです。祝福を受けるべきものと、与えるべきものが対話しながら新しいものを生み出していく、そういう祝福の連鎖みたいなものを、今回の主題歌で表現したいなと思いました」と明かす。

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 50年以上の歴史を持つ「ウルトラマン」シリーズから祝福を受けた米津が紡ぎあげた「M八七」。この楽曲を聴いた人がまた、未来の人生の先に、想像し得ない祝福を受ける。米津にとってそんな“祝福の連鎖”が大きな喜びとなるという。(取材・文:磯部正和)

映画『シン・ウルトラマン』は全国公開中
シングル「M八七」は、PlayStationのCM曲「POP SONG」や「ETA」も収録
初回限定盤は「ウルトラ盤」「映像盤」「通常盤」の3形態で発売中

米津玄師 - M八七  Kenshi Yonezu - M87 » 動画の詳細
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