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実写「岸辺露伴」に警察が登場しないワケ 脚本・小林靖子が守りたいルール

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』より
映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』より - (C) 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 (C) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 荒木飛呂彦の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」「岸辺露伴は動かない」に登場する漫画家・岸辺露伴を高橋一生が演じたドラマシリーズのスタッフが再集結し、同原作者のフルカラー読切作品を実写化した映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(公開中)。同作並びにドラマシリーズの脚本、2012年に始まったテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のシリーズ構成も手掛けてきた小林靖子が、実写版「岸辺露伴」で貫くルールや、実写化におけるアレンジについて語った(※一部ネタバレあり)。

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実写化において守りたいこと

 特撮「仮面ライダー」シリーズやアニメ「進撃の巨人」、先ごろ反響を呼んだNHKドラマ「犬神家の一族」など多岐にわたるジャンルで活躍してきた小林。特殊な力“ヘブンズ・ドアー”を持つ漫画家・岸辺露伴(高橋一生)が担当編集・泉京香(飯豊まりえ)を相棒にさまざまな怪現象や事件に遭遇する実写ドラマは、2020年に第1期が放送されると反響を呼び、2021年に第2期、2022年に第3期と計8エピソードが放送された。ドラマシリーズでは版元の集英社を通して原作者・荒木の意見を聞きつつ脚本を進めたというが、映画版でもアレンジするにあたり重視したのが「『ジョジョ』っぽくない、荒木先生のテイストから外れたことはしない」こと。

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 「荒木先生の世界観の“おかしみ”を大事にすることはもちろんなのですが、警察が出てきたり、生々しく現実味のある描写は出さないようにしています。例えばドラマ1期の『くしゃがら』では冒頭、大学教授の変死事件が起きます。実際には事件現場に鑑識員とかが乗り込んできたり、パトカーが来たりするわけですが、荒木先生の世界観には似合わない気がして。『D.N.A』では病院が出てきますが、手術をしているシーンが出てきたりするのはちょっと違うのかなと」

 そして、岸辺露伴の最大の特徴である特殊能力“ヘブンズ・ドアー”。相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる奇妙な力だが、実写版では多くのケースにおいて露伴の能力が他者に知られていない設定となっている。

 「本になった人が周りから見たらどうなっているのかというのは曖昧にしています。あとは原作でもクリアには描かれていませんが、その対象と距離があってもできるようにしています。露伴から見えていればできるというか」

原作「岸辺露伴  ルーヴルへ行く」で惹かれた露伴の過去

青年期の露伴(長尾謙杜)と彼を魅了する奈々瀬(木村文乃)

 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では、露伴が決して見ても触れてもいけない「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追ってパリ・ルーヴル美術館に赴く物語が展開されるが、小林が特に着目したのが露伴の過去。物語の前半では、漫画家デビュー間もない青年期の露伴(長尾謙杜)と、彼に「黒い絵」の存在を教える謎めいた女性・奈々瀬(木村文乃)の出会いが描かれる。

 「面白いと思ったのは露伴の過去ですね。青年期の露伴と、露伴のおばあちゃんが出てくる。『ジョジョ』4部では家族がいたとしかわかっていなかったのが、実際におばあちゃんが出てきたことで血縁者がちゃんといるんだと。ちゃんと家族、先祖もいて空条承太郎(※『ジョジョの奇妙な冒険』の3代目主人公)たちみたいに、血のつながりのある人だったんだなあというのが新鮮でした」

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 青年期と現在の露伴、小林からはどう見えたのか。「青年期は純粋で、リアクションが素直な感じですよね。誤って女湯の浴室に入って慌てたり、編集者から“描く女の子がかわいくない”と言われたことをかなり気にしていたり。現在の露伴だったらありえないような言動、リアクションをしていて、そこもまた露伴の人間らしさを感じたところです」

 執筆にあたって難しいと感じたのが、その露伴に大きな影響を与える奈々瀬という女性の存在。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の物語は、露伴が奈々瀬を思い出すところから始まる。

 「映画では青年期から現在の間で二十数年経っている設定で、原作だともうちょっと若い。だから、もう少し奈々瀬の影響があってもいいかもしれないですけど、露伴の性格って持って生まれたものだと思うんですよね。作品においても、奈々瀬に原稿を破かれるところがありますが、それには理由がありますし、その作品を完成させていたら新たな才能を開花させたかといったら多分そういうわけでもない。でも昔の恋心を覚えてはいるし、引きずっているんですよね。割り切れないというか、露伴の中で好奇心を持ったとしても解決していない何かが過去にある。それが奈々瀬なのではないかと。杉本鈴美(『ジョジョの奇妙な冒険』4部に登場する幽霊の少女)のことはあるとしても、鈴美本人には謎がないので。彼の中で謎として一つ残っているのは奈々瀬なんでしょうね」

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~以下、映画のネタバレを含みます~

実写版ならではのもう一組の名コンビ

脚本を手掛けた小林靖子

 映画では「光を反射する鏡は人を映すけど、絶対的な黒が映すものは何か…」などのオリジナルの名ゼリフも多々登場するが、画的にも重要なモチーフになっているのが「蜘蛛」。原作では後半部分に登場するが、映画では冒頭で露伴が奈々瀬の記憶をよみがえらせる導入をはじめ随所に現れ、「黒い絵」の禍々しさを効果的に盛り上げている。「単純に雰囲気を出すためです。何か異物を映しておきたいという。原作にも蜘蛛が出てくるので、それを使ってちょっとした不穏感を出せたらいいなと。それをどう撮るのかは(監督の)渡辺(一貴)さんの判断ですが、意図としては不吉の象徴として出しました」

 ルーヴル美術館でのクライマックスなど、複数のキャストが入り乱れる場面では「役者さんの位置関係や動線の脳内シミュレーションに苦労した」というが、筆が乗ったのが実写版でたびたび登場する中村まこと増田朋弥演じるコンビのシーン。ドラマの1期「富豪村」では泥棒、2期「ザ・ラン」では不動産屋、3期「ホットサマー・マーサ」では広告マンとシリーズを通じて見られる。今回は初めて露伴邸ではなく外に登場する。

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 「楽しかったのは、お決まりの冒頭シーンですね。ネタを思いつくまでは毎回苦しいんですけど、決まるとスムーズに描ける。同じ役者さんが毎回違うキャラクターを演じてくださっていて、最初は露伴のキャラ説明を担っていたんですけど、2期の冒頭でも説明シーンを入れようという話になったときに渡辺さんが“じゃあ前のお二人をそのまま出しちゃいましょうか”と。ドラマでもおなじみのシーンとして楽しんでいただけるのではないかと思います」と期待を煽った。(編集部・石井百合子)

岸辺露伴のヘアバンド、残す?『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』人物デザイン監修・柘植伊佐夫インタビュー【露伴編】 » 動画の詳細
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