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『火の鳥』なぜ今「望郷編」映画化に挑んだのか STUDIO4℃が伝えるメッセージ

作品が伝える人類への警鐘とは『火の鳥 エデンの花』
作品が伝える人類への警鐘とは『火の鳥 エデンの花』 - (C)Beyond C.

 “マンガの神様”手塚治虫のライフワークにして、不朽の名作と称される「火の鳥」全十二編のうち、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」を初めてアニメーション化した『火の鳥 エデンの花』。その製作に尽力したSTUDIO4℃(スタジオ4℃)の田中栄子プロデューサーが、いま「火の鳥」を製作することへの思いを語った。

「火の鳥」望郷編をアニメ化!映画『火の鳥 エデンの花』特報

 『MIND GAME マインド・ゲーム』『鉄コン筋クリート』『海獣の子供』など、これまでエッジの効いた企画を実現してきたスタジオ4℃。手塚治虫の不朽の名作をなぜアニメーション化しようと思ったのだろうか。田中プロデューサーは「私たちは昔から王道ではないところで自由にやらせてもらっていましたし、そういうところでは、なかなか日本のアニメーション文化では受け入れられるものではなかったと思う。そのため初期の頃から、まずは海外で評価されて、それを日本に逆輸入するという形を意識的に仕掛けていきました」と振り返る。

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 「現代はどうしてもアニメ作品が消費されがちな時代なんですが、その中でもスタジオ4℃としては、映像作品として価値のあるもの、クオリティーの高いものを作って、後世にしっかりと残し続けたいという思いがあるんです。アニメーションって劣化しないんですよ」という田中プロデューサーは、1995年に手掛けた初の本格的な自社作品『MEMORIES』を例にあげ、「今観ても驚くべき作画力があるなと思いますしね」とその思いを語る。

(C)Beyond C.

 アニメ、実写、舞台など、これまで幾度にもわたって映像化されてきた「火の鳥」だが、本作のベースとなる「望郷編」は、初のアニメーション化作品となる。「スタジオ4℃で手塚さんの作品をぜひやりたいというのが始まりでした。手塚治虫さんはこれまですばらしい作品をたくさん作られてきたわけで、その中でもどの作品をやるのが一番いいのかと考えた時に、意外にも世に出ていないエピソードもあるなということに気付いたんです。その中でも、この『望郷編』はこれまで一度も映像化されてこなかった1本なので、ビックリしてしまった。その理由は原作を読むとわかるんですが、今の時代に映像化するのは本当に難しいエピソードなんですよね」。

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 そうした中で今回の作品は「望郷編」をベースに、「未来編」「宇宙編」のエピソードが巧みに織り交ぜて作り上げた作品となっている。「『望郷編』では、火の鳥が人類に対して警鐘を鳴らすわけですよね。今でもウクライナやパレスチナ、イスラエルなど、戦争がなくなることがないわけですし、地球の温暖化もそう。結局、地球という美しい生命体を破壊していく存在は、人間なのだ、ということをこの『火の鳥』の中で言っているんですよね。『望郷編』は特に地球が滅びていくことについて語られている作品なので。それがこの作品を作りたいと思った理由ですね」。

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 もともと手塚治虫が「火の鳥」の着想を得たのは、イーゴリ・ストラヴィンスキーのバレエ「火の鳥」を観劇したことがきっかけになったといわれている。『64-ロクヨン』シリーズや『夜明け告げるルーのうた』の村松崇継が手掛ける本作の音楽は、火の鳥の壮大さをたたえるかのようなスケールの大きいものとなっている。それゆえ本作では音響へのこだわりも強く、(会場全体を包み込むような音響システムの)Dolby Atmos 版の公開も決まっている。「(配給の)ハピネットファントム・スタジオさんが、映画館で観る価値のあるものにしたいということでDolby Atmos 版も作ったのですが、実際にできあがった音響で聞くと、全然違いましたね。映像が細かいところまで実に丁寧に作られているので、宇宙空間や惑星の姿が立体的に浮かび上がってくるという不思議な効果もありました。まさに皮膚感覚で映画をとらえることができるので、ぜひ両方聞き比べてもらえたら」。

 また、映画公開後の11月19日には、群馬の高崎芸術劇場で、およそ70名のフルオーケストラの生演奏と共に映画を上映する「シネマ・シンフォニー」も行われる。「これも、ものすごい迫力。一回きりのライブです。また違った形で映画を楽しんでいただけると思うので是非!」と田中プロデューサーも期待を寄せている。

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 最先端の映像技術が駆使されている本作だが、完成した映像は、どこか懐かしさを感じさせる。西見祥二郎監督が往年の東映動画をイメージしたとのことで、「『太陽の王子 ホルスの大冒険』とか『パンダ・コパンダ』のような、古き良き時代の東映動画のイメージで描いてみたかったというのはありますね。そういうところは、(キャラクターデザイン/総作画監督の)西田達三さんが本当に上手いので、そうしたテイストを出してくださっていました」と称賛。そして「最近のテレビアニメは、あまり動かさないというのがあるんですが、本作では(動画の)枚数をかけて、丁寧に動かしているので動きが非常にスムーズ。それもちょっと昔っぽい感じがする理由のひとつかもしれないですね。映像も音響も、本当にこだわりがたくさん詰まっているので、何度観ても新しい発見があると思います」とメッセージを送った。(※手塚治虫の「塚」は旧字体が正式表記)(取材・文:壬生智裕)

映画『火の鳥 エデンの花』は新宿バルト9ほか全国公開中

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