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Netflix「すべての見えない光」新星ヒロイン発掘の奇跡 ショーン・レヴィ監督が見出した光

「すべての見えない光」より
「すべての見えない光」より

 Netflixで配信中の「すべての見えない光」は、ショーン・レヴィ監督が、ピューリッツァー賞を受賞したアンソニー・ドーアの同名小説を映像化した全4話のリミテッドシリーズ。第2次世界大戦中、ナチスの占領下にあったフランスを舞台に、目の見えない少女とその父親、そしてナチスに無理やり入隊させられたドイツ人兵士のストーリーが交互に展開し、最後に交錯するという壮大なドラマだ。

Netflix「すべての見えない光」予告編

 「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や『ナイト ミュージアム』シリーズ、『フリー・ガイ』などで知られるレヴィ監督が、こうした歴史的なドラマを監督するのは初めてのこと。以前からドラマ作品をやりたいと考えていたといい、今シリーズにかける思いを配信開始前の会見で語った。

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 「原作を読んだときから強く惹かれたけど、(映像化の)権利を手に入れられなかった。それから待ち続けて権利を手にできるようになったとき、ドラマを作るチャンスだと思って飛びついたんだ。壮大でありながらとても親密でもある。多くの時代ものは美しいけど、形式的で、少しよそよそしくて冷たい。僕は、美しくて感情的な時代ものを作りたかったんだ」とレヴィは製作動機を語る。

 本作のキャスティングで大きな話題になっているのは、目の見えない主人公、マリー=ロールを演じたアリア・ミア・ロベルティ自身も視覚障害者で、これまで一度も演技経験がなかったということだ。

「アリアを見つけるのは、干し草の山から針を見つけるようなものだった」

 「アリアを見つけるのは、干し草の山から針を見つけるようなものだった。目の見えない主人公を、その経験を理解している人が演じれば、信ぴょう性が増して質の高い作品になることがわかっていた。それで公募をかけたら、すごい数のiPhoneで撮ったビデオや、テープが送られてきた。その中に、フルブライト奨学生で修辞学の博士号を取得中の女性がいた。彼女は、明らかに知的で力強く、光り輝く何かがあったんだ」とレヴィは振り返る。

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 アリアは、製作チーム全員に、視覚のない世界をナビゲートするのがどういうことかを教えてくれたという。「彼女は、これまでの視覚障害者の表現が、不正確で、子供扱いをしているようなことがよくあることを教えてくれた。例えば、アリアは屋根裏部屋で何年もすごす役を演じている。彼女は『もしここが私の家で、一人暮らしで、家具を動かすような人が誰もいなければ、部屋の中を移動するときに手や杖を使う必要はないわ』と言った。そういうふうに、毎日彼女が実際にどんな体験をしているのか、詳しく知ることができたんだ」。

 また、アリアへの演出も、レヴィ監督の普段の手法から大きく変わったという。「僕は話をする時によく身振り手振りや表情を使う。でも、そういうやり方は役に立たないことがすぐにわかった。簡潔に、表現豊かな言葉を選ぶ必要があった。僕たちがコミュニケーションをとるときに使うすべてのツールに敏感になり、最も効果的な監督になるために、他の筋肉を鍛える必要があったんだよ」。

 マリーとドイツ兵のヴェルナーには、子供の頃に同じ短波放送を聴いて育っていたという背景があるのだが、ヴェルナーは、疎開先で違法なラジオ放送を続けるマリーの居場所を見つけるよう上官に命令されてしまう。レヴィは、ヴェルナーを演じたルイス・ホフマンの演技も絶賛する。「彼は10代の頃から俳優をしていて、40歳代の俳優のような技能をすでに持っている。カメラの前では、演劇とは全く違う、控えめの演技でいいことを理解しているんだ。ヴェルナーは、一緒に孤児院にいた妹と引き離され、ナチスの軍事マシーンに放り込まれるけど、自分の内の善良さや人間性を守ると決意しているキャラクターだ。マリーとヴェルナーが悪に直面したとき、人間性をどう保とうとするのか、それが今作のテーマなんだ」。

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マーク・ラファロも出演

 キャストは他に、パリ自然史博物館の錠前技師だったマリーの父親役にマーク・ラファロ、父親の叔父エティエンヌ役にヒュー・ローリーと、実力派が揃っている。「エティエンヌは、戦争の英雄だったけど、第1次世界大戦で心に傷を負い、広場恐怖症のように家に閉じこもって生活している。僕たちはいつも、強さやスマートさを演技で表現するヒューを見ているけど、今作で、彼はとても傷ついた状態からスタートして、やがて回復する。彼がそういう演技をすること、そしてヒゲをたくわえたり、肉体的な変化にも興味を持ってくれてとても幸運だったよ」と、ヒューのキャラクター作りを毎日見るのが楽しみだったという。

 今作はハンガリーのブダペストでも撮影され、隣国のウクライナが侵略された際には、戦火が国境を越えて広がるかどうかわからないことがあったそうだ。「最も強烈な体験をしたのは、ドイツ軍の侵攻のためにパリを離れなければならない難民のシーンを撮影していたときだった。パリ市民を演じたエキストラの何人かは、実はウクライナ難民で、そのシーンと同じように、東からの隣人(ロシア)の侵略のために家を出なければならなかった。歴史と現代、フィクションと事実がどのようにエコーしあっているか、本当に深遠だったよ」。

 まさに歴史が繰り返され、心ならずもタイムリーな作品となったわけだが、アリアの初めてとは思えない素晴らしい演技のほか、かなりの予算をかけたと思われる豪華な美術や小道具、特撮などの映像美も大きな見どころになっている。(吉川優子/Yuko Yoshikawa)

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