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水上恒司、独立後「ようやくスタートラインに」 責任と充実感増す現在

水上恒司
水上恒司 - 写真:高野広美

 「ヤングチャンピオン」で連載中の、コミックの売り上げが累計発行部数650万部を突破する人気ヤンキー漫画を、品川ヒロシの監督・脚本で実写映画化した『OUT』(公開中)で、暴走族の副総長を演じた水上恒司。本作で水上はワイルドな強面ヒゲ面・金髪リーゼントの出で立ちで、初の不良役に挑んだが、これまで演じることの多かった好青年や正統派のイメージを壊す野心があったのか? 水上がその真意や、若くして個人事務所で活動する現在の心境を明かした。

【画像】24歳のきらめく美!水上恒司撮りおろし<13枚>

不良役に初挑戦も「新境地」は否定

映画『OUT』より安倍要(水上恒司)と井口達也(倉悠貴)(C) 2023『OUT』製作委員会

 原作は、品川監督の中学からの友人・井口達也の自伝がベースで、みずたまことが作画を手掛けた同名漫画。井口は、品川監督が自伝的小説を自ら映画化した『ドロップ』(2009)にも登場している。水上は、少年院出所後の主人公・達也(倉悠貴)が、地元から離れた新天地の千葉で初めてぶつかるも友人となる、暴走族「斬人(キリヒト)」の副総長・安倍要を演じている。野球の名門校で甲子園を目指した後、卒業して間もなく、2018年のドラマ「中学聖日記」で俳優デビューした水上は、今回の映画の世界観について「こんなにしょっちゅう喧嘩ばっかりしている人たちを、どちらかというと僕は避けてきたし、僕の生活になかった世界」と言いつつも、「男なら誰でも少しは悪ぶったり、不良に憧れる時期があるので、青春を取り戻した感じもしました」と微笑む。

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 不良役は自身にとって初めてだが、「実際の僕がどんな人間かはさておき、世に出ている僕のイメージがあり、それが独り歩きしていることは感じています」と自身を客観視しているだけに、出演依頼があったことには「ヒゲ面デカ男の安倍要という役を僕にやらせてみたいと、期待してくださった方々がいるわけですから、嬉しかったですね。それに応えたいと思ったし、大きなエネルギーになりました」と声を強める。そこで、以前から従来のイメージを壊すような役を演じてみたかったのではと聞くと、「イメージを壊したいと思っていたわけではない」と少し意外な答えが返ってきた。

 「僕も自分のことを決めつけたくないし、固まりたくない。世の動向は僕の考えでどうにかできるものではないし、止められない。その時々でいろいろ思うことはありますが、世間のイメージに抗うよりも、新たな自分の可能性や発見を常に開拓していきたい。それに一見、同じように見える役でも、自分の中ではむちゃくちゃ幅が広がったと思える作品が、過去にもたくさんありますから、どんな役でも自分次第なのかなと。いろんな役をやってみたい中の一環として、今回の役ができて良かったなとは思っています」と淀みなく答える。

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 今年放送されたフジテレビ月曜夜9時枠のドラマ「真夏のシンデレラ」も含め、男っぽさを前面に出したような役柄も増えており、役の幅の広がりを感じるが、「品川監督も撮影前に『水上って、こんな役もやるんだと、これから新たな(イメージの)役のオファーも増えるはず』とおっしゃっていましたが、キャスティングしてくださる方々の中では広がるのだろうとは思います」と自身の状況を冷静に見ている。

同世代のキャストたちと臨んだトレーニングに刺激

筋骨隆々のヤンキーに大変身!(C) 2023『OUT』製作委員会

 「ヒゲ面デカ男」の役とあって、体を大きくしたり、アクションの練習をしたりといった役づくりの努力や苦労もあったはずだが、「僕の卑屈さや若さなのですみません(笑)」と前置きしながら、「もちろん事前の準備や努力は必要でしたが、役者としては当然のことをしただけなので、詳しく明かすつもりはないんです」と役づくりの詳細は明言を避けた。とはいえ、体づくりやアクションの練習に1~2か月費やし、その間に品川監督や共演者たちとスポーツジムに通ったことは、刺激になったという。

 「品川監督は『よし、ジム行くぞ!』と、僕や倉悠貴くん、醍醐虎汰朗くん(「斬人」の総長・丹沢敦司役)、宮澤佑さん(暴走族「爆羅漢」の下原一雅役)などに声をかけてくれて、一緒に筋トレさせていただくこともありました。俳優が力まないようにという意図があったのか、そこで雑談のように、撮影シーンの意図や狙いなどを語ってくださり、俳優部としては撮影までに心の準備や思考する時間がいただけたので、そこから既に撮影や役づくりが始まっていたのかなと。僕はこれまで年上の方との共演が多かったので、クランクイン前から同世代の方々と関わり撮影に臨めたのは、品川監督のスタッフやキャストに全愛情を注いで取り組む姿勢に間近に接することができ、いい刺激になったからだと思います」

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 役づくりの一つとしては、ビジュアルを原作漫画に寄せることも無視できないと思うが、「それはヘアメイクさんや衣装部さんを信頼しています」と自身はあまり意識していない様子。俳優デビュー作の「中学聖日記」が、放送当時はまだ原作が連載中だったため、ドラマの結末はオリジナルとなったことから、「すべて原作どおり忠実にできるわけではない」と感じた経験があるようだ。原作者や原作ファンを大事に考えつつも、原作から変更したのがもみあげ。「原作ともみあげの長さが違うけど、むさイイ感じの実写ならではの要を作っていきました」とのこと。

独立後に増した、仕事に対しての責任感

写真:高野広美

 2022年8月をもって独立し、旧芸名である岡田健史から本名に改名し、活動を再開してから1年と少し。今回の『OUT』をはじめ、福原遥とのダブル主演映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(12月8日公開)や放送中の連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)など、続々と出演作が控える。「こんなにすぐにたくさんいい仕事に巡り合えるとは思っていなくて、できすぎです。足元を掬われないよう、遅刻しないように気を付けつつ、自分にできることをヒーヒー言いながら頑張ってます!」と、確かな手応えを実感している。

 独立後の変化については「もちろん以前も一生懸命やっていましたが、1個1個の仕事に対しての責任感が違う。でも、自分で自分の責任を持つという、当たり前のことをやり始めただけ。役者は、誰かにやらされてこなしていくような職業じゃない。ようやく役者としての至極当然のスタートラインに立ったと思っています」と責任の重みを噛みしめつつ、充実感が窺える。

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 「いろんな方々に支えていただきながら立っています」と最後まで謙虚な姿勢を崩さない水上は、独創的な絵を描くことでも知られ、2022年末には個展「水上恒司展 Inside the Headー若さ故の無秩序ー」も開催した。俳優業以外のフィールドで活躍の場を広げていく可能性について問うと、「そうですね。役者を辞めてもいいと思っていますので、自由にやっていきたいですね」と言うほど貪欲な姿勢。まだ24歳ながら、地に足をつけ浮ついたところがなく、静かな熱を感じさせる水上の活動から目が離せない。(取材・文:天本伸一郎)

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