ナム・ジュヒョクがダークヒーローに！韓国ドラマ「ヴィジランテ」は何が面白い？

　ディズニープラス スターで11月8日から配信をスタートさせた韓国ドラマ「ヴィジランテ」が人気だ。話題のウェブトゥーンを現在入隊中の超人気俳優ナム・ジュヒョクの主演で実写ドラマ化したアクションスリラーで、週2話ずつの配信は回を追うごとにヒートアップしている。ついに、最終話が配信された「ヴィジランテ」の一体何が面白いのか、あらためてひも解いてみよう。（文・前田かおり）※本文には一部内容に触れる部分があります。

【画像】ナム・ジュヒョクのクールな魅力さく裂！「ヴィジランテ」場面写真

「ヴィジランテ」とは？

　本作は、昼は警察大学の学生として過ごしながら、夜は法で裁ききれなかった犯罪者たちに自ら鉄槌を下す“ヴィジランテ”として生きる青年と、そんな彼にさまざまな目的を持って近づく人々を描くアクションスリラー。キム・ギュサム原作の人気ウェブトゥーンを題材に実写化し、大ヒットNetflixドラマ「スタートアップ：夢の扉」「二十五、二十一」で一躍注目されたナム・ジュヒョクが主演を務める。2023年3月に入隊し、現在兵役中の彼にとって、本作は入隊前の最後の作品だけに配信前から話題に。またこの秋、開催された第28回釜山国際映画祭のオンスクリーンセレクションにも正式出品されて大きな注目を集めた。監督は、青春映画『グローリーデイ』で4人の20歳の青年が世の中の理不尽な現実を目の当たりにする姿を描いたチェ・ジョンヨル。本作でも、ディープな青春模様を演出している。

あらすじは？

　警察大学に通うキム・ジヨン（ナム・ジュヒョク）は成績優秀で運動万能な学生。その上、真面目な性格で、担当のイ・ジュンオプ教授（クォン・ヘヒョ）からも一目置かれている。だが、幼い頃、目の前で一面識もない街のゴロツキに母親が殴り殺されるという悲惨な体験をしていた。しかも、その犯人は軽い刑で釈放され、今も暴力沙汰を繰り返していた。ある夜、その男がまたも誰かを襲っているところを見つけたジヨンは、男を捕まえると自らの手で制裁を加える。以来、週末の夜になると、重罪を犯しながらも軽い刑で釈放され、野放しになっている犯罪者たちをターゲットにして私的制裁を加えていく。

　警察は捜査を始めるが、手がかりをつかめずにいた。そんな中、報道番組「ルポ25時」の記者チェ・ミリョ（キム・ソジン）が、何者かが犯罪者たちを制裁していることに気づき、番組で“ヴィジランテ”と名付けて報道したことから、世間の注目を集めることに。ヴィジランテの捜査に行き詰まった警察は、ヴィジランテ担当の捜査チームを結成し、異様な外見やその腕っぷしの強さで“怪物チーム長”と恐れられる広域捜査隊のチーム長チョ・ホン（ユ・ジテ）が、ヴィジランテを追い始める。ヒーロー扱いされるようになったヴィジランテの人気は日を追うごとにエスカレートし、模倣犯が出没。ついには、ヴィジランテと同じ手口で犯罪者を制裁する偽ヴィジランテが登場し、ヴィジランテに「手を組もう」と提案してくる。

見どころは迫力満点のアクションと個性豊かなキャストたち

　まず注目したいのは、主人公キム・ジヨンを演じた、俳優ナム・ジュヒョクの高い身体能力と、その表情による演技力だ。普段は、警察大学で模範的な学生であるジヨン。成績優秀で、仲のいいクラスメートが週末クラブに誘っても、「勉強が……」と微笑みながら交わす。一見、真面目な学生だが、その表情の向こうにある本当の顔は全く見えない。このポーカーフェイスぶりが半端ない。

　ナム・ジュヒョクが注目されたのは、イ・ジュンギ、カン・ハヌルら若手イケメン俳優集結の「麗<レイ>　～花萌ゆる８人の皇子たち～」で8人の皇子の1人を演じたことから。大ブレイクすることになった「スタートアップ：夢の扉」では数学の天才だが、気のいい青年というキャラクターを好演していたが、本作で演じるジヨンは寡黙。そんなキャラクターの善良さとその裏の犯罪を憎悪する心情を、目や口元などを使い、多彩な表情で表現。特に、彼が見せる哀しい目は印象的だ。また、モデル出身で187cmという高身長に加えて、本作のために鍛えたという筋肉には無駄がない。そんな体から繰り出すキレッキレのアクションも、ヴィジランテというキャラクターに説得力を与えている。

　本作はヴィジランテを取り巻く個性的なキャラクターも見ものだが、その顔・姿を見て驚かされるのは、刑事チョ・ホン役のユ・ジテだ。ユ・ジテといえば、日本のコミックを原作にパク・チャヌク監督が映画化した『オールド・ボーイ』で知られ、『親切なクムジャさん』『美しき野獣』など映画作品を中心に活躍、ドラマはチェ・ジウと共演した「スターの恋人」、近作では「ペーパー・ハウス・コリア：統一通貨を奪え」の教授役が記憶に新しい。映画、ドラマを通じて、イケメン畑を歩んできたイメージがあるが、なんと本作では役作りのために20kgも増量。一見すると、まるでモアイ像のようなビジュアルで“怪物”と呼ばれるチョ・ホンの得体の知れない怖さ、凄みを体現する。その体で見せるアクションも重量級で、ヴィジランテとのバトルシーンも迫力満点だ。

　また登場するなり、観る者を釘付けにするのは、テレピ局の記者で「ルポ25時」を担当するチェ・ミリョ。真っ赤な髪で、コンプライアンスを気にする上司にもズバズバと主張し、取材を躊躇するスタッフたちには「OK!?」と言って念押しする。強引な手法も厭わず、報道の自由を盾にして、ヴィジランテの話題で世間を煽ることに、全く罪悪感も抱いていないという女性だ。演じているのは舞台出身のキム・ソジン。映画でも活躍しており、チョ・インソン＆チョン・ウソン共演の『ザ・キング』では検事役を好演し、百想芸術大賞、大鐘賞などその年の映画賞で助演女優賞を総ナメ。『モガディシュ　脱出までの14日間』『非常宣言』など話題作に出演しているほか、ドラマ「悪の心を読む者たち」ではサイコパスたちと戦う女性刑事を熱演している。本作では舞台で培った確かな演技とその存在感で、強烈なキャラクターにリアリティーを与えている。

　偽ヴィジランテであり、財閥3世のチョ・ガンオクを演じるのは、イ・ジュニョク。大ヒットホームドラマ「怪しい三兄弟」の末っ子役でブレイクして以来、さまざまなドラマで多彩な役柄を好演。近年では「秘密の森」シリーズの検事役で活躍。映画ではマ・ドンソク主演の『犯罪都市』シリーズ第3弾『犯罪都市 NO WAY OUT』（日本では2024年2月23日公開）で悪役を怪演し、韓国では一躍時の人に。そんな彼が、本作では「ヴィジランテのファンだ」と言ってヴィジランテに執着し、共に活動しようとする役どころを演じる。部屋にアメコミヒーローたちのフィギュアを飾っているあたりからは、純粋にヴィジランテへの憧れを感じせるが、一方で財閥グループの副会長だけに、どこか量り知れないところもあるキャラクターを絶妙に演じている。

　そのほか、ジヨンの担当教授のイ・ジュンオプ役をホン・サンス映画の常連で、数々のドラマで名脇役として活躍するクォン・ヘヒョ、ミリョの上司で報道部の部長に、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」や「今日もあなたに太陽を ～精神科ナースのダイアリー～」で活躍するイ・ソファンなど。人気の韓国ドラマで活躍する演技派たちが集結している。