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【ネタバレ】ドラマ「大奥」はオリジナルの名シーンがたくさん!全19巻に及ぶ物語が完結

第19回より天璋院(福士蒼汰)、家茂(志田彩良)、和宮(岸井ゆきの)、瀧山(古川雄大)
第19回より天璋院(福士蒼汰)、家茂(志田彩良)、和宮(岸井ゆきの)、瀧山(古川雄大) - (C)NHK

 疫病流行のため、男女逆転となった大奥200年にわたる長い歴史の物語。よしながふみの大ヒットコミックを実写化したNHKドラマ10「大奥」シーズン2が、ついに感動のエンディングを迎えた。奇跡といわれた江戸城無血開城と徳川の終焉までを描いた後半パート「幕末編」では、歴史が大きく動くとともに、大奥の存在そのもの、そこで生きる人間たちの関係も大きく変化。権謀術数に満ち、敵はおろか、ときに家臣や肉親でさえ信じられないような緊迫した場所から、血のつながりのない者たちが寄り添い、支え合う場所へ。大奥が皆にとってのホーム、“大切な家”になっていく進化の過程が鮮やかに描かれていった。ドラマオリジナルの演出、描写を中心に「幕末編」の魅力を振り返ってみた(※以下、最終回までのネタバレを含みます)。(文:石塚圭子)

【画像】サプライズの連続!最終回名場面集

かつて男たちが女将軍の寵愛を競った大奥が様変わり

陰間時代の瀧山と阿部正弘(瀧内公美)

 「幕末編」の語り手は、後の老中首座・阿部正弘(瀧内公美)に見出され、武家出身の陰間の身から、徳川最後の大奥総取締となる瀧山(古川雄大)。茶屋の一室で、花魁姿の瀧山は「ここを出たら、今度こそ己の翼で飛びたいってね。己のやりたいことをやって、己の向かいたい方へ向かっていくんです」と正弘に話す。その言葉が、男が家督を継ぐのが当たり前になった時代、兄が隠居しなければ、働きに出ることが叶わなかった正弘の心に響く。今いる場所から出て「己の翼で飛びたい」という瀧山のドラマ版のセリフは、以後「幕末編」全編を通して、常に通奏低音として力強く響き続けることになる。

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正弘と家定(愛希れいか)

 十三代将軍・徳川家定(愛希れいか)と正弘が、薩摩藩・島津家から正室を迎えるかどうかについて話し合うシーンもオリジナル。瀧山にとって、正弘が自分を陰間茶屋から救い出してくれた恩人であるのと同様に、家定にとっても正弘は、実父・家慶(高嶋政伸※「高」は「はしごだか」が正式)による性的虐待から救ってくれた命の恩人。ここで家定に無理強いはしたくないと婚儀をためらう正弘に、家定は「そなたのために将軍となった!」と言う。これと似た言葉は原作ではモノローグとして登場するが、ドラマでははっきりと口にするだけでなく、さらに「そなたが自在に空を飛ぶためにここに座っておるのだ、私は」と続けて、正弘を涙ぐませる。

見得を切る瀧山

 主君と家臣の関係は、家臣が主君を支えるだけではない。主君もまた家臣を手助けし、ともに空を飛ぶのだという家定の熱い思いが胸を打つ。この2人のやりとりをそばで見ていた瀧山は、大奥の男たち一同を前に「大奥はその昔、三代家光公(堀田真由)をお守りする最後の砦として作られたという。私たちが守るべきは上様! 徳川家定公! それをゆめゆめ忘れるな!」と弁をふるう。裃の背に描かれたお万好みの流水紋を見せ、「我らが大奥だ!」と大見得を切るシーンのかっこよさ。若い男たちが女将軍の寵愛を競い合った大奥は遠い昔、上様を守るという誇りを抱く“チーム大奥”がここに誕生する。

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将軍・家茂と和宮の性別も恋愛も超えた関係

家定と胤篤(福士蒼汰)

 十三代将軍・家定と胤篤(福士蒼汰)、十四代将軍・家茂(志田彩良)と和宮(岸井ゆきの)、将軍と正室である2組の夫婦の絆が描かれることも「幕末編」の特徴だ。政略結婚から両想いになり、真の夫婦愛を育んでいった家定と胤篤。大奥の歴史の中で、最も幸せなカップルだったといえる彼らに続き、図らずも女性同士の夫婦となった家茂と和宮は、性別も恋愛も超えた新しい関係性を築いていく。

 夜、寝所で家茂と和宮が2人きりで話をするシーンには、ドラマならではの演出も多い。中でも家茂が上洛するにあたって、和宮が家茂の長い黒髪を切るシーンは印象的だ。2人の儀式のような共同作業のシーンによって、家茂がどれほどの覚悟で上洛に臨んでいたか、そんな家茂を和宮が精神面でいかに支えていたかがよく分かる。

養子を迎える家茂と和宮

 江戸に戻った家茂が孝明天皇からの宸翰(しんかん※天皇直筆の手紙)を手渡すオリジナルのシーンも印象深い。江戸にいる和宮は自分の妹君だと書かれた帝の文を見せて、家茂は「宮様のためにいただいてきたのです! 宮様と一緒にいるために」と切々と訴える。和宮への確かな愛情の深さが伝わってくるシーンであり、この後、同性同士の2人は養子を迎えることになる。世継ぎ作りに苦しんだ先代の将軍たちを思うと、なんと大きな変化だろう。

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 天璋院が和宮に話す「大奥というのは不思議なところですよね。宮様はもちろん、上様と私も、あの者たちも、誰ひとりとして、お互い血のつながっている者はおらぬのです。他人同士が何の縁か肩を寄せ合い、ひとつ屋根の下に暮らしておるのです」というドラマ版のセリフは象徴的だ。複雑な家庭環境を背負うキャラクターたちが、恋愛や血縁の枠から解き放たれ、性別や立場を超えて新たなコミュニティを築いていく姿が描かれた本作には、現代にも刺さる大切なメッセージがこめられている。

最終回のこれ以上ない見事な大団円

 正弘や家定亡き後、瀧山と天璋院の間に友情が生まれる様子にも温かい気持ちになる。流水紋をあしらったそれぞれの裃を前に、天璋院から「悲しみばかりであったか? そなたにとって、大奥は」と尋ねられた瀧山が「いいえ……この上ない喜びも、出口の見えぬ悲しみも」と答える場面をはじめ、最終回には瀧山と天璋院のオリジナルのシーンがたくさん盛り込まれている。原作では、ひとり大奥に残った瀧山の決意に気づくのは部屋子の仲野(中川翼)だが、ドラマ版では天璋院に変更し、改めて2人の友情の強さを感じさせた。

 「私は鳥籠の中でしか生きたことのない男でございます」と天璋院に語った瀧山。物語のはじめ、陰間茶屋という鳥籠を抜け出し、大奥へやってきた彼だが、大奥もやはり小さな鳥籠であることに変わりはなく、最後は大奥の人々もそこから出て、己の翼で自由に羽ばたいていく。そして広い視野で見れば「日本」もまた小さな鳥籠であり、最終回ではその籠の扉も開いて、国民が海の向こうの世界に向けて羽ばたいていく……。そんな大きな流れが感じられる大海原の船上での清々しいラストシーンは、これ以上ない見事な大団円だった。

 全19巻の壮大な物語を、2シーズンのドラマにきれいに収めた脚本の森下佳子の手腕が光る「大奥」。とはいえ、原作コミックには、尺的にドラマには入りきらなかった魅力的なエピソードがまだまだたくさんある。またいつの日か、今度はより長いクールで原作を実写化したドラマも見てみたい、と願わずにはいられない。

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