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『ゴールデンカムイ』野田サトル、実写化に歓喜したキャラとは 完結を迎えた現在の思い【原作者インタビュー】

ついに実写化『ゴールデンカムイ』杉元役の山崎賢人
ついに実写化『ゴールデンカムイ』杉元役の山崎賢人 - (C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

 シリーズ累計2,700万部を突破する人気漫画「ゴールデンカムイ」が山崎賢人(「崎」はたつさき)を主演に迎え実写化。いよいよ映画の公開を迎えた原作者の野田サトルが、製作陣やキャストへの感謝と共に、実写化にあたってのこだわりと製作秘話、そして、連載を終え新連載に注力する現在の思いを語った。

実写『ゴールデンカムイ』場面写真(18点)

「原作を信じて」製作陣に伝えた言葉

「本当に山田杏奈さんで良かったなと感じました」

Q:「ゴールデンカムイ」の実写化企画を知った際のお気持ちを教えてください。

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これまでの漫画原作の実写化の変遷を見ていますと、全てをお任せしてしまえば、大きく異なった方向へ進んでしまいかねないという懸念がありました。

ですので、脚本には関わらせて欲しいと伝えましたが、原作の連載もありましたし、テレビアニメも同時に監修していましたし、「忙しくなるな」と覚悟しました。
実際に死ぬほど忙しくなりました。

Q:実写化をするうえで、特に大切にしてほしいと考えていた点を教えてください。

民具や道具は、出来る限り本物へのこだわりを大切にして欲しいと思っていました。
特に、アイヌのものは映画の小道具ではなくアイヌ工芸家のご協力のもとで本物を作ってくれたことは非常にありがたかったですし、工芸家のみなさん試写会を楽しんでいただけたようでした。

貝澤雪子さんというアイヌの着物を作られる伝統工芸家のご婦人も、映画館に行ったのは『寅さん』(『男はつらいよ』)以来だったらしくて喜んでおられたそうです。

ヒグマだとか狼も心配していましたが、しっかりしていましたので安心しています。
あとはアシリパさん(「リ」は小文字が正式表記)の役が誰もが納得できる可愛らしい役者さんであったこと。試写を見て本当に山田杏奈さんで良かったなと感じました。

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僕は脚本程度しか関わっておりませんので、あの映画の評価は、もう映画製作陣のこだわりと努力と愛情あっての功績であると思います。

Q:スタッフの方々に伝えた言葉で特に印象に残っているものはありますか?

「アイヌ描写について原作を信じてください。」ということですね。先日も、原作のアイヌ語監修であり実写でもご協力いただいた千葉大学名誉教授の中川裕先生と再会した際に、おっしゃっていたのですが「自分が知る限り『ゴールデンカムイ』を嫌いと言っているアイヌはいない」とのことでした。
若いアイヌの方たちにも非常に良い影響を与えていると。

もちろんアイヌルーツの方にはいろんなイデオロギーの方がいらっしゃいますのでいろんな反応、意見を目にすると思いますが、恥ずかしいものは描いていないのでどうか原作を信じて欲しいと久保監督にはお伝えしました。

先日、撮影にご協力いただいた方たちの試写会が札幌でありまして会場はアイヌルーツの方たちも多数いらっしゃったらしいのですが映画が終わったら、あちこちから拍手が起こったと聞いています。

映画と漫画、それぞれの良さ

Q:映画について「自分の中になかった良い点がたくさん」とコメントされていました。どういった点が良いと思われたか教えてください。

絵と映像ではやはり情報量が圧倒的に違います。
凝ったセットだったり、きれいな自然の風景ですとか、「良い大木を見つけたな」とか映画を観ていて思いました。僕もひとりで山に入って絵になる自然風景を探して撮影したものですから、そこは気になりましたね。
あとは映画としてのクライマックスが必要とのことで原作のアクションを大きく膨らませたシーンもありましたし。

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他にも色々ですね。事前にBGM無しの映像を見たことがあるんですが、完成版でBGMが当てられると、「こんなにも間が持つのか」と感心しました。
それはやっぱり映像作品ならではですね。

でもやっぱり予算的なものだったり倫理的なものだったりで映像で見せるのが不可能な部分もありますので、そこは自由に想像の限界まで描けるというのは漫画という媒体の負けていない一部分ではあるのですけど。

Q:徹底した取材に基づくディテールも「ゴールデンカムイ」の魅力です。実写化でもこだわった部分があれば教えてください。

主人公が持っている30年式の小銃(三十年式歩兵銃)はモデルガンも市販されていないのですが、かなりクオリティが高くて安心しました。
某大河ドラマの戦争シーンで使われた小道具の30年式小銃を見たことがありますが、ディティールはゴールデンカムイの方がずっと正確です。

鶴見の額当ても「素晴らしい」

あとは鶴見の額当てに関しては、「もし装着してみて、不安定でしたらベルトを増やしたりしても構いません」と事前に伝えていました。でもデザイン性を大きく変えずに工夫して多少のアクションではズレないものを作ってくださったようで、それは素晴らしいですね

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Q:かつて映画監督を志したこともあったそうですが、特に好きな映画などがあれば教えていただけますか?

やっぱり僕の世代はマッチョイズムでしたので強い男のアクション映画を好んで観ていましたね。
シュワちゃん、スタローン、ヴァンダム、セガール、ニコラス・ケイジ

眉毛も完璧…!実写化に歓喜したキャラ

Q:ズバリ、実写になって特にうれしかったキャラクターがいれば教えてください。

やはり谷垣源次郎でしょうね。やはり・・・。
「この方に決まりました」と、大谷(亮平)さんの宣材写真が送られてきまして、観た瞬間吹き出しました。眉毛が源次郎だったので。先日ご挨拶したときに、「ご飯をいっぱい食べて、もっとムチムチになってください」と言いましたら、「結構、筋肉付けたんですけどね」と苦笑いしていました。でも男性陣は皆さんマッチョにならなければという使命感があったらしいです。

「やはり谷垣源次郎でしょうね。やはり・・・」

Q:キャストの皆さんについて、他にも注目してほしい点などがあれば教えてください。

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演技とはちょっと違うんですが、役者さんという存在として注目なのは、アシ(リ)パの大叔父役の秋辺デボさんですね。実際にアイヌの血をひく方で他の作品でもアイヌの役を演じている方です。
映画業界では昨今、「マイノリティの役はマイノリティに」という意見がありますが、今作品ではデボさんのようにアイヌルーツの方も出演されています。

なにより、アイヌルーツの方々というのは本来、役者業ではなく、工芸家として世に出ている方が圧倒的に多いので、適材適所として、この映画においては演技よりも、衣装や民具や村のセットの制作に大きく関わっています。決して映画というのはキャストだけで成り立っているものではありませんので、もっと一歩深い考えで、この映画を判断していただきたいですね。

Q:キャストへの賞賛と共に、ヒグマをはじめとする動物のCGについても「心配ない」とコメントされていました。原作のヒグマ描写でこだわっていた点と、実写版ではどこが良かったか教えてください。

ヒグマは凄く目が小さくて目の周りが黒いので表情が読めなくて不気味なんですよね。
だから原作ではほとんど目を描きませんでした。実写もあまり目が気にならなかったので
良かったと思います。それにヒグマの動く音に重みがあって迫力がありました。音響はかなりこだわったとおっしゃっていたので良い映画館で観ることをお勧めします。

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「ゴールデンカムイ」を終え見据える先

Q:「ゴールデンカムイ」ほど何度読み返しても面白い漫画はそうないと思います。その理由はどこにあると思われますか?

ありがとうございます(笑)
僕が自分で面白いと思うものを詰め込みまくったので、そのどれかが琴線に触れたという読者さんが多かったんじゃないでしょうかね。
もちろん、読者さんによっては面白いが必ずしも一致しないものもあったと思います。
例えば、僕は樺太取材は楽しくてしょうがなかったですけど、僕の友人はあんな荒涼としたところに旅行で行きたくないと言っているのも事実なので。
だから僕の好みの、全てがハマる人ならこの漫画が最初から最後までずっと面白かったと思える幸運な読者さんだったということなんじゃないでしょうかね。

Q:連載を終え、実写化もされたいま、「ゴールデンカムイ」とは先生にとってどんな作品だったと思われますか?

週刊連載で追い詰められたからこそ描けた部分もありますし、週刊連載という早い掲載テンポだったから人気が出たというのも大きいですし週刊連載だから評価されいろんな賞を頂いたというのもあります。
一番体力があって、気力もあった時期に描けたのは非常に幸運でした。

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連載を目指して上京して何年も芽が出なくて、本当に苦しい思いをしました。
ゴールデンカムイに出会っていなかったら、どんな人生を送っていただろうかとたまに考えます。
それも自分一人の力ではなく、担当の(編集者)大熊八甲さんの存在も大きかったですし僕を拾ってくれたヤンジャン(週刊ヤングジャンプ)編集部、ご協力して頂いた、たくさんの方たちのおかげで描けたと思います。
本当に感謝しています。

そして自分はすでに前を向いていて、今はとにかく連載中の「ドッグスレッド」に全力です。
ゴールデンカムイを描き終えた野田サトルが描く最新作です! こちらも間違いなく
面白いので読んでいただきたいです。
1月18日に1巻が発売、翌2月19日に2巻が発売されます。よろしくお願いします。

Q:最後に、実写版『ゴールデンカムイ』に今後どんな道を歩んでほしいですか?

最終的に「作ってよかったね」と言えたら、それだけでもいいと思います。

映画『ゴールデンカムイ』は全国公開中

(構成/編集部・入倉功一)

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